ヒアルロン酸注射で関節の痛みを改善。肩・膝・股関節への効果とは

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2019/12/20 更新日:2019/12/31

慢性的な関節の痛みがあると、日常のあらゆるシーンで気になり、快適とは言いがたい生活になりがちです。もし痛みを緩和する方法があるのなら、検討してみたいと思われている方も多いことでしょう。

関節の痛みを緩和する方法として、ヒアルロン酸注射があることはご存じでしょうか?今回は部位ごとの痛みの原因と、ヒアルロン酸注射の効果に関してまとめてみました。

良い情報ばかりではなく、副作用や失敗例に関してもお伝えしますので、ぜひ治療の参考にしてみてください。

肩の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果

肩の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果
よくある肩の痛みの症状は、以下のようなものです。

・動かないでじっとしているときでも痛む

⇒動きに関わらず痛む場合です。

・動き続けると痛くなる

⇒動くことによって痛みが発生します。

・就寝中に痛みで目がさめる

⇒睡眠不足によって生活全般に影響が出てしまいます。

・関節が固まって手があがらない

⇒高いところにある物を取れない、髪をとかすのがツライ、かぶって着る服が着られない、洗濯物を干すときに痛むなど。

・普段の生活で重いものを持ち上げられない

⇒水の入ったポットが持ち上げられないなどの症状です。

・ズボンを引き上げられない

⇒肩に力が入らず、引き上げようとしてもできません。

・エプロンのヒモをしばるときに痛む

⇒腕を後ろに回すと、肩に痛みを感じます。

肩に痛みがある原因


肩関節の痛みの原因として、肩の関節が炎症を起こす関節炎や、関節を動かす腱板の損傷が考えられます。炎症や損傷の原因を確認しておきましょう。

【五十肩】

五十代に代表される中年以降の世代で、加齢によって肩関節の周囲が変性し、肩関節周囲の組織に炎症が起きて発症します。痛みと運動上の制約が現れます。

【肩こり】

肩の使い過ぎ・姿勢の悪さ・運動不足・精神的な緊張などによって肩周りの筋肉の血行が悪くなると、血液が運ぶ酸素が不足します。

そうなると筋肉に老廃物がたまり、筋肉細胞から発痛物質が出て筋肉を刺激し、痛みが生じます。以下の方法で改善する場合も多いようです。

肩を温める
猫背にならないように正しい姿勢を取る
十分な休養
ストレッチなどの運動
ストレス解消

【その他の病気が原因】

心臓の自律神経と首から肩の知覚神経は同じ経路を通るため、心臓に問題があると胸の痛みとともに左側の背中・肩に痛みを感じます。

病名としては狭心症や心筋梗塞が考えられます。その他、頚椎間板ヘルニアも肩の痛みを伴います。

【スポーツが原因】

中高年層を中心に、スポーツが原因の肩痛を起こすケースも増えています。

肩の痛みへのヒアルロン酸注射の効果

ヒアルロン酸は、関節の内部を満たす関節液の主成分です。関節液内のヒアルロン酸が減少すると骨と骨の間の粘り気や弾力性が低下し、関節が痛みます。

ヒアルロン酸を補充することで、痛みの緩和が期待できるのです。まとめると、ヒアルロン酸注射には以下の効果が期待できます。

関節の痛みを抑止
炎症の抑止
関節の動きを円滑にする
すり減りなど軟骨の変性抑止

膝の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果

膝の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果
次に、膝の痛みの症状を見てみましょう。

・膝の腫れ

⇒膝に水がたまり腫れてきます。

・歩き始めの痛み

⇒朝起きて歩き始めたときに痛み、しばらく歩き続けると痛まなくなります。

・正座が辛い

⇒正座ができない、もしくは正座をすると膝に痛みを感じる状態です。

・膝の内側を押すと痛みがある

⇒腫れたり硬く盛り上がった箇所があり、押すと痛みがあります。

・和式トイレのようなしゃがみこむ体制がツライ

⇒しゃがみこむなど、膝の負担となる動作が困難になります。

・立ち上がろうとするときに痛む

⇒椅子から立ち上がろうとしたときや、急に動いたときに膝が痛みます。

・30分以上歩くと痛む

⇒よく歩いた夕方などに、痛み・こわばりを感じます。

・階段の上り下り時に痛む

⇒階段の上り下りや坂道の歩行が厳しくなります。

・膝を動かすとギシギシという音がする

⇒膝を曲げ伸ばしするときに、きしむ音がします。

膝に痛みがある原因


膝関節は、大腿骨(太もも)、脛骨(すね)、膝蓋骨(膝の皿)からなる関節です。

関節の周りには靱帯や筋肉があり、安定性を保ちます。膝関節表面は滑らかな軟骨でおおわれ、軟骨は関節を動かしたり、体重がかかったりしたときの衝撃を緩和するクッションの役目をもっています。

この構造から痛みの原因を理解しましょう。

【変形性膝関節症】

軟骨は加齢によってすり減っていき、このすり減りにより、徐々に変形性膝関節症を発症します。 歩き始めや動き始め、立ち上がったときや階段を下りるときなどに、強い痛みがあるのが特徴です。

【関節リウマチ】

原因不明で、関節の腫れや痛み、こわばりを感じます。手指・手関節など小さな関節から膝を含む全身の関節に広がり、慢性化していくようです。

関節が腫れ、水がたまり、最悪の場合は骨まで破壊されるケースもあります。進行すると、歩行できないほどの痛みを伴います。

【半月板損傷】

半月板は、膝関節でクッションのような役割を果たします。ここが損傷すると痛みやひっかかりを感じ、水がたまることもあります。

スポーツでのケガが原因であることが多いのですが、高齢者の場合、特に原因なく損傷するケースもあります。

膝の痛みへのヒアルロン酸注射の効果


変形性膝関節症を発症すると、炎症によってヒアルロン酸濃度が減少し、粘り気や弾力性が低下します。膝軟骨にヒアルロン酸を注射することで、関節液の粘り気や弾力性が回復します。

関節液の働きを戻し、軟骨の摩耗を防ぎ、炎症を抑えることができるのです。

注射後、2,3日は若干違和感を覚える方も多いようですが、その後、痛みがラクになっていきます。1週間ごと、連続5回の注射を行うのが標準的な治療法です。

重い副作用は少ないと言われ、注射した箇所に若干の痛みを感じる程度です。

特に軽症な場合は効果が高いです。効果を実感される方は、連続5回注射後、一定間隔で引き続き注射する方もいます。

股関節の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果

股関節の痛みの原因とヒアルロン酸注射の効果
股関節の痛みの症状には、どのようなものがあるのでしょうか。
以下は、股関節に問題がある場合の初期症状です。

いつも膝が重い感じがする
長時間の歩行や運動の後に痛みを感じる
おしりや太もも、膝にこわばりや痛みがある

こちらは、股関節疾病の進行期に現れる慢性的な症状です。

股関節の動く範囲が狭くなる
脚の筋力が低下する
日常的に痛みがあり歩行障害がある

さらに進行すると以下のような症状になります。

動かさなくても痛みがある
股関節の動きが悪く硬くなる
筋力が低下し脚が細くなってしまう
左右の脚の長さが違ってくる

また、以下の該当する人は股関節に何らかの症状が出る可能性が高いので、注意が必要です。

家族や親戚など血縁関係者に股関節の病気の人がいる
子供の頃からあぐらがかけない

股関節に痛みがある原因

股関節の痛みの原因は、関節が炎症を起こす関節炎が挙げられます。

股関節は、大腿骨(太ももの骨)の上端にある骨頭という丸い部分が、寛骨臼(かんこつきゅう)と呼ばれる骨盤のくぼみにはめ込まれた形になっています。

この構造により、脚を各方向に動かすことができます。この構造を背景に、痛みの原因を理解していきましょう。

【変形性股関節症】
股関節の軟骨が減ることで起こります。先天性股関節脱臼の後遺症、股関節が元来浅い臼蓋形成不全などが原因の場合もあるのですが、多くの場合、年齢を重ねて軟骨がすり減ったことが原因になり得ます。

【大腿骨頭壊死症】
骨頭部分の血流が悪くなり、骨の細胞が死んでしまう病気です。進行すると、大腿骨の骨頭や股関節が変形し、痛みも強くなります。

ステロイドを大量服用されている方や、アルコールの摂取量が多い方の発生率が高い病気です。

【大腿骨頚部骨折】
股関節の大腿骨側の大腿骨頚部骨折です。骨粗鬆症などで骨がもろくなった状態で、転倒した際などに起こります。高齢者、特に女性に多く見られます。痛みと腫れを伴い、歩行が困難になります。

股関節の痛みへのヒアルロン酸注射の効果

関節軟骨の劣化は、水分が減少しクッション性が失われることで起こります。

軟骨に水分保持に優れているヒアルロン酸を注射で注入すれば、クッション性が回復し、股関節の動きを滑らかにする効果が期待できます。

ただし、股関節症に対する関節内ヒアルロン酸注入は、現在保険が適用される治療ではありません。自費負担の自由診療であり、相応の費用がかかります。

ヒアルロン酸注射の効果は永続的なものではなく、効果を得るには継続する必要があります。

医師とよく相談し、以下のような治療法を比較検討して決めていくのが良いでしょう。

運動療法(ウォーキングや水中運動)
ダイエット(肥満解消による関節の負担の軽減)
温熱療法(赤外線照射など)
装具療法等のその他の治療法

ヒアルロン酸注射の関節への副作用と失敗例

ヒアルロン酸注射の関節への副作用と失敗例
関節痛に限らず、病気やケガの際にはどのような治療法を選ぶにしろ、ほとんどの場合、副作用や失敗するケースがあるものです。

関節にヒアルロン酸注射をする場合、どのようなリスクや副作用があるのか、しっかり認識しておきましょう。

ヒアルロン酸注射による副作用

ヒアルロン酸はもともと、人間の体内の軟骨・臍帯(さいたい)・眼球など身体のさまざまな部位に存在する成分です。

そのため副作用は非常に少なく、一般的には注射箇所に若干の痛みを感じるくらいだと言われています。ただ、過敏症の方には以下のような副作用が出ることがあります。

蕁麻疹などの発疹
皮膚のかゆみ
顔や目のむくみ
顔の紅潮

ヒアルロン酸注射の失敗例

ヒアルロン酸注射は前項で述べたように副作用の少ない治療法です。ただ、ごくまれではありますが、感染症や関節内出血のような重い副作用が発生することがあります。

一例として、変形性膝関節症の治療としてヒアルロン酸関節内注射を受けていた患者が、黄色ブドウ球菌に感染し、その後死亡したケースも報告されています。
出典:http://www.medicalonline.jp/pdf?file=hanrei_201807_01.pdf

裁判時には継続的治療の際の説明義務について争われました。リスクを回避するために、特に効果を感じていないのに漫然と注射を続けるのは避けましょう。

痛みを伴う病気がある場合、生活の質が低下し、快適な毎日を送ることが困難になります。

五十肩、変形性膝関節症、半月板損傷、変形性股関節症など、慢性的な関節の痛みを伴う疾病や炎症軽減にヒアルロン酸注射は理論的に有効で、副作用も少ない治療法です。

ただし、感染症による死亡事例はありますので、リスクはゼロではありません。継続治療が必要なことや股関節の治療には保険適用がないことも忘れないでおきましょう。

また、あくまでも痛みや炎症を緩和する対症療法で、原因療法ではありません。運動療法など、他の療法との併用で治療を進めるのが基本です。