幹細胞を点滴すれば若返るって本当?その仕組み・方法・費用について解説

ケガをしたり、病気に罹ったりすると、普段はあまり意識することのない健康の有難味に気づかされます。
そんなわたしたちの体を健やかに保つ屋台骨が幹細胞です。
幹細胞を利用した再生医療は先進的であり、点滴することによって注射では届かない部位まで遊走できると評判です。
美容分野でも応用されていますが、どのような特徴が効果を及ぼすのでしょうか。
ここでは、幹細胞の点滴がアンチエイジングに効く理由を解説します。

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幹細胞とは

幹細胞とは
わたしたちの体には心臓や肝臓などの臓器があり、それらを骨や筋肉で支えています。
また、外的な刺激から保護する体毛や皮膚は欠かせませんし、血管や神経も重要な役割を担っています。
それらはすべて細胞から構成されていますが、なかには入れ替わる周期が早い細胞があり、その都度、新しい細胞を産み出さなければなりません。
しかも、外的な刺激が強かったり、ウイルスなどから攻撃を受けたりすると、内的な破壊が起こります。
機能不全に陥った細胞の代わりになる新たな細胞を補充しなければ、ケガや疾病から回復できないということになります。
そのような新しい細胞を産生できる、全細胞のもとになる細胞のことを幹細胞と呼びます。

幹細胞には2つの能力があります。
瓜二つの幹細胞に分裂する増殖(自己複製能)と、血液、神経、腸や皮膚といった性質の異なった細胞に変化する分化(多分化能)です。
わたしたちの体はたった1つの受精卵からスタートしますが、自己複製能と多分化能の両輪が機能しているからこそ成長し、健常性と恒常性を維持できるのです。
さらに幹細胞は、その性質や特徴から、胚性幹細胞・人工多能性幹細胞・体性幹細胞の3種に分類できます。

胚性幹細胞(ES細胞)は、受精卵が分裂してできた内部細胞塊を体外で培養したものです。
全細胞に分化でき、再生医療の中核を担う存在だと期待されました。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、ES細胞に似た多分化能を持っていますが、患者本人の皮膚細胞から作り出せるため、拒絶反応や倫理的な問題をクリアしているメリットがあります。
体性幹細胞は脂肪組織などから比較的簡単に採取でき、ES細胞ほどの多能性はないものの、脂肪、骨、筋肉、神経といった細胞に分化します。

幹細胞を用いた再生医療とは

幹細胞を用いた再生医療とは
人体には37兆もの細胞が存在し、日々、死滅と再生を繰り返しています。
その体内活動で重要な役目を果たしているのが自己複製能を持つ幹細胞です。
さらに、幹細胞のもう1つの特徴である多分化能にも大きな期待が寄せられています。
幹細胞を採取・培養・投与する再生医療なら、病気や痛みの治療、シワやたるみなどの美容医療に効果が望めるからです。
ここでは、幹細胞を用いた再生医療について解説します。

病気や痛みの治療

幹細胞は、分裂することで自分と同じ細胞をつくれる増殖(自己複製能)と様々な細胞をつくれる分化(多分化能)を併せ持っています。
そのため、体内に投与すれば臓器や組織などを修復できるのではないかと期待されてきました。
とくに体性幹細胞は、胚性幹細胞と違って自己細胞を培養して使うため拒絶反応が起きにくく、iPS細胞より発癌性のリスクが低いという性質があります。
幹細胞は、投与されるとホーミングと呼ばれる動きを見せます。
損傷箇所に集まる性質で、炎症を鎮めたり、傷ついた機能や組織を回復させたりします。
この特徴を利用し、発症原因が特定できていない、現代医学では根治させるのが難しい疾患の治療に用いられてきたのです。

その1つが筋萎縮性側索硬化症(ALS)です。
筋肉を動かす神経系統である運動ニューロンに障害が起こる病気で、しだいに体の機能を失ってしまいますが、有効な治療法はありませんでした。
しかし、幹細胞を投与する再生医療で進行を遅らせたり、回復が見込めたりすることがわかってきました。
また、脳梗塞後遺症の治療にも有効性があると期待されています。
脳梗塞は偏食や睡眠不足、ストレス、喫煙といった複数の因子が影響し、加齢による機能低下も引き金になると考えられています。
以前は悪化や再発予防がメインでしたが、発症後に血栓溶解薬のt-PAを投与したり、カテーテル治療を行ったりして回復する患者も増えました。

しかし、発症から4.5時間以内に治療することや、MRI検査などで回復不能状態ではないと確認された場合に限られるといった条件が伴います。
しかも、回復できるのは治療した3分の1程度で、それ以外の患者は死亡してしまうか、なんらかの後遺症に苦しめられることになるのです。
代表的な後遺症に言語障害や認知機能の低下、運動障害などがあります。
いったん傷ついた脳は回復しないと考えられてきましたが、幹細胞の投与による再生医療を施すことで、脳と脳神経の再生を促進できると期待されています。
さらに、幹細胞が出す抗炎症物質を活用することで関節および脊髄周囲炎の治療も進められていますし、自己免疫疾患の医療にも応用されてきました。

通常、免疫は体内に入りこんだウイルスなどを攻撃して自分の細胞組織を守ってくれます。
しかし、なんらかの原因で、自分の細胞組織に攻撃を加えるようになるのが自己免疫疾患です。
関節を攻撃すると慢性関節リウマチに、皮膚ならアトピー性皮膚炎に、大腸なら潰瘍性大腸炎を発症します。
免疫が暴走する原因が判っていないため、治療法は見つかっていません。
症状を抑えるために免疫調整剤などが用いられてきました。
幹細胞を使った再生医療なら、自己免疫が抑制され、傷つけられた細胞組織も再生していきます。

美容医療

美容医療
美容医療で顔のシワ取りに効果があると支持されてきたのが、ボトックスやヒアルロン酸を注射する方法でした。
ボトックスはボツリヌス菌から毒素を取り除き、ボツリヌスキトシンというたんぱく質を抽出したものです。
筋肉の動きを抑える働きがあり、目尻や眉間といった表情に関係するシワに効果的です。
一方、ヒアルロン酸は保湿性と粘性が高く、無表情の状態でも現れるほうれい線などに有効でした。
両者が浅いシワに向いているのに対し、幹細胞治療は顔の深部にまでアプローチできるという特徴があります。
そのため、シワだけでなく、シミやたるみ、くぼみの改善にも効果が期待できます。

また、幹細胞は加齢に影響を受けやすく、徐々に増殖力が落ちていきます。
幹細胞が減り、細胞組織を修復できなくなれば、老化現象も早まってしまうのです。
幹細胞を培養し、投与すれば、皮膚が再生しはじめます。
潤いやハリが戻ってくるため、表情が瑞々しくなるだけでなく、顔にふくよかさも出てくるのです。
この美容医療に用いられるのは体性幹細胞だけで、自己細胞を用いるため拒絶反応を起こす可能性が低く、癌化するおそれもないというメリットがあります。

幹細胞治療の流れ

幹細胞治療の流れ
幹細胞には、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性細胞(iPS細胞)のようにあらゆる細胞をつくり出せる多能性細胞があります。
また、体性幹細胞に分類される骨髄内の間葉系幹細胞も筋肉や骨、脂肪、神経といった組織に分化できます。
多分化能としては多能性細胞より劣るものの、幹細胞治療の新たな担い手として期待されてきました。
さらに、これと似た性質を持つ幹細胞が皮下脂肪のなかにも含まれており、骨髄から採取するよりも簡単で、組織量も豊富だと判っています。
それらを脂肪由来間葉系幹細胞と言い、再生医療の中心的な役割を担っています。

幹細胞を使った治療は、厚労省から実施許可を受けたクリニックでしか行えません。
初診にあたっては、患者の不安や先入観を解消するためのカウンセリング、治療に関する詳細な説明などを行います。
持病や治療中の疾患があっても幹細胞治療は可能ですが、医療機関が作成する検査資料、薬局から渡される手帳などを持参し、事前相談することがおすすめです。
患者の状態を確かめるための問診後、幹細胞治療に納得し、クリニックの方針に理解できるのであれば同意書にサインします。

つぎに、検査と細胞の培養に用いるための血液を採取し、腹部から脂肪組織を採ります。
採取にあたっては、局所麻酔や笑気ガスを用いて痛みを軽減しますし、静脈注射の麻酔を求めることも可能です。
採取するのは非常に小さなサイズで、米粒2つほどしかありません。
クリニックの幹細胞治療には様々なプランが用意され、幹細胞の培養はもちろん、体内の回復を実感するまでは相応の時間がかかります。
しかし、脂肪採取は最初だけであり、それほど負担はかかりません。

脂肪採取後は、組織から幹細胞を分離・抽出します。
幹細胞は患者が選んだ治療の回数によって分けられ、およそ1ヶ月間、培養されることになります。
培養された幹細胞は問題がないかどうかをチェックする試験を経て、投与までは凍結保存されます。
医師の問診後、体調に変わりがないと判断されれば点滴か局所注射で投与され、経過観察に移ります。
体内には様々なダメージ箇所があり、それらを修復・改善するには数ヶ月かかります。
それぞれのプランに合わせた投与を続けるためにも、医師によるアドバイスや診察が欠かせません。

幹細胞治療と美容

幹細胞治療と美容
幹細胞には、分裂して自分と同じ細胞を複製できる「増殖」と多種多様な細胞になれる「分化」という能力があります。
ケガや疾病で損なわれた細胞組織を修復できますし、日常的に減っていく寿命の短い細胞を再生する役目もあります。
しかし、加齢が天敵で、歳を重ねると減ってしまう特徴もあるのです。
加齢によって臓器や組織の機能は落ちていきますが、幹細胞が減少してしまうとそれらを再生する力も衰えてしまいます。
ここでは、幹細胞治療が美容分野でどのように活用されているのかを解説します。

幹細胞がアンチエイジングを助ける仕組み

年齢を重ねると顔のシワが深くなり、シミも目立ってきます。
潤いやハリがなくなるため、肌がたるみ、ふくよかさを失ってしまいます。
これらは老化現象の典型ですが、引き金になっているのは幹細胞の減少です。
幹細胞は加齢とともに減ってしまう特徴があり、本来的に持っている細胞組織の再生機能を果たせなくなるのです。
つまり、幹細胞の再生能力をアップさせることで加齢によるダメージを最小限に抑え、若々しさを取り戻せます。
理想的なエイジングケアのためには、幹細胞を採取・培養・投与し、減ってしまった分を補う必要があります。

幹細胞治療はどこで行うのか?信頼できるところを選ぶには?

現在、幹細胞治療では、皮下脂肪から採取された脂肪由来間葉系幹細胞の利用が主流です。
骨髄にある間葉系幹細胞よりも採取しやすく、量も豊富だからです。
しかし、採取した脂肪から幹細胞を分離・抽出することはもちろん、培養についても卓越した技術と経験が必要です。
細胞培養士が細胞のクリーニングを行って不要な細胞を除去し、培養が完了したあとも投与までは液体窒素タンクなどで保存することが求められます。
いずれも一定の基準を満たした専用の施設内で行うことが条件となるのです。

また、幹細胞の再生医療を行うには、2014年11月に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づいた安全性の確保が求められます。
事前に手続きをせず、再生医療に使用するために細胞加工物を製造すると罰せられます。
厚労省に届出を行い、許認可が下りたクリニックは、同省のウェブサイトで確認できます。
幹細胞治療を考えているのであれば、法的な基準を満たしたクリニックの受診が必要です。

費用はいくらくらいかかるのか?

費用はいくらくらいかかるのか?
幹細胞は、細胞の増殖や分化を起こせる性質があり、細胞組織を修復させる再生医療に用いられています。
なかでも、発症原因が特定できていない難治性疾患やケガを治せるのではないかと期待されてきました。
ただし、エビデンスが少ない上に高度な技術や設備が要るため、先進医療に該当し、費用は高額になります。
その幹細胞治療の代表的なものに、造血幹細胞移植があります。
ドナーからの骨髄移植、出産時に寄付される臍帯血の移植、患者本人の末梢血幹細胞の移植が中心となります。
これらには保険が適用されるため、自己負担は2割~3割です。
脊髄再生治療の場合は、7年間という条件付きではあるものの、同じく自己負担が2割~3割です。

脊髄再生治療と同じく間葉系幹細胞を使うものに、更年期障害や変形膝関節症などの治療があります。
しかし、その多くが自由診療となり、治療費を全額自己負担しなければなりません。
幹細胞治療は最先端治療に位置付けられるため、費用が高くなるのは仕方ないという側面はあります。
しかし、病気や痛みを治すためであっても、治療の種類や内容によっては保険適用されない場合があるため事前に調べておく必要があるのです。

病気の治療を目的として幹細胞治療を行う場合は、一部を除いて保険適用されるものの、シワやシミを取ったり、肌を若々しく再生させたりする美容目的なら基本的に自由診療です。
保険適用外となり、費用は高額になってしまいます。

幹細胞治療には副作用がある?

幹細胞治療には副作用がある?
細胞を増殖させたり、様々な種類に分化させたりできる幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)と人工多能性幹細胞(iPS細胞)の多能性幹細胞と体性幹細胞に分類できます。
多能性幹細胞はあらゆる細胞をつくり出せるというメリットがあるものの、ES細胞は第3者の幹細胞を培養したもので、投与するとアレルギー反応などを起こす可能性があります。
iPS細胞は作製しにくい上に癌化しやすいというデメリットがあるのです。
その点、体性幹細胞の脂肪由来間葉系幹細胞なら比較的簡単に採取でき、量も多く、自分の脂肪から取り出しています。
拒絶反応を起こす可能性が低いため、幹細胞治療の主役になってきました。

しかし、脂肪組織を採取する際に皮下出血を起こすことがあるため、衛生管理を怠っていたり、消毒などの適切な処理を施さなかったりすると感染症に罹るおそれがあります。
また、採取には痛みを伴うことから、局所麻酔や笑気ガス、静脈注射などを使用します。
ただ、患者によっては麻酔そのものが体に合わないという人がいますし、なかには副反応や中毒症状が現れるケースもあります。
さらに腹部を切開してカニューラという針を挿入するため、術後は縫合と抜糸が必要です。
処置を誤ると瘢痕ができたり、炎症が続いてケロイド状になってしまったりすることがあるので経過観察には注意が要ります。

幹細胞を注射で投与する場合も副作用が起こる可能性があります。
投与には痛みを伴いますし、衛生状態が悪ければ感染症を誘発するおそれがあるのです。
脂肪由来間葉系幹細胞は自分の脂肪から採取した幹細胞で、投与しても拒絶反応は起こりにくい傾向にあります。
しかし、なかにはアレルギー反応が出てしまい、アナフィラキシーショックを起こすケースがあるので投与後は要注意です。
また、幹細胞が塊状になって投与されると、肺塞栓などの重篤な合併症を起こしかねません。
予期せぬ症状への対策として、幹細胞を生理食塩水に溶かしたり、フィルター付きの点滴で注入したりする方法が有効的です。

幹細胞治療で点滴を用いるメリット

幹細胞治療で点滴を用いるメリット
幹細胞は増殖と分化を行う力があり、傷ついた細胞組織を修復する治療などに有用です。
採取・培養した幹細胞を、関節や皮膚といった損傷箇所や修復したい場所に直接注射すれば効果が望めます。
幹細胞が対象部位に到達し、組織細胞を活性化することはもちろん、抗炎症物質や栄養因子を放出して近隣の細胞にも作用するからです。
しかし、注射には針が届く範囲にしか幹細胞を届けられないという物理的な限界があります。
それを克服できるのが静脈への点滴です。

点滴すれば幹細胞を血管内に投与できます。
1時間ほどかけてゆっくりと落としこむことで、血液の流れを使い、損傷組織まで幹細胞を自然に遊走させられるのです。

幹細胞治療と「幹細胞培養液治療」の違い

細胞の増殖および多様な細胞へと分化できる幹細胞は、損傷した細胞組織を活性化し、修復する再生医療に用いられています。
幹細胞治療とは、採取・培養された幹細胞そのものを注射や点滴で投与する治療法です。
一方、幹細胞培養液とは、幹細胞を培養する際に分泌される成分を指し、サイトカインという活性物質など500種類以上のたんぱく質が含まれています。
幹細胞そのものを含まない、培養液だけを体内に投与する治療法が幹細胞培養液治療です。

幹細胞培養液とは

幹細胞治療を行うには、骨髄や脂肪を採取し、幹細胞を抽出しなければなりません。
その幹細胞は培養されて数を増やし、やがて損傷部位や修復したい箇所に投与されることになります。
この幹細胞を培養した液体が幹細胞培養液で、幹細胞から200種類以上の成長因子や生理活性成分(サイトカイン)などの大量のたんぱく質が分泌されています。
培養したあとで幹細胞を取り出し、滅菌処理などを行えば、幹細胞培養液は細胞組織の再生を促す様々な製品に応用できようになります。

幹細胞培養液治療で期待できること

幹細胞培養液にはサイトカインなどが含まれていることから、幹細胞培養液治療は幅広い効果が期待されています。
投与することで創傷を治し、ダメージを受けた神経や組織を修復できるほか、抗炎症作用で痛みを軽減しますし、抗酸化作用によって生活習慣病の予防も望めます。
体を守ってくれるはずの免疫から攻撃を受けてしまうアレルギーや自己免疫疾患に対しても、免疫調整作用が機能するため症状を和らげてくれます。
また、コラーゲンの産生を促すことから美容効果があり、アンチエイジング対策にも優れているのです。

さらに、幹細胞治療のように幹細胞を用いないため、アレルギー反応を起こす可能性が低くなり、癌化のおそれもありません。
幹細胞治療に比べれば割安で、安全性が高いというメリットがあります。

幹細胞の点滴でアンチエイジング

幹細胞の点滴でアンチエイジング
幹細胞には、分裂して同一細胞を産み出す「増殖」と様々な細胞に変われる「分化」という能力があります。
そのため、幹細胞を採取・培養・投与する幹細胞治療は、傷ついた細胞組織を再生できると期待され、医療現場はもちろん美容の分野にも使われています。
注射でも効果はありますが、針が届く範囲が限界です。
点滴なら血流を利用して幹細胞を遊走でき、加齢で衰えた部分にも届けられるためエイジングケアにも優れています。