美容からスポーツ外傷にも効果があるPRPによる再生医療とは?

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/11/27 更新日:2020/11/27

再生医療のひとつであるPRP療法を知っていますか。
再生医療とは、簡単に言うと自分の細胞を用いて組織を再生させる医療のことですが、PRP療法はそのひとつです。
スポーツの分野で最初に注目され始めましたが、PRP療法はシワやたるみの改善でも注目されている治療法です。
PRP療法では、どのような仕組みでシワやたるみが改善できるのか、というポイントをこの記事では解説していきます。

再生医療について

再生医療について
PRP療法について紹介する前に、注目されている再生医療という分野はどのような治療分野なのかを紹介します。

再生医療とは?

そもそも、再生医療とは幹細胞や体細胞を用いて、臓器や組織を再生させる医療です。
この臓器を再生させる、という発想そのものが画期的でした。
かつての医療では怪我や手術によって欠損した臓器や組織はそのままで残りの人生を生きなければならなかったのが、再生医療の発達に伴い失った組織や臓器の部分を再生させ、元の機能を取り戻す、という取り組みへの希望が生まれたのです。
幹細胞という何にでもなれる細胞を用いたり、皮膚などの体細胞を一度生まれたときの状態に戻して様々な臓器や組織に分化できるように処理するなど、再生を促すための材料の開発に世界中の科学者が挑むことになったのです。
再生医療分野に関する研究は、平成29年に再生医療に関する法律施行規則を一部改正するなど政府も力を入れている医療のひとつです。
化合物である薬で失った機能を治療するのではなく、本来人間に備わっている再生する力を使って機能を取り戻そうというものであり、一生治療薬を飲まなくてはならなかったような病気が再生医療によって完治すれば、服薬することなく生活できる日が来るかもしれません。
医療の発達で健康寿命が延びる平成、令和の時代で生き生きと長生きしていく国民のために、再生医療はより力を入れて研究されている分野なのです。

体細胞と幹細胞の利用

細胞には、大きく分けて2種類のものがあります。
ひとつは皮膚や血液のようにすでに組織や臓器となった体細胞、もうひとつは組織や臓器になる前の、どんな臓器や組織になることも出来る幹細胞です。
再生医療では、それぞれの体細胞や幹細胞の性質を利用して、欠損した臓器や組織の再生を実現します。
例えば、最終分化して体の組織となった体細胞はその形から変化することが出来ず、どんな臓器や組織になれる幹細胞に比べて汎用性は低いと感じるかもしれません。
しかし、同じ特性の組織に移植するのであれば有効にはたらき、植皮などの体組織を他の部分に移植することで失った組織の再生や機能回復を促すことも、再生医療のひとつです。

幹細胞を用いて行う再生医療は、幹細胞のどんな臓器や組織にもなることの出来る性質を利用したものです。
幹細胞は人体の中にもあるため採取して培養することで再生医療に利用可能ですが、人工的に作られた幹細胞を培養することによって再生医療を行う、という試みも研究されています。
これまでは幹細胞を作る時、受精卵を用いて作成するES細胞が主流で倫理的な問題などがあり実臨床での使用は難しいとされてきました。
人工的に作製できるiPS細胞はES細胞のような倫理的な問題が無いことが特徴で、2020年時点では実用化はされていないものの、今後注目の幹細胞を用いた再生医療技術だと言えるでしょう。

PRP療法って何?

PRP療法って何?
再生医療について学んだところで、PRP療法について説明します。
PRP療法とは体細胞を用いた再生医療のひとつであり、体細胞は血液中から採取する、というのが特徴的です。
そんなPRP療法についてここでは紹介します。

PRP療法とは

PRPとは多血小板血漿の略称です。
血小板とは出血した時などに活躍する血液を固める機能を持った細胞ですが、私たちの血中に常に一定数存在しているものです。
この血小板が入った血液を特殊な技術で処理して血小板が豊富に含まれた液体を抽出して、作られるのがPRPです。
こうして作られたPRPを用いて組織を再生させるのがPRP療法であり、自分から採取した細胞を用いて治療するため拒絶反応が起こらない、安全性の高い再生医療として注目されています。
世に広く知られるようになったのはメジャーリーグのピッチャーが靭帯を損傷したときに、その修復を目的としてPRPを注射したというニュースがきっかけです。
スポーツ外傷などの整形外科の分野をはじめ、現在ではシワやたるみなどの美容分野でも用いられて注目を集めているのがPRP療法です。
日本よりも先駆けてヨーロッパやアメリカで実用化されており、自己治療力をサポートする治療法として様々な分野の治療のために頻繁に行われています。

PRPの持つ成長因子とは

PRP療法で特に重要なのが、PRPに豊富に含まれる血小板の成長因子による作用です。
血小板は出血する傷口部分にかさぶたを作って止血する、という作用だけ果たすのではなく傷が塞がった後に元通りになるように、周囲の組織を成長させて傷の部分を修復させる成長因子を放出して傷の回復を促す、という機能も持っています。
打撲や捻挫などの怪我によって腫れた場合も、皮膚の下で出血が起きて血小板から痛んだ組織を修復するように促す成長因子が放出されることで、ヒトの身体は治っていくのです。

PRP療法はこの成長因子を放出する血小板の作用に着目した治療法であり、患部に高濃度の血小板を含むPRPを注入することで組織の再生を強力に促すことを目的としています。
血小板が産生する成長因子には血管を新しく伸ばして患部に潤沢な血液を導く作用、線維芽細胞という傷着いた部分を埋める効果がある細胞を活性化させることによってコラーゲン産生を促す作用などがあります。
欠損した部分に組織を再生させる、という人体の機能を引き出すことが出来るのです。
これがPRP療法による再生医療のメカニズムなのです。

PRP療法はどの場面で使えるのか

PRP療法はどの場面で使えるのか
PRP療法は整形外科、美容外科や美容皮膚科などで用いられている治療法であり、損傷した体組織を修復しようとする自己治癒力を引き出すことが目的のものです。
ここでは、具体的にどのような場面でPRP療法を用いて治療を行っているのか、というポイントについて解説していきます。

膝の治療におけるPRP療法

ひざの変形で悩んでいる方にもPRP療法が適応になるかもしれません。
変形性膝関節症は非常に患者数の多い疾患で、すり減った軟骨などが原因で関節滑膜に炎症が起こり、膝が変形してしまう疾患です。
変形した膝関節は、体重のかかり方がアンバランスになる原因となり、本来とは異なる負荷のためにさらに膝を痛めてしまいます。
半月板が痛んだり、軟骨がすり減ってしまったり水が溜まったりする原因となり、歩きづらくなったり、痛んだりする理由になったりすることもあるのです。

そんな変形性膝関節症ですが、PRP療法で組織の修復を促したり炎症を抑制することで治療出来る可能性があります。
血小板自体は軟骨や半月板にはならないので、完全に失った軟骨や半月板を作り出すことは出来ないのですが、炎症を抑えたり膝周囲の靭帯などの損傷を回復させることによって膝の変形を抑えることが出来て、歩行障害や慢性的な膝の痛みなどを防止することに繋がります。
膝に水が溜まるのも炎症によるものですので、PRPを注入することで炎症を抑えることで水が溜まることを予防出来て、膝の水を抜くために整形外科を受診する回数を減らすことも出来るのです。

スポーツ外傷・障害におけるPRP療法

PRP療法が日本でもよく知られるようになったのは、日本人メジャーリーガーが肘の靭帯を損傷した時に、その治療のためにPRPを注射したからです。
同様に、様々なスポーツ外傷・障害に対してもPRP療法を行うことが出来ます。
靭帯損傷や肉離れ、腱炎などの炎症を抑え、組織の修復を促すことによって早く完治し早期復帰を実現することが期待されています。
手術が必要と診断されるような怪我でも、PRP療法が奏功して手術を回避できたという例もあります。
手術をしなければリハビリにかかる時間も短く済むなど、PRP療法は選手にとっても大変メリットのある治療なのです。
血小板を注射することで自己治療する力を活性化して治療する、というPRP療法の効果はスポーツ医学分野でも注目されているのです。

美容におけるPRP療法

シワやたるみなどの見た目の状態の改善を目的として、PRP療法が施行されることがあります。
PRPを注射することによって、組織の修復に関わる成分の産生を活発に行うことが出来ます。
その成分の中には、コラーゲンやエラスチンなどの肌のハリやツヤを保つためには欠かせない成分も含まれており、その生成を活発化させることが出来るので肌の健康にPRPは有効に働くのです。
自分の血液を使うのでアレルギー反応がほとんどなく受けられることも魅力で、アレルギー体質の方でも比較的安心して行える美肌治療です。

同じように肌のハリを出すために行われる治療に、ヒアルロン酸の注射があります。
ヒアルロン酸注入のように皮下組織に体積を加えてハリを出すのではなく、PRP療法では自分の肌の状態を改善することでハリやツヤを出すことが出来ます。
ヒアルロン酸のように人体に吸収されてしまって後から補充する必要がある、というものでもありません。
一度PRP療法によって肌の状態を改善することが出来れば、日頃から肌のメンテナンスをすることによって、その状態をキープすることが出来ることも魅力です。

肌の老化の原因とは?

肌の老化の原因とは?
美容の分野でも活躍するPRP療法ですが、肌のシワやたるみ、シミについても効果があるのでしょうか。
それらができる原因について説明し、PRP療法を受けることによってどのように改善されるのか、というポイントについて解説します。

シワの原因

しわは皮膚の老化によって起こります。
若い時は皮下組織を構成するコラーゲンやエラスチンが次々と作られることによってしっかりと肌を支持するのですが、加齢によってコラーゲンなどの産生が低下することによって支えきれなくなってシワが出来てしまいます。
それだけでなく、紫外線などの外的要因によって肌を構成するコラーゲンやエラスチンが傷ついてしまうことによって、肌を支持することが出来なくなりシワが出来てしまうのです。
また、皮下組織だけでなく肌そのものも、加齢によって乾燥して水分が失われると硬くなって、小じわが出来てしまう要因になるのです。

この傷ついたコラーゲンやエラスチンは蓄積され、年齢を重ねて新陳代謝が低下すると新しいコラーゲンやエラスチン線維が作られにくくなると目立ってきます。
若い時の日焼けが歳をとった後のシワになるのは、こういったメカニズムによるのです。
PRP療法では血小板を注入することによって、新しいコラーゲンやエラスチンを産生するよう促す作用が期待出来ます。
この作用によって若い時のような活発にコラーゲンやエラスチンを産生する状態を作り出すことが出来るのです。

たるみの原因

顔の皮膚のたるみに関わっている要素は筋肉の衰え、皮膚の乾燥、老化です。
表情筋と呼ばれる小さな筋肉は、緊張と弛緩を繰り返すことで筋肉の質が悪くなり、加齢性変化も加わると更に筋繊維が緩んで顔のたるみにつながる、と言われています。
たるみを予防するために表情筋トレーニングをすることが有効、と言われている理由がこれです。
肌の乾燥や加齢により元気なコラーゲンやエラスチンが減り、肌の弾力が無くなることでも顔のたるみに繋がってしまいます。
加齢によって新陳代謝が下がって、新しいコラーゲンやエラスチンを産生することが難しくなり肌が弾力を失うこともたるみが生じてしまう理由です。

これらの3つの要素に加えて、太陽の紫外線などの外的要因によりコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を作り出す線維芽細胞が傷つき、ハリや弾力を失うことでもたるみが出来てしまいます。
PRP療法で成長因子を放出する血小板を補うことで、組織を構成するコラーゲンやエラスチン産生を促すよう刺激し、傷ついた線維芽細胞を修復する力を取り戻させることが、PRP療法によるたるみ改善の目的なのです。

シミの原因

シミの主な原因は紫外線です。
皮膚の細胞は分裂を繰り返すことで、新しい細胞を作り出しながら古い細胞は角質として捨てる、というターンオーバーを繰り返しています。
紫外線を浴びて生成されるメラニンという色素は、本来ならターンオーバーに伴って古い細胞と一緒に剥がれ落ちるものであり、シミとして皮膚に留まるものではありません。
若い人ではあまりシミが問題にならないのは、皮膚の細胞のターンオーバーが活発であり、メラニンがきちんと脱落してくれるからです。

しかし、紫外線を浴び続けると肌がダメージを受け、皮膚細胞の再生能力が低下してしまいます。
結果、細胞のターンオーバーが正常なサイクルで行われなくなり、メラニンを含んだ古い細胞は脱落することが出来なくなるのです。
そのため、メラニン色素が皮膚に沈着してシミとなってしまいます。
PRP療法では皮膚の細胞のターンオーバーを促し、メラニン色素の脱落を促すことでシミが出来るのを防ぐ効果が期待されています。

老化による肌の悩みをPRP療法で解消しよう

老化による肌の悩みをPRP療法で解消しよう
再生医療は政府も注目する医療で研究が進められている分野であり、より発展していくことが見込まれます。
老化により衰退した細胞を何もしないで回復させることは難しいのですが、PRP療法を行うことで自己再生能力を取り戻して肌のハリを回復させたり、若々しい状態へと近づけることが出来ます。
PRP療法で肌の修復機能を再生させて、気になるシワやたるみの悩みを解消しましょう 。