多血小板血漿によるPRP療法とは?再生医療からアンチエイジングまで

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/02/07 更新日:2020/02/14

アンチエイジングを期待できる治療方法やしわやたるみの改善方法を調べているときに、聞き慣れない言葉として「PRP療法」という言葉が気になった方もいるかもしれません。
PRP療法とは注射を用いた施術ですが、注射するのは自分の血液から分離した多血小板血漿という成分です。
もともと自分の体内を循環していたものなので、アレルギー反応やダウンタイムなどが比較的少ない方法として注目を浴びてきています。
一般的にどのような治療に使われているのか、美容での治療の流れやメリットなどをご紹介します。

多血小板血漿によるPRP療法とは?

多血小板血漿によるPRP療法とは?
PRP療法とは、自分の体が持っている修復力をサポートする治療方法です。
PRPという英語は多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)の略称です。

血小板の成長因子の働きによって損傷部分を修復する

PRP療法は成長因子によって修復能力を高めることが目的で、注射に用いられる多血小板血漿が治療の重要なポイントです。
しかし多血小板血漿といっても普段の生活や治療ではあまり耳にしないような少し複雑な名前ですので、まずそれぞれ単語について解説します。

・血小板
血小板は血液の中にあり、体の組織を自分で治癒する働きをもっている成分です。
出血してもいずれ止まるのはこの血小板が大きく関わっています。

・血漿(けっしょう)
血漿は血液のなかに含まれている液体成分の名前です。
この血漿のなかには血小板の他にも赤血球や白血球、そして栄養素なども含まれています。

この二つのうち、体を修復する働きをもっているのが血小板ですが、血小板の濃度を人工的な方法で高くした血漿、つまり血小板の量が多くなっている血液成分が多血小板血漿です。
血小板の割合を高めることで通常よりも修復能力が上がることが期待できる治療方法となります。

また血小板の濃度を高めるための使われる血液は自分の体から採取し分離されたものですで、人工的につくられた薬と比べて副作用がほとんど出ないのが特徴です。

再生医療としても注目を浴びている

PRP療法はさまざまな治療分野で採用されている方法で、もともとは皮膚の潰瘍や壊疽、歯槽骨や歯肉の再生を促進する目的で使用されていた再生医療です。
スポーツ選手の肉離れや靭帯損傷などケガの治療に用いられたことがきっかけとなり、スポーツ医療としても注目を集めています。

PRP療法の効果が期待できる症状は?

PRP療法の効果が期待できる症状は?

PRPで治療効果が高くなる期待ができるジャンルとして、スポーツによる外傷や障害の治療などが注目されていますが、その他では美容でのエイジングケアなどがあります。

変形性関節症の治療

変形性関節症では関節にかぶさっている軟骨の関節がすり減ることにより関節部分に痛みが発生します。
ヒアルロン酸やステロイドによる注射や、内服や外用の薬で痛みや炎症を抑えるのが一般的な治療方法です。
一般的な方法では効果が出なかった方でも損傷や炎症の修復が期待されてPRP療法をおこなうケースがあります。
また、一般的な方法では副作用が出てしまった方にもPRP療法が活用されています。

スポーツによる外傷や障害の治療

上記の変形性関節症も含め、テニス肘やゴルフ肘などといったスポーツで発生するケガの治療でもPRP療法で治療を早められる期待が持てます。
これらのケガは体のなかの特定の部分が損傷している状態なので、損傷を修復する血小板の働きが重要になってくるのです。
できるだけ早くケガを治療させて試合や本番に復帰したいと考えるプロスポーツ選手などが、PRP治療を希望して行うケースがあります。

目の下のくまやしわのある肌を治療する

スポーツ界では知っている方も多いPRP療法ですが、ケガの治療以外の部分として美容治療でもPRP療法が採用されており、血小板がもつ治癒の能力により肌細胞の修復、顔のシワなど改善が期待できます。
ケガの治療でもちいられる場合には他の治療に加えてPRP療法をおこなうケースが多いですが、美容医療のジャンルでは注射や手術などいくつかある選択のひとつとしてPRP療法の施術のみを選べるケースが多くなってきています。

年齢を重ねると共に、気になってくる点の多くの症状にも採用されているのですが、なぜこうした美容治療や施術でPRP療法が期待できるのでしょうか。

肌には表側から表皮、真皮、皮下組織と3種類にわかれています。
表皮と皮下組織の間にある真皮部分にはコラーゲンやヒアルロン酸などの成分、そして収縮力や弾力をもつ繊維などの成分が含まれています。
これらそれぞれの部分の肌がもつ機能がきちんと働くと、うるおいやハリをもつ肌になります。

また表皮はある程度のサイクルにて古い角質から新しい角質に入れ替わっており、これを肌のターンオーバーと呼びます。
新陳代謝により肌が生まれ変わっていることも肌が綺麗である理由のひとつです。

肌にシワやたるみなどが発生したり、肌荒れが多くなったりするのは、肌細胞が酸化していることや、肌のターンオーバーのサイクルが乱れてしまっていることなど、皮膚の細胞の働きが悪くなっていることが原因と考えられています。
若々しい肌を保つエイジングケアのためには、肌の働きを助けることが重要なのです。

美容医療でのPRP療法は肌の気になる部分に注射をおこない、肌の皮膚細胞の治癒能力を高め肌の働きを高めて、ヒアルロン酸やコラーゲンを注射前よりも生成できることを目的とします。

PRP療法の治療の流れ

PRP療法の治療の流れ

どのように治療が行われるのか、PRP療法の治療の流れがわからないと治療に踏み切れない方もいるかもしれませんが、実は流れの手順はとても単純です。

注射するまでの一連の流れとしては以下のようになります。

1.自分の体から採血する
2.採取した血液から専用キットにて遠心分離にかける
3.遠心分離により濃縮率を高めた多血小板血漿を生成
4.多血小板血漿の治療をおこなう部分に注射する

治療を受ける人がおこなうのは採血とPRPの注射なので、メスを使用して手術することがなく大きな傷跡などが残ることもありません。

また、美容目的でのPRP療法は自分が本来もつ血小板の成分の濃度を高めて注射してコラーゲンの生成や治癒効果を求めるものなので、医学的には数年は注射による肌効果が期待できるといわれています。
美容目的でヒアルロン酸注射を受けた場合、注入してもいずれ吸収されてしまうので、効果が期待できる期間は半年から一年ほどとされています。

近年では多血小板血漿の遠心分離も進化しており、旧来は試験管と遠心分離機を使用しており時間がかかる、あるいは濃度が不安定になるケースもありましたが、専用キットの登場により安定した濃縮率でかかる時間も短縮されるようになりました。
キットによっては15分ほどで採血したものから安定した割合の多血小板血漿を生成することができます。

PRP療法で施術可能な部位は?

PRP療法で施術可能な部位は?

PRP療法では下記のような様々な症状の治療や施術に使われています。
医療目的の場合は肘や膝、皮膚や口腔内などに、美容目的の場合は顔や首、手元などに施術することができます。

・美容目的での治療該当箇所

目元:目の下にできたクマ、しわやまぶたのくぼみ、ゴルゴライン
ほほ:ほうれい線、マリオネットライン
くちまわり:口元のシワなど
顔全体:たるんできたと感じる顔の皮膚、ニキビや吹き出物の跡が残ってしまっている部位
顔以外:首や手元のシワが気になる部分

シワに関しては注射が難しいとされるちりめんジワにも効果が期待でき、非常に多くの部位に対応できるのが特徴です。

・スポーツによるケガの治療
スポーツでの損傷治療が目的の場合には肘や膝などの関節部分などに対応しているので、通常であれば治療に時間がかかってしまう部分施術することで、治癒を早める効果が期待できます。

PRP療法の副作用やリスクは?安全性は?

PRP療法の副作用やリスクは?安全性は?

PRP療法で美容医療をおこなう際に、その安全性やリスクなどが気になる方も多いでしょう。
PRP療法の治療を受ける前に、あらかじめ確認しておきましょう。

安全性

PRP療法は自分の体内を循環している血液を分離させた多血小板血漿を注射するので、薬や輸血などのようにアレルギー反応やウイルス感染の可能性はかなり低く、手術やヒアルロン酸注射など他の治療方法と比較すると安全性は高いと考えられます。

副作用

副作用や施術を受けることでの炎症、後遺症などの心配は少ないのですが、デメリットとしては直接肌の改善を助ける薬などを注入するのではなく、自分の体の修復を助ける治療という性質上、ヒアルロン酸注射などと比較すると効果を感じられるまでに期間がかかりやすい傾向にあることです。
個人差はありますが、数週間ほどはかかると考えておくのがよいでしょう。

術後の過ごし方

自分の血漿を注射するためダウンタイムも少なく、当日腫れなどが発生せず、治療を受けたクリニックでメイクをして帰るケースも珍しくありません。
当日中にシャワーも入れるのが一般的です。

PRP療法にかかる費用

PRP療法にかかる費用

PRP療法は保険診療の対象外である自由診療のため、治療を受けるクリニックによって料金も大きく変動します。
比較的費用がかからないケースでは14万円ほどで施術可能となっており、相場としては20万円前後の費用設定が多くみられますが、25万円ほどの設定にしているクリニックもあります。
料金的にはヒアルロン酸注射などよりも高く、手術よりは安めか同じ程度の位置づけです。

またひとつのクリニックのなかでもPRP療法に種類に対応しているケース、他の治療方法と合わせて費用を設定しているケース、注射本数などで料金変動するケースなどもあるので、PRP治療を検討している方は自分の希望している治療方法や費用設定に合ったクリニックを選ぶのがよいでしょう。

まとめ

まとめ

PRP療法は自分の体より採血したものからつくられる、血小板の濃度が高い血漿を注射することで自己治癒の働きを高めることを目的とした治療方法です。
プロスポーツ選手が回復を早める目的で受ける治療として注目されていると同時に、顔、首、手などのシワやたるみを改善する目的の美容施術にも使われています。

PRP療法は自分の血液から分離したものを注射するので、副作用やアレルギー反応、さらにはダウンタイムが発生する可能性は少ないこと、施術の時間もあまりかからないという
大きなメリットがあります。

自由診療のため施術費用が15万円から20万円前後となってしまうので、PRP療法を検討している方は、カウンセリングなどを通して自分に合った方法を医師と相談してみましょう。