変形性膝関節症に悩む人必見!PRP療法の驚くべき効果とは

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2021/02/04 更新日:2020/11/27

年齢が上がるにつれて、膝の痛みや違和感に悩むようになったという人は多いことでしょう。
日本では、40才以上で膝の痛みや動きにくさに悩んでいる人の多くが、「変形性膝関節症」という病気であると言われています。
変形性膝関節症には複数の治療法がありますが、現在注目を集めているのが、「多血小板血漿療法(PRP療法)」です。
今回は、PRP療法とはどのような治療法なのか、その効果と共に詳しく解説します。

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、加齢や筋肉量の低下によって膝の軟骨がすり減っていく病気です。
軟骨は、骨の先端を覆っている柔らかい骨で関節のクッション的な役割を担っています。
軟骨がすり減ると、まず膝関節の骨同士の隙間が狭くなり、内側の骨が露出してくるのです。
時間がたつにつれて、骨のヘリにトゲのような突起物ができたり、骨が変形したりするケースも珍しくありません。
軟骨がすり減り、硬い骨同士がぶつかり合うようになり、違和感や痛みが生じるのです。
また、軟骨がすり減っていくと関節をおおっている関節包という繊維膜の内側に炎症が起こることもあります。
炎症が起こると膝関節に黄色味がかった粘り気のある液体がたまります。
これが、いわゆる「膝に水がたまった」という症状です。

変形性膝関節症は、時間をかけて進行していきます。
軟骨のすり減り具合によって初期、中期、進行記に分類され、だんだんと症状が重くなっていくのが病気の特徴です。
何も治療をしなければ、すり減った軟骨が自然に回復する可能性はほとんどありません。
また、症状が重くなると、歩く、しゃがむ、座るといった膝関節を使う所作全てに痛みを感じるようになり、日常生活に大きな負担が出てくることでしょう。

変形性膝関節症の原因とは

変形性膝関節症の原因とは
変形性膝関節症の原因は、複数の因子が関与していると考えられています。
変形性膝関節症の患者は50才以上の女性が多いことから、加齢、肥満、性別などが発症に影響している可能性が高いのです。
このほか、骨密度やホルモンも発症に影響を与えていると言われています。
また、メタボリックシンドロームと変形性膝関節症の発症に関連があることも、東大の研究によって明らかになってきました。
ですから、女性、50才以上、肥満している人は、変形性膝関節症を発症するリスクが高いといえます。
さらに、手の指に「変形性関節症」を発症している家族がいる場合も、発症リスクが高い傾向にあります。

変形性膝関節症の症状とは

変形性膝関節症の症状とは
変形性膝関節症の症状は、病気が進行するに従って変わってきます。
この項では、初期、中期、進行期に分けてそれぞれの症状を解説していきましょう。

初期症状

変形性膝関節症を発症すると、起床後に膝関節のこわばりを感じるようになります。
睡眠中は膝関節を最も動かさないため、起床後に体を動かす際、膝が動かしにくい、つっぱったように感じる、膝が重い、鈍い痛みを感じるといった人が多いようです。
しかし、膝を動かしているとだんだん違和感や痛みが消えていくため、「病院に行くほどでもないか」と思いがちです。
症状がもう少し進むと、正座、階段の上り下り、急な方向転換など、膝関節を大きく動かしたり負担がかかったりする動作をする際、痛みを感じやすくなります。
ここで、「膝関節がおかしい」と気づく人も多いでしょう。

中期症状

中期になると、膝の軟骨がさらにすり減って、歩く時に軋むような音がするようになります。
また、前述したように膝の縁にとげのような突起ができたり関節液に軟骨の破片が混じって骨膜を刺激したりすることもあるのです。
こうなると、膝の痛みがさらに激しく長時間続くようになります。
初期症状の頃はしばらく休めば治まっていた痛みが、なかなか引かなくなる、正座ができなくなるといった症状が現れる人も多くなるでしょう。
また、関節内部の炎症も進みます。
膝が腫れて熱感が生じ、いわゆる「膝に水がたまる」ことも頻繁になります。
また、関節液が増えることにより、膝が変形し、O脚になってきます。
膝をまっすぐに伸ばすことも難しくなるでしょう。

末期症状

変形性膝関節症の末期になると、軟骨がほとんどなくなってしまいます。
その結果、硬い骨同士が直接ぶつかり合うようになり、より痛みが激しくなります。
初期症状、中期症状に出た症状もより悪化し、痛みとこわばりで平地を歩くことすら困難になる人も多いでしょう。
O脚もすすみ、誰が見ても「足が変形している」と分かる状態になります。
階段の上り下り、正座といった膝関節に負担がかかる行為はほとんどできなくなり、日常生活に大きな影響がでることも珍しくありません。
精神的な負担も重くなります。
行動範囲もグッと狭くなり、家に閉じこもりがちになる人も多くなるでしょう。

PRP療法とは

PRP療法とは
PRP療法は、日本語の正式名称を「自己多血小板血漿注入療法」と言います。
再生医療の一種で、自分の血液中から血小板を抽出し、高濃度となった血小板を体内に戻す治療法です。
PRP療法の歴史は意外と古く、1970年代は臨床で応用が始まっています。
ヨーロッパや北米ではすでにPRP療法が広く浸透しており、ヤンキースの田中将大、エンゼルスの大谷翔平などが右肘靱帯を損傷した際、この療法を行いました。
日本でも広く報道されたので、これでPRP療法を知ったという人もいるでしょう。

PRP療法は、肘や膝、靭帯損傷・骨折などの治癒効果を高めるためにスポーツ医学で実施されることが多い治療法でした。
膝の疾患では、半月板損傷、靭帯損傷の治療に効果があることも分かっています。
そして、近年、研究によって膝の変形や痛みの治療に高い効果が得られることが分かってきたのです。
日本では、スポーツ医学の他に美容医療、歯科や皮膚科での治療に用いられることが多かったPRP療法ですが、現在は変形性膝関節症にも積極的に取り入れられています。
従来の治療法として定番であった、鎮痛剤の内服やヒアルロン酸の注射では痛みが取れなかった患者さんにも、PRP療法が効果を発揮した例もあります。

血小板の働きについて

血小板の働きについて
血小板に止血作用があることは広く知られています。
しかし、血小板の働きはそれだけではありません。
ケガをしても血が止まり、やがて皮膚が修復されてきれいに治るのは、血小板の「成長因子」が関係しています。
成長因子には、傷の修復や炎症の抑制といった「組織修復能力」が備わっているのです。
また、細胞増殖や血管の形成などに役立つ因子も確認されています。
この成長因子の仕組みや働きを利用したのが、PRP療法です。

PRP療法は、自己の血液を一端体外に取り出し、通常の血液の3〜5倍の血小板を含む「PRP」の状態にしてから体内に戻します。
これにより、より多くの成長因子が損傷部位に直接働きかけて細胞増殖を促進して、修復機能を高めるのです。
その結果、人間に本来備わっている「治癒力」の効果もより高まり、ケガや組織損傷からの早期回復を目指すことができるのです。
通常の3~5倍の血小板を含むPRPは、それだけ成長因子も豊富ですから、ヒアルロン酸注射などと比べても高い再生能力を期待できます。

PRP療法が効果的な症例

PRP療法が効果的な症例
前述したように、PRP療法がまず効果を発揮したのが、スポーツ医学の分野でした。
スポーツをしていると、靱帯の損傷、肉離れ(筋不全断裂)や骨折などが突発的に起こるリスクが高まります。
また、スポーツをしていると、特定の関節や筋肉を長時間激しく酷使することも珍しくありません。
その結果、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、膝蓋腱炎(ジャンパー膝)、足底腱膜炎、アキレス腱障害(アキレス腱炎・腱周囲炎)といった慢性疾患が現れることもあります。
スポーツ傷害とも言われるこのような慢性疾患に、多くのスポーツ選手が悩まされています。
このようなスポーツが原因の外傷やスポーツ傷害にPRP療法を行うことにより、早期治癒ができたり、症状を完治させることができるのです。
ですから、早期の競技復帰を目指すスポーツ選手やスポーツ傷害の完治を目指す患者さんが、PRP療法を試みています。
前述した田中将大や、大谷翔平といった野球選手もその一例です。
また、美容外科や整形外科の分野でも事故やケガなどで損傷した部位の早期回復、疼痛の軽減ができることが確認されており、PRP療法は効果を上げています。

変形性膝関節症においては、PRP療法を行うことで、軟骨のすりへり、半月板の痛みといった症状の進行を抑える効果が確認されています。
また、痛みの軽減にも効果があります。
従来の変形性膝関節症の治療法では効果が実感できず、かといって手術が必要なほど膝の変形が進行していない患者さんには、特にPRP療法の適応があるといえるでしょう。

PRP療法のメリットとは

PRP療法のメリットとは
では、PRP療法のメリットにはどのようなものがあるでしょうか?
この項では、従来の治療法に比べてPRP療法が優れている点を詳しく解説していきます。

副作用のリスクが低い

PRP療法に用いるPRPは、患者さん自身の血液を使います。
ですから、治療を行う際に副作用が出にくいのが大きなメリットです。
変形性膝関節症をはじめとして、膝の痛みが症状としてあらわれるケガや疾患では、痛みを抑えるためにヒアルロン酸やステロイド剤を用いてきました。
ヒアルロン酸は、副作用が少ないという点では優れていますが、効果が持続しにくいのがデメリットでした。
ステロイド剤は、副作用として軟骨の代謝抑制による軟骨破壊などが確認されています。

一方、PRP療法では、PRPを注射した直後に反応痛は出ることはありますが、副作用と呼ばれるほど重篤な症状が出現することはほとんどありません。
反応痛とは、細胞分裂を活性化させる成長因子の働きで起きる炎症のことで、数日~1週間程度で治まります。
また、反応痛は成長因子が幹部に到達し、作用している証拠でもあるのです。
短期間で治まることが分かっていれば、患者さんも安心して治療を受けられます。
ただし、反応痛には個人差があり、注射した部位によっても痛みの出方が異なるのです。
そのため、注射した直後から1週間程度までは注意深い観察が必要になります。
一般的に、靭帯や腱への注射が関節への注射より組織の密度が高い分、反応痛が強く出る傾向があるそうです。

手術の必要が無い

PRP療法では、血液の作用に注目した治療法です。
ですから、患者さんから30ml程度の血液を採取し、抽出した高濃度の血小板を含むPRPを注射します。
外科手術のように膝関節を切開する必要はありません。
施術に必要な時間は1時間程度で、低侵襲です。
身体への負担も軽く入院も不要なので、仕事などへの影響を及ぼす可能性も低いでしょう。
スポーツ選手にPRP療法が好まれる理由も手術の必要がなく、ブランクを作らなくてすむからです。
高齢者の場合、寝たきりになるのを防ぐこともできるでしょう。

持続的な効果が得られる

PRP療法は関節内の状態を整えるので、長期的な作用が期待できるのです。
前述したヒアルロン酸やステロイド剤を用いた治療は、効果の持続性が低く、副作用がおきやすいというデメリットがあります。
せっかく治療をしても効果が持続しない、もしくは副作用の軟骨破壊によってより強い痛みが出る不安があれば、患者さんは不安になってしまうでしょう。
ですから、長期的な作用が期待できることは大きなメリットです。

また、変形性膝関節症は進行を抑えるために、適度な運動をして太ももやふくらはぎの筋力を鍛え、膝への負担を軽くすることが重要です。
しかし、痛みが取れなければ「動かすとより痛みが増す」という記憶が薄れず、恐怖感が蓄積されています。
その結果、運動に消極的になることも多いでしょう。
筋力を持続するトレーニングは本人のやる気が何よりも重要です。
痛みを恐れて動かないようにするほど、筋力が衰えて変形性膝関節症が悪化しやすくなり、治療効果が現れず悪循環に陥ることもあります。

PRP療法を行えば、「膝を動かしても痛くない状態」を長く続けることができます。
それにより、運動に前向きになれば太ももやふくらはぎの筋力低下を防ぐことができるでしょう。
また、治療に前向きになれば医師と患者のコミュニケーションもより取りやすくなり、医師の指示も素直に聞いてくれるようになります。
さらに、日常生活がスムーズに送れるようになれば、気持ちも上向きになります。
免疫力の向上なども期待できるかもしれません。

早めの治療が大事

早めの治療が大事
この記事では、変形膝関節症の症状からPRP療法の効果まで解説しました。
変形関節症は症状が進むほど痛みが激しくなり、治療の効果も出にくくなること、PRP療法が従来の治療法に比べて効果があることを理解していただけましたでしょうか?
多くの方が悩む変形膝関節症もPRP療法ならば回復が期待できます。
そのためには、早めに治療を受けることが大切です。