ボトックス注射による眼瞼痙攣治療と副作用について

ボトックス注射は眼瞼痙攣の有効な治療法ですが、副作用や注意点がいくつか存在しており、何も知らずに注射すると最悪の場合重大な副作用が出てしまうことがあるほどです。
ボトックス注射を考えている方は、リスクを避けるために医師に相談する必要があります。
この記事では、眼瞼痙攣とボトックス注射について紹介します。

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眼瞼痙攣とは?

眼瞼痙攣とは?
眼瞼痙攣とは眼輪筋という瞼を閉じるときに使う筋肉が、自分の意思とは関係なく過度の収縮を引き起こして痙攣してしまう病気です。
初期症状はドライアイのように目が乾燥してショボショボしたり、瞼や周辺の筋肉が少しぴくぴくしたりします。
また、今までは何も感じなかった光をまぶしく感じたり、目を閉じていた方が楽に感じたりするのも初期症状の1つです。
目が乾燥するといってもドライアイとは違う病気なので、ドライアイに効果のある目薬を差しても効果は期待できません。
初期症状のときは痙攣が数分で収まり普段通り生活することができますが、眼瞼痙攣が進行しても治療せずに放っておくと、最終的に目を開けることができなくなる危険があります。

眼瞼痙攣は主に3つの病名に分けられています。
パーキンソン病や脳梗塞からなる症候性眼瞼痙攣、睡眠薬や精神安定剤などの内服薬からなる薬剤性眼瞼痙攣、原因不明の本態性眼瞼痙攣です。
どれもボトックス注射で改善することができますが、原因が分かっている症候性眼瞼痙攣と薬剤性眼瞼痙攣の場合はボトックス注射の効果が切れてしまうと再び再発する可能性があるため、原因となる病気の治療も行わなければなりません。
本態性眼瞼痙攣はボトックス注射のみや、抗不安剤、抗てんかん薬などの内服薬と併用することで効果が期待できます。
どの種類の眼瞼痙攣も、脳から眼輪筋への指令がうまく伝わっていない状態なため、基本的な症状は同じです。

眼瞼痙攣は40代~70代の中高齢者が多く発症しているのが特徴で、中でも50代以上になると女性は男性の2倍~3倍多く発症していることが分かっています。
なぜ女性が多く発症するかについてははっきりと分かっていませんが、男性に比べて女性の方が睡眠薬や精神安定剤の服用が多いからではないかという説があります。
これは薬剤性眼瞼痙攣の原因となる精神安定剤は更年期障害の治療にも使われており、自身が更年期障害であることに気が付きにくい傾向にある男性よりも、体の異変に敏感な女性の方が多く通院しているからです。

症状が悪化しても目の機能が完全に失われる失明の恐れはありませんが、視力は失われていないのに瞼が完全に閉じてしまい、自力で開けなくなる機能的失明になってしまう可能性があります。
指で瞼を開けば見えるようになりますが、長期にわたって瞼を開けずに光を感じない生活を続けてしまうと、中枢神経に異常をきたしてしまう可能性が高くなるため早めの治療が必要です。

ボトックス注射による眼瞼痙攣治療

ボトックス注射による眼瞼痙攣治療
過度に収縮して痙攣をおこしてしまった眼輪筋を緩和させるために、A型ボツリヌス毒素を精製したボトックス注射が効果的です。
ボトックス注射を眼輪筋に注射することで、収縮を和らげることができます。
ボトックス注射の効果は数か月間持続するため、継続して注射する方は1年間に2回~3回打つ必要があります。
打つ場所は目頭付近の2か所、目じり付近の5か所が一般的です。
眼瞼痙攣の度合いによっては打つ回数や場所が変わることがあります。

ボトックス注射について

ボトックス注射は多くの臨床研究により安全な治療法であることが証明されていますが、さまざまな副作用があることも分かっているため、ボトックス注射に対して正しく理解をすることが大事です。
そこでここからは、ボトックス注射の効果や副作用について解説していきます。

ボトックスとは

ボトックス注射に使用されるA型ボツリヌス毒素は、B型~G型のボツリヌス毒素と比べて最も安全性が高く、強い効果を望める特徴があります。
ボツリヌス毒素は食中毒の原因ともされていますが、少量なら人体に危険がないことが分かっています。
また、自分の意志に反して瞼を閉じようとする神経にボツリヌス毒素を注射することで麻痺させ、症状を緩和することが可能です。
ボトックス注射を使用する治療は眼瞼痙攣だけではありません。
頬が強張ったり口元の筋肉が痙攣して表情が歪んでしまう片側顔面痙攣にも効果があります。

ボツリヌス毒素が人体にどう影響するのかを古くから研究されていました。
研究の過程で筋肉や神経に効果があると分かり、1970年代には眼科や神経内科でボトックス注射が使用されるようになります。
1980年代後半からは本格的に美容整形の分野で応用されるようになりました。
加齢により深くなってしまったほうれい線や、目じりの深いシワなど表情筋が原因で発生したシワを取り除く治療で使用されます。
入浴や化粧が当日から可能であること、ダウンタイムの短さや5分前後で施術が終了することなど他の整形手術に比べてとても手軽であるため、ボトックス注射は世界中で広く浸透しています。

ボトックス注射の効果

ボトックス注射の効果
ボトックス注射に即効性は無く、注射を打ってから効果が表れるまでに2日~3日程度かかります。
実際に眼瞼痙攣が減ってきたことを実感できるのが1週間程度で、ボトックス注射の効果が完全に発揮するまで2週間~1か月程度です。
そこから3か月~4か月程度効果が持続しますが、個人差があるため人によっては長くて半年持つ方もいます。
その後、A型ボツリヌス毒素は2週間~3週間かけて分解吸収されていき、再び眼瞼痙攣の症状が現れます。

分解吸収されてもすぐに眼瞼痙攣が再発するという訳ではありません。
じわじわと症状が現れ始めたら再びボトックス注射を打つ必要があります。
再注射のタイミングは先に説明したまぶしさや乾燥などの初期症状を自覚したらです。
初期症状が現れたらなるべく早めに再注射した方がより強い効果を期待できます。
再注射後は個人差がありますが、最初にボトックス注射を打った時よりも1か月程度効果が持続する傾向にあります。

ボトックス注射の副作用

人体に安全と証明されているボトックス注射ですが、様々な副作用があることが確認されています。
もっとも多い副作用が開瞼困難と閉瞼困難です。
開瞼困難とは瞼を上げにくくなることであり、瞼を開いても普段より瞼の位置が下がってしまいます。
A型ボツリヌス毒性により麻痺した眼輪筋が瞼を上げる力を抑制してしまうのです。
閉瞼困難は逆に瞼が閉じにくくなり、自分では完全に目を閉じたと思っていても周りから見たら白目になります。
寝ているときも完全に閉じていないため、目が乾燥してしまいます。
そのため、閉瞼困難の症状が現れている間は定期的に目薬を差して乾燥を防ぐことが大事です。

ボトックス注射の効果が強く表れてしまった場合、全身倦怠感や発疹、全身や一部に痛みが出る線維筋痛症などの副作用を引き起こしてしまいます。
開瞼困難と似た症状の眼瞼下垂や、眉が垂れ下がってしまう眉毛下垂、視覚に異常をきたす複視などの合併症もボトックス注射の副作用として報告されており、これらの症状は1か月程度で収まります。
日常生活に支障が出てしまいそうな場合は、すぐさま当クリニックの担当医に相談してください。

中でも注意が必要なのが複視です。
複視は物が二重に見えたり目で距離を測りにくくなります。
距離を測りにくくなるとちょっとした段差や階段で躓いたり転倒してしまいますし、前方を走っている車との距離もうまく掴めなくなる場合があるため、車やバイクの運転に支障が出てしまいます。
ブレーキをかけるタイミングが遅くなってしまうと、事故を引き起こしてしまう可能性は否めません。
複視の症状が出たときは運転を控え、症状が治まるまで安静にしていることをおすすめします。

極まれに細菌感染にかかってしまう方がおり、そのほとんどが尿路感染です。
また、過去に痙攣発作を起こした経験がある方は、ボトックス注射の後に再び痙攣発作を起こしやすい傾向があると医療品メーカーによって報告されています。
痙攣発作が起こってしまったときは直ちに担当医に連絡を入れてください。
他の注射と同じく注射後には注射痕が残りますが、翌日~数日で自然に治癒します。
注射痕付近に軽い内出血を起こしてしまうことがありますが、内出血でできた痣は2週間程度で自然と消えてなくなります。

ボトックス注射の注意点

ボトックス注射の注意点
ボトックス注射を打つ前と後にはいくつか注意点があります。
注意点を守らないと副作用が出やすくなってしまいます。
また、守っていれば軽い症状で済む可能性があった副作用が、必要以上に強く出てしまうこともあるのです。
最悪の場合は取り返しのつかない後遺症を引き起こしてしまいます。
最後は、ボトックス注射に関する注意点を解説していきます。

施術前の注意点

妊娠中や授乳中の方、妊娠を希望している方は、事前のカウンセリングなどで担当医に伝える必要があります。
ボトックス注射が母体にどのような影響が出るのか分かっていません。
そのため、万が一のことを考えてボトックス注射を打つことは正式に禁止されています。
ボトックス注射により母乳の成分がどのように変化するか、離乳できていない乳幼児の発育に関してどのように影響が出るかは分からないため、断られる可能性が高いです。
中には妊娠中と知らなかったり、妊娠中であることを隠してボトックス注射を打っても影響が出なかった報告がありますが、立証に十分な件数ではないため妊娠の可能性がある方は避けておく方が賢明でしょう。

過去にボトックス注射を打った経験がある方や、顔に打ったボトックス注射が原因でアレルギー反応が起きたことのある方も同様です。
初めてボトックス注射を打つ方に対し、2回目以降の方は効果や持続期間が違うことが多く、術後観察にて患者と医師の間に相違が生まれてしまいます。
アレルギー反応が起こる可能性は極めて低いですが、軽度なもので発疹やかゆみ、重度なものだとアナフィラキシーショックを引き起こします。
通常は注射前にパッチテストは行いませんが、アレルギー反応があった方はパッチテストを行う必要があるため、結果によっては断られてしまうことを頭に入れておいてください。

当日に飲酒をしている方も断られます。
飲酒をしていると血行が良くなるため、注射痕が腫れてしまったり過度な内出血が起こってしまったり、効果が薄れてしまう可能性が高くなるからです。
内出血が起こりやすい薬を服用してる方は、必ず担当医に相談しましょう。
通常は血管が破れて内出血が起こっても、すぐに血液が凝固して自然に止血します。
しかし、この類の薬は血液の凝固を抑えてサラサラにする効果があるため、なかなか止血されずに内出血が広がってしまいます。
ボトックスと相互作用のある薬を服用している方も同様です。
ボトックスと服用中の薬が相互作用を起こすことで、症状が悪化してしまったり、薬の効果が弱まったりする可能性があります。

注射後の日常生活における注意点

注射後の日常生活における注意点
注射前と同じく内出血が広がってしまうため、注射後は血行が良くなる飲酒や激しい運動は控えたほうが賢明です。
温泉やサウナも同様ですし、プールも血行が良くなるため推奨できません。
注射後24時間以内に注射した場所をもんだり擦ると内出血が悪化したり、かゆみを引き起こす可能性があります。
エステやマッサージは可能ですが、数日間の間は注射した場所を避けるようにしましょう。
注射痕が腫れていたり内出血が引かない時はすぐに担当医に連絡する必要があります。
何も症状が見られなくても仕上がりを確認する必要があるため、注射後の1週間~2週間後に術後観察をお願いしてください。
医師でないと分からないような副作用や合併症の初期症状が確認されることがまれにあります。

注射後に女性は2か月程度(注射後2回目の月経が終わるまで)、男性は3か月程度避妊する必要があります。
妊娠中や授乳中の方と同じく、ボトックス注射が卵子や精子にどのような悪影響が出てしまうのかが分かっていないからです。
避妊せず妊娠し、その後胎児や母体に影響が出てしまってからでは手遅れになる可能性がゼロではないため、必ず守りましょう。

眼瞼痙攣は安心できる美容皮膚科へ相談

眼瞼痙攣は安心できる美容皮膚科へ相談
眼瞼治療に最も有効であるボトックス治療ですが、注射後のリスクを少しでも下げるため副作用や合併症などの正しい知識を身に着け、信頼できるクリニックやボトックス注射の経験が豊富な医師に依頼する必要があります。
この記事で紹介した注意点は、自身で気を付ければ避けられるものがほとんどです。
気を抜いてリスクを高めてしまわないように注意しましょう。