皮膚再生医療で老化を防げる?PRP療法のメカニズムとは?

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/11/29 更新日:2020/11/27

顔のしわやたるみ、くすみなどいわゆる「年齢サイン」といわれるものに悩んでいる女性も多いのではないでしょうか。
そうした女性にとって、肌老化の仕組みや最新の治療法などは興味を惹かれるものかもしれません。
そこで、ここではなぜ肌は老化するのか、そしてアンチエイジングで注目されるPRP療法などの皮膚再生医療とは何かについて説明していきます。

皮膚再生医療とは

皮膚再生医療とは
しわやたるみ、しみなどを改善する治療法としては美容整形手術やコラーゲン・ヒアルロン酸などの注射、それにレーザー治療といったものが存在します。
しかしこれらはあくまで人工的な手段であり、肌そのものを若返らせる治療ではありません。
皮膚再生医療は、そうした治療とは一線を画すものです。

人の肌細胞は新陳代謝を繰り返していますが、紫外線や乾燥などの刺激を長い年月にわたって受け続けることでダメージを受け、肌の再生能力は徐々に低下していきます。
また、肌が元々持っているハリや潤いを支える成分も加齢とともに減少します。
これらがしわやたるみの原因です。
皮膚再生医療は、このような機能の衰えた箇所に元気な細胞を移植することで、肌の活力を蘇らせる治療法です。

PRP療法とは

PRP療法とは
ではまず、皮膚再生医療の一つである「PRP療法」について説明していきます。

PRP療法で皮膚が再生するメカニズム

PRPとは「Platelet Rich Plasma(多血小板血漿)」のことです。
人の血液に含まれる血小板は、けがをしたときなど血管の壁が損傷した際に損傷箇所に集まって凝集し出血を止める、いわゆる「止血」の役割を持つものとして知られてきました。
それが近年の研究で、血小板には様々な「サイトカイン」と呼ばれる成長因子が含まれることがわかったのです。
サイトカインには線維芽細胞に働きかけてコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促したり、上皮細胞や血管内皮細胞の増殖を促すなどの作用があります。

PRP療法では自分の血液から抽出した血小板を多く含むPRPを、肌老化の気になる部分に注入します。
そこでは血小板に含まれるサイトカインが作用して、線維芽細胞が活性化されてコラーゲンやヒアルロン酸が多く作られるようになり、また肌細胞の増殖を促進することで古い細胞が新しい細胞に入れ替わって肌のハリ・つやや潤いが蘇り、しわやたるみの改善につながるというわけです。

PRP療法の特徴

PRP療法の最大の特徴は、肌に注入するPRPを自身の血液から抽出する、ということです。
人工物などの異物ではなく元々自身の体内にあったものなので、アレルギーや感染症の心配がほぼなく、安心して治療を受けることができます。
外科的な治療や外からコラーゲン・ヒアルロン酸などを注入する方法とは違い、自分の細胞を使って肌が元々持つ力を高めていくものなので、自然なエイジングケアを行うことが可能です。
変化もゆっくり現れるので、周りの人に気付かれることもありません。

治療が短時間で済むというのも大きな特徴です。
再生医療というと細胞を培養するのに何日もかかるというイメージがあるかもしれませんが、PRP療法の場合は採血・精製・注入がほぼ1時間と非常に短く、ダウンタイムもありません。
治療は1回で済むので何度も通院する必要がなく、血液検査も不要です。

さらに効果が長く続くというのも大きなメリットです。
治療の効果はPRP注入後2週間から2カ月ほどかけて少しずつ現れ、その後効果は1~3年程度続きます。
ヒアルロン酸注射の持続期間がおおむね半年程度なのに比べてかなり長持ちするといえるでしょう。

線維芽細胞療法とは

線維芽細胞療法とは
次に、もう一つの皮膚再生医療として知られる「線維芽細胞療法」について解説します。

線維芽細胞療法で皮膚が再生するメカニズム

線維芽細胞療法は、自身の肌細胞を培養して増やした線維芽細胞を、老化の気になる部分に注入する治療法です。
線維芽細胞は肌の奥深くの真皮と呼ばれる場所に存在し、コラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった肌のハリを支える成分を産生しています。
しかしこの細胞は加齢とともに密度が下がり、その結果コラーゲンなどを産生する力も衰えてしまい、これがしわやたるみの原因となります。
そこで減ってしまった線維芽細胞を注入することでコラーゲン等の産生力をアップし、若々しい肌を取り戻すというのが線維芽細胞療法の仕組みです。

採取する肌細胞(線維芽細胞)は紫外線や摩擦などのストレスをあまり受けていない部位が望ましいため、主に耳の後ろなどの比較的若い皮膚組織から採取します。
培養を行う培地には自身の血液が利用されるので、採血も同時に行います。
培養する線維芽細胞も培地となる血液も自身の物なので安心です。

線維芽細胞療法の特徴

線維芽細胞療法は自身の肌細胞を活性化してコラーゲンやヒアルロン酸等の産生量を増やすもので、外からそれらを注入するものではありません。
したがって、アレルギー反応などを起こす危険性はほとんどなく、安全な治療法といえます。
しわのくぼんだ部分にヒアルロン酸を注入して内側から膨らませるといった方法と違い、肌の組織そのものが活性化されるので、その後の肌老化の進行も遅くなるというメリットもあります。

細胞の採取は耳の後ろからほんの少量の皮膚を採取するだけなので、傷は縫合の必要がないほど小さく、目立つこともありません。
また、一度採取し培養した細胞は凍結保存できるので、2回目以降は皮膚の採取をする必要はほとんどありません。
10代・20代などの若いうちに細胞を採取して保管しておき、将来その細胞を使って治療を受けるということも可能です。

このようにメリットの多い線維芽細胞療法ですが、一つ注意しておくべき点があります。
それは、細胞の培養には1カ月以上の時間がかかるということです。
効果は治療後3~6カ月かけてゆっくりと表れ、2~3年持続するとされています。

古い肌はどのようにして新しくなるのか

古い肌はどのようにして新しくなるのか
ところで、肌の新陳代謝というのはそもそもどのようにして行われているのでしょうか。
その仕組みについて説明します。

肌の構造

人の全身をくまなく覆う肌は、外界の様々な刺激から体を守るために存在しています。
その構造は肌表面の表皮と、その奥にある真皮の2層からなります。
表皮は厚さがわずか0.2mmという非常に薄いものです。
表皮の一番奥には基底層と呼ばれる部分があり、肌細胞はここで作られて約28日間かけて肌表面まで上がっていき、角質細胞となって約14日後には垢として剥がれ落ちます。
こうして肌は常に新しい細胞へと入れ替わっているわけです。

一方、真皮は厚さ約2mmとなっており、表皮に比べると厚みがあります。
ここには毛細血管やリンパが通っていて、これらを通して栄養が運び込まれ、また老廃物が運び出されていきます。
真皮はコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった成分で構成されていますが、これらは肌のハリを支える重要な役割も担うものです。

肌のターンオーバー

表皮の基底層で生まれた細胞が表面まで上がって角質となり最後に垢となって剥がれ落ちる、この一連のサイクルを「ターンオーバー」といいます。
言い換えれば肌の生まれ変わりのサイクルというわけで、これがきちんと働くことがみずみずしくハリのある肌を保つためには不可欠です。
しかし加齢とともにこの機能は徐々に衰え、ターンオーバーが遅くなってきます。
すると肌表面に古くなった角質がいつまでも残って肌が固くなったり、メラニン色素も排出されずに肌に留まってシミやくすみを招いたりするのです。

また、表皮の奥にある真皮の機能も加齢によって低下します。
真皮の働きが低下すると、血液から十分な栄養を得たり不要な老廃物をきちんと排出するといったことができにくくなります。
真皮の構成成分であるコラーゲンやエラスチンなどが減少することで水分を蓄えておくことも難しくなり、その結果肌が乾燥してバリア機能の低下を招くというのも大きな問題です。
肌のバリア機能が低下すると紫外線に弱くなり、さらに乾燥やダメージが進むといった悪循環に陥ってしまいます。

肌の老化の原因と予防法

肌の老化の原因と予防法
皮膚再生医療による治療は非常に有効なものではありますが、その前に日頃から肌の老化を防ぐためのケアをしておくことも大切です。
ここでは毎日の生活に取り入れたい具体的なケアの方法と、それに必要な知識についてお伝えします。

肌の老化の原因

肌の老化はいくつかの原因が重なって起こります。
まず一つは、肌の乾燥です。
肌の表面にある角質層の潤いは、セラミドなどの細胞間脂質やアミノ酸などの天然保湿因子によって保たれていますが、これらの量は20歳をピークに減少していきます。
すると角質層の水分は徐々に失われていき、乾燥した肌は薄く硬くなってしわになってしまうのです。

もう一つの原因として紫外線や大気汚染、ストレスや喫煙によるダメージが挙げられます。
これらの刺激により体内では活性酸素が大量に発生し、これが皮膚の酸化を招いてコラーゲンを硬くし、肌の弾力が失われる原因となるのです。
また紫外線は単体でも肌老化の原因となります。
紫外線にはA波とB波がありますが、波長の長いA波は真皮まで届いて線維芽細胞を傷つけしわ・たるみを招きます。
一方B波は波長が短く、表皮にダメージを与え、シミの原因となるものです。

さらに女性ホルモンの分泌量の減少も影響します。
女性ホルモンのエストロゲンには肌の水分量や皮脂の分泌量、コラーゲンの量などを増やす働きがあるため、女性ホルモンの減少はこれらの減少に直結します。
その結果皮膚が薄くなり乾燥して、しわやたるみ、くすみなどが目立つようになるのです。

従来の誤ったアンチエイジング

アンチエイジングに関する情報は数多く出回っていますが、科学の進歩により実は間違っていたことが判明しているものもあります。
古い情報に頼って対策をしていると、効果が出ないばかりかかえって逆効果になってしまうこともあるので気を付けましょう。

まず、植物油やマーガリンは不飽和脂肪酸を多く含むためコレステロール値を下げる働きがあり、健康に良いとされてきました。
しかしこの不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、過酸化脂質に変化して老化を促進するというのが最近の考え方です。
また、脂肪燃焼効果があることからダイエットに良いといわれている有酸素運動は、活性酸素を発生させるためアンチエイジングの視点からはあまり好ましいものでないと考えられるようになってきています。

サプリメントの分野では、肌のハリを支える成分であるコラーゲンに人気が集まっていますが、実はコラーゲンサプリを摂取しても体内のコラーゲン量を増やすことには直結しないことが明らかになっています。
経口摂取したコラーゲンはいったん分解されるため、そのままコラーゲンとして取り込むことはできないのです。

肌に効果的な栄養素

食品から摂取される栄養素には、肌のアンチエイジングに適したものも数多くあります。
まず、シミが気になる人にはメラニン色素の生成を抑えるビタミンCが良いです。
ブロッコリーや柑橘系の果物などに含まれますが、熱に弱いので生食がおすすめです。
肌のターンオーバーを促進するビタミンAは緑黄色野菜やレバーに含まれますが、脂溶性なので炒め物など油を使った調理法にすると吸収率も高まります。

老化の原因となる活性酸素を抑制する抗酸化作用のある食品も積極的に摂りたいものです。
アーモンドやオリーブオイルに含まれるビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、ビタミンAやCと共に摂ることで抗酸化力がアップします。
納豆や豚肉、玄米などに含まれるビタミンBも抗酸化力が高いですが、熱に弱いので生で食べるか煮汁までいただくようにするのが良いです。

抗酸化物質としてはポリフェノールも有名です。
赤ワインやコーヒー、緑茶といった飲み物やチョコレートなどに含まれていますが、体に蓄積することができないので日常的に摂るようにしましょう。

肌の老化の予防法

肌老化を防ぐために普段から気を付けたいこととして、紫外線対策が挙げられます。
紫外線による光老化を防ぐためには日焼け止めが必須ですが、B波を防ぐ効果を示すSPF値だけでなく、A波を防ぐ効果を示すPAにも注目して選ぶようにしましょう。
PAのあとについている「+」の数が多いものが効果の高いものです。

保湿は水分量の維持とたるみ防止のために重要なものです。
潤いを保つためには内側から外側へ滑らせるようにつける横づけ、上から下へとタッピングする縦づけ、そして特に乾燥しやすい部分には押し込むようにつける押しづけ、というローションの3度づけをすると良いでしょう。
また、たるみ防止には顔のリフトアップトレーニングもおすすめです。
年齢と共に表情筋が衰え、皮下脂肪が多くなるとほうれい線が目立ってきます。
顔の筋肉を刺激することで固くなった筋肉がほぐれ、リフトアップへとつながります。

PRP療法で老化を防ぐ

PRP療法で老化を防ごう
肌老化の仕組みと再生医療による治療法について紹介しました。
PRP療法は線維芽細胞療法と比べると、組織を培養する時間がかからないためより気軽に行える治療法といえます。
いずれにせよ、皮膚再生医療は自身の血液や皮膚細胞を使用するため、アレルギー反応を起こす心配がほとんどないというのが大きなメリットです。
安心安全な治療法を求める人は、検討してみると良いでしょう。