年を取るにつれて、顔にしわやたるみなどが出てきて悩んでいるという方や、エラがなければ小顔になれるのにと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そんな悩みを持っている方のための治療にボトックス注射があります。
しかし、ボトックス注射をしてみたいけれど副作用などが心配という方もいるかもしれません。
ここでは、そんなボトックス注射についてどんな治療なのかや副作用などについて詳しく紹介していきます。

目次
ボトックス注射とは
顔のしわやたるみ、エラの悩み解消が期待できるボトックス注射ですが、一体どんなものなのでしょうか。
まずはボトックス注射とはどんな治療法なのかや効果の持続期間、種類などについて詳しく見ていきましょう。
ボトックス注射(ボツリヌス療法)について
ボトックス注射は、ボツリヌス療法とも呼ばれています。
ボトックスとはボツリヌス毒素製剤の商品名の1つです。
ボツリヌス注射では、ボツリヌストキシンが有効成分の薬剤を筋肉に注射し、しわなどの原因となる筋肉の緊張を緩和します。
ボツリヌストキシンはボツリヌス菌によって作られたタンパク質です。
このボツリヌストキシンは、筋肉の活動を抑え、緊張して固まってしまった筋肉を緩ませることができるため、表情筋によって作られる眉間のしわや目尻のしわを目立たなくするのに効果的です。
ボトックス注射で注射するのはボツリヌス菌ではないため、感染症にかかる心配はありません。
ボトックス注射の持続期間
ボトックス注射は、注射してすぐに効果が現れるというものではありません。
注射した当日中はほとんど効果が見られませんが、注射後2~3日程度で徐々に効果が現れ始め、通常2~4週間後ぐらいに一番効果が現れます。
3~4ヵ月間は効果が持続しますが、3~4か月が過ぎると数週間かけて徐々に効果がなくなっていき、注射する前の状態に戻ります。
効果がなくなってくると、瞬きの回数が増えたり、まぶしいと思うような症状が現れるため、それらの症状が現れてきたら再びボトックス注射を行うか検討する必要があります。
また、1度目のボトックス注射の持続期間は3~4ヵ月間ですが、再投与後の持続時間は4~5か月間と、初回より長く効果が期待できるのが特徴です。
ボトックス注射は効果が現れるのに少し時間がかかるため、イベントなどの予定に合わせて効果を出したい場合は、半月から1ヶ月くらい余裕をもって治療を行うようにしましょう。
ボトックス注射の種類
ボトックス注射に使用されるボトックス製剤は、1種類だけではありません。
世界中で様々なボトックス製剤が作られており、安価なものなど多様な種類があるものの、品質管理や製造過程などの観点から信頼のあるボトックス製剤として代表的なものは数種類あります。
そんな代表的な数種類のボトックス製剤の中で、日本国内で厚生労働省が美容目的で使用するボトックス製剤として、唯一承認を与えているのがボトックスビスタという薬剤です。
ボトックス製剤の中で代表的な薬剤であるボトックスビスタは、厚生労働省のお墨付きというだけでなく、世界中で使われているため、症例数も多く安心感があります。
ボトックス注射をする部位
ボトックス注射は、眉間や目尻のしわなどを目立たなくする治療であると紹介してきました。
しかし、ボトックス注射は美容目的だけに使用されている治療ではなく、医療目的でも使用されている治療です。
ここでは美容目的や医療目的で、どんな部位に効果が期待できるのかを詳しく見ていきます。
顔の美容で効果的な部位
顔の美容目的でボトックス注射を行う場合、1.しわを目立たなくさせる、2.目を大きくパッチリさせる、3.エラを細くして小顔効果を上げる、4.顔のたるみを改善して口角を上げるといった様々な効果が期待できます。
そんな中でしわを目立たなくさせる効果が期待できる部位は主に、1.額、2.眉間、3.目じり、4.唇、5.顎の5ヶ所です。
それら5か所のしわが目立ってくると、顔の印象に大きな影響があり、老いを感じさせてしまうため、ボトックス注射をしてしわを目立たなくするだけで若々しく見せることができます。
保険診療が受けられる部位
ボトックス注射で保険診療が受けられるのは、1.眼瞼けいれんや片側顔面けいれん、2.重度のわきが・多汗症、3.脳卒中などが原因の、手足の麻痺や言語障害などです。
眼瞼けいれんは、50代以降の女性に多く見られる目の開閉がうまくできなくなる病気で、片側顔面けいれんは、無意識に顔の片側がぴくぴくしてしまう病気です。
90年代後半から2000年にかけて保険適応となりました。
ボトックス注射の効果は3~4ヵ月程度で切れてしまうため、3~4ヵ月程度経ったら再び投与するか検討する必要があります。
重度のわきがや多汗症に対する治療として、ボトックス注射は2012年から保険適応となっており、発汗を抑制する効果は4~9か月持続します。
脳卒中の後遺症に対して行われるボトックス注射は、筋肉のつっぱりを改善するための治療の1つです。
注射をした日の注意点
ボトックス注射をした日には、注意しなければいけないことがいくつかあります。
それらは、1.注射した部位を強くこすったり、揉んだりしないようにすること、2.帽子やヘッドバンドを着用しないようにすること、3.入浴は短く軽めにして、洗顔や洗髪はしないようにすること、4.アルコールを控えること、5.激しい運動などを控えることなどです。
注射した部位を必要以上に触ったり、アルコールの摂取や激しい運動などを行って血液の流れを増加させてしまうと、必要以上に内出血が起こってしまう場合があるので注意しましょう。
ボトックス注射の副作用について
ボトックス注射は、筋肉の緊張を和らげ筋肉の動きを止めるものであるため、いくつかの副作用が起こる場合があります。
特に初めてボトックス注射をした場合には、それらの副作用も少し出やすいため注意が必要です。
副作用は一時的に起こるものであり、多くは薬剤の効果がよく出ているときに起るものなので、効果が薄れるにつれて副作用も次第に消えていきます。
また、2回目以降の治療の際には、そんな副作用の頻度も減っていくのが一般的です。
これからそんな副作用について説明していきますが、ボトックス注射をする前に少しでも副作用などについて不安がある場合には必ず医師に相談するようにしましょう。
頭痛
ボトックス注射した際の副作用として、まず挙げられるのが頭痛です。
ボトックス注射をすると、顔の筋肉の緊張を和らげるため、注射をする前とした後では顔のバランスが変わってきます。
そういった状態になったときに、それまで使っていなかった思わぬ筋肉に疲労がたまってしまい、頭痛へとつながってしまうことがあります。
しかも、普段めったに頭痛にはならないという人の方が起こりやすいとも言われています。
そんな副作用としての頭痛は、注射した日だけに起るというわけではなく、数日間にわたって継続して起こる場合がありますが、時間の経過とともに徐々に治まっていく場合がほとんどです。
内出血
次に考えられるボトックス注射の副作用は内出血です。
ボトックス注射の副作用として最も頻度が高いのがこの内出血ですが、これはボトックス注射に限らず全ての注射に対して起こる可能性があるため大きな問題はありません。
通常内出血は1週間程度でだんだんと吸収されて、自然と赤みが消えていきます。
赤みが気になる方は、赤みが治まるまでメイクで隠すのがおすすめです。
また、内出血を予防・改善するクリームを用意しているクリニックもあるため、気になる方は医師に相談してみましょう。
眉毛下垂、眼瞼下垂
ボトックス注射の3つ目の副作用として考えられるのは、眉毛下垂や眼瞼下垂です。
これらの症状は、薬剤が効きすぎて必要以上に筋肉の緊張が和らいでリラックスした状態になったときに起ります。
しかし、目が明きにくいなどのこれらの症状はずっと続くものではなく、一時的なものです。
一般的には効きすぎた薬剤の効果が弱まってくるとともになくなり、おおよそ1ヶ月程度でそれらの症状は消えます。
薬が効きすぎるなどの心配がある方は、ボトックス注射をする前に医師によく相談するのがおすすめです。
表情がこわばる
ボトックス注射の副作用として4つ目に挙げるのが、表情がこわばるということです。
表情がこわばるとは、うまく表情が作れなくなる(表情がなくなる)ということで、例としては自然な笑顔や口角の上げ下げがうまくできなくなります。
こういった副作用は、額や目尻などの日常あまり動かすことのない部位にボトックス注射をする際には起こりにくく、口回りなどの日常よく動かす部位に注射をした際に起こりやすいです。
また、口回りなどの日常よく動かす部位以外でも、薬剤の量が必要以上に多かったり、正しい位置に薬剤を注入できなかった場合などにも表情がこわばるといった副作用が起こる可能性はあります。
しかし、こういった副作用が起こるのは非常にまれなことです。
皮膚のたるみ
ボトックス注射の5つ目の副作用は、皮膚にたるみができる場合があるということです。
エラに対してボトックス注射をすると、咬筋の厚みがなくなるので顔が小さくなりますが、その厚みがなくなった分だけ皮膚が余ってしまい、余った皮膚が重力に負けて皮膚がたるんでいるように見えてしまいます。
通常は皮膚も一緒に縮むため、そういった皮膚のたるみは起きにくいです。
しかし、皮膚の弾力性が低くなっている年配の方や、若くても皮膚の薄い方などは皮膚のたるみが起こる場合もあります。
また、若くて皮膚が薄くない方でも大量のボトックスの注入を行った場合には、たるみが出てしまうこともあるので注意しましょう。
硬いものが噛みにくくなる
ボトックス注射をした際の副作用として6つ目に挙げるのが、硬いものが噛みにくくなる場合があるということです。
この副作用が起こるのは、小顔のためのエラに対してボトックス注射をしたときで、薬剤がものを噛むための咬筋の働きを緩めるため、注射してから数日間は硬いものが噛みにくい状態になることがあります。
ものを噛むための筋肉は咬筋だけでないため、普通に食事をすることはできます。
しかし、肉などの噛みにくいものや硬いものを噛む際には少し不自由さを感じたり、噛むのに時間がかかって疲れやすくなったりする場合があるので注意が必要です。
しかし、時間が経つにつれて慣れて違和感がなくなっていくので過度な心配をする必要はありません。
その他、炎症、かゆみ、腫れなど
ボトックス注射をした際に起こる副作用として最後に挙げるのは、注射部位の傷みや炎症、かゆみ、腫れといったものです。
他の注射治療と同様に、注射の針を刺すときや薬剤を注入する際に痛みを感じたり、注射した部位にかゆみや腫れなどが起こる場合もあります。
炎症やかゆみ、腫れといったものは薬が効きすぎている場合に起こるものであるため、時間が経つにつれてそれらの症状が緩和していきます。
また、それらの症状は初回に起こりやすく、2回目以降は頻度が減っていくことが一般的です。
妊娠している人はNG!ボトックス注射ができない人
ボトックス注射をしたいという方でも、場合によってはできない人もいるので注意しましょう。
まず最初に挙げられるのは、妊娠している方や授乳している方、神経や筋肉に疾患を持っている方などです。
他にもアレルギー体質であったり、重篤な疾患をもっている方などもボトックス注射をすることはできません。
また、常備薬を使用している場合なども薬によっては危険な場合があるため、医師に確認するようにしましょう。
妊娠している方や授乳中の方がボトックス注射ができないのは、ボトックス注射が人間の精子や卵子にどんな影響を与えるのかがまだわかっていないためです。
2020年4月時点では、精子や卵子に影響する可能性を正式に否定できる研究が進んでいないため、妊婦している方や授乳中の方はボトックス注射を控えるのが望ましいといえます。
しかし、もし妊娠していることに気が付かずにボトックス注射をしてしまったという場合でも、必ずしも胎児に悪い影響があるというわけではなく、妊娠をあきらめたりする必要はありません。
妊娠中にボトックス注射をしてしまったという方であっても、元気な赤ちゃんを出産したという例も多くあるからです。
しかし、今後研究が進んで精子や卵子、胎児への影響があるのかないのかはっきりするまでは、妊娠している方や授乳中の方はボトックス注射を控えたほうがいいでしょう。
ボトックス注射は専門の美容皮膚科へ相談
眉間や目尻のしわ治療などの美容目的だけでなく、医療に用いられているボトックス注射について、どんな治療なのかや効果の持続期間、副作用についてなどご理解いただけましたでしょうか。
特に副作用については、様々な副作用が起こる可能性はありますが、薬剤が効きすぎている場合などがほとんどで、正しく使用するのであれば過度な心配は不要です。
ボトックス注射をしたい方は、まずは一度当院にご相談ください。