公開日:2022/02/11更新日:2022/12/16

食後の胃痛は何が原因?痛みの種類から原因となる病気まで解説

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「仕事が忙しくなると胃の痛みを感じる」「ついつい飲みすぎて胃が痛い」「お腹がすきすぎると胃が痛くなる」など、胃は体の中でも不調を意識しやすい臓器です。
特に食後、食べ物が入った状態で胃が痛くなるという場合には、暴飲暴食が原因であることも少なくありません。

胃の痛みが当たり前になり放置しているという方もいるかもしれません。
ここでは、胃痛の原因になる習慣や、胃痛での痛み方の種類、胃痛を引き起こす原因になる病気についてご紹介します。

胃痛とは

胃痛とは

普段はどこにあるのか、どんな形なのかなどあまり考えることのない胃ですが、痛みがあると胃のある位置や形まで意識してしまうということもあるでしょう。
少しでも楽になるような姿勢を取ったり、手でさすったりして痛みを軽くしようと試みた経験がある人もいるかもしれません。

胃痛は、胸の下にあるみぞおち周辺に痛みを感じる場合が多いのではないでしょうか。
胃の痛み方には、焼ける様な痛みやねじられるような痛みのように急に激しく痛む場合と、重苦しい痛み、腫れるような痛みなどのじんわりとダラダラ痛む場合があります。

胃痛を引き起こす病気にはいくつもの種類あり、病気の種類によって引き起こされる痛み方のパターンが異なります。

痛みの種類

痛みの種類

胃の痛みを表現する際には、急性の痛み方である「キリキリする」「キューっとする」と、慢性の痛み方である「シクシクする」「ズキズキする」の4種類に分けられます。

◇キリキリする痛み
焼けるような鋭い痛みがはしり、前のめりになって胃に手を当ててしまうような痛みです。

◇キューっとする痛み
ねじられるような痛みで、立っていることができず、うずくまってしまう場合もあるような痛み。
これらのような突然の激しい痛みがある場合には、胃はもちろんその他の臓器の急性の病気の場合もありますので早めの対処が必要です。

◇シクシクする痛み
重苦しく持続する痛みで、何かに集中している時には忘れられますが不快な感じがある痛みです。

◇ズキズキする痛み
シクシクした痛みがさらに強くなった痛みです。
このように持続する不快な痛みがある場合は、胃の病気が徐々に進行している場合がありますので放置しない方がよいでしょう。

痛みの原因

痛みの原因

胃痛で悩んでいる人の中には、その原因に心当たりがあるという人もいれば、なぜか胃痛を繰り返しているという人もいます。
胃痛の原因だと思っていた暴飲暴食を解消したり、ストレスを減らしたりしてもなぜか胃痛が治らなかったという人もいるかもしれません。
また、胃痛の原因がひとつではなく複数の原因があったという場合も少なくないのです。

ここでは、胃痛の原因になりやすい3つの要素と、それぞれの原因が胃痛を引き起こす仕組みについて解説します。

ストレス

一般的には、胃痛といえばストレスと関連づけて考える人が多いのではないでしょうか。
でも実際にストレスがどのように胃に影響を及ぼすのか、イメージできないという人もいるかもしれません。

ストレスから強い影響をうけやすい自律神経は、無意識のうちに体の機能を調整してくれている神経系の総称。
主に血圧を上げ、脈拍を早めることで活動的しやすいように緊張を高める交感神経と、リラックスさせて体の休息や修復し疲労回復を促し、消化吸収も促進する副交感神経のバランスを取っています。

ストレスによって自律神経が乱れて交感神経が優位な状態が続くと、胃や十二指腸の動きが抑えられてしまうので胃酸が過剰になり、胃の粘膜が刺激されてしまいます。
このようにして、ストレスが胃痛を引き起こすのです。

暴飲暴食や香辛料、アルコールのとりすぎ

お腹いっぱい、十二分に食べた後、胃の形が分かるほど胃がいっぱいになっていたということを経験したことがある方もいるでしょう。
また、アルコールを取りすぎて嘔吐してしまったり、翌朝の食欲がなかったりということもあるかもしれません。
暴飲暴食をして胃に過剰な負担をかけると、胃がオーバーワークになり、うまく機能しなくなって痛みを生じます。

胃では蠕動運動という細かな動きをしながら、強い酸性の胃液と胃に入った食物を混ぜ合わせて消化を進めていきます。
そのため内容物が多くなりすぎると、胃酸の分泌が追い付かなくなったり、うまく混ぜ合わせることができなくなったりして、疲れてしまうのです。

さらに、唐辛子などの刺激物や極端に濃い味付けの食物は、胃壁に刺激を与えてしまい、胃痛の原因となります。
また、アルコールやたばこ、炭酸飲料には、胃酸を過剰に分泌させる作用がありますので、胃酸で自らの胃の粘膜に炎症を起こしてしまう原因になることもあるのです。

ピロリ菌

かつてはストレスが原因とされていた胃潰瘍ですが、口から入ったヘリコバクターピロリ菌が胃の中に住み着き、その原因となることが明らかになりました。

強酸性の胃液の中でも生息できるピロリ菌は、アンモニアを出して自分の身が溶かされないようにしている菌。
このアンモニアが少しずつ繰り返し胃の粘膜を傷つけ続けることで、慢性胃炎が引き起こされます。
ピロリ菌を放置していると慢性胃炎から胃潰瘍に進行してしまい、胃がんの発生リスクにもなるといわれているのです。

ピロリ菌がいるかどうかは、胃カメラで胃壁の状態を見ればすぐにわかります。
除菌治療をすれば容易に駆除することができますので、胃炎を繰り返している方は一度検査してみるとよいでしょう。

胃痛を伴う病気

胃痛を伴う病気

胃痛を伴う病気には胃の粘膜が荒れた状態になる胃炎や、粘膜に傷がついてただれてしまう胃潰瘍、胃酸の影響を受けて十二指腸に傷がついてただれてしまう十二指腸潰瘍などが挙げられます。
それぞれの状態に至るまでには、ウイルスや細菌、薬剤などの明確な原因があって急速に進む急性の病変と、さまざまな要素が絡み合って徐々に変化する慢性の病変があります。

症状が現れる原因と胃の状況、気を付けたほうがよいことなどについてご紹介します。

急性胃炎

急性胃炎はストレスや暴飲暴食などの原因があって、胃の粘膜が急性の炎症を起こし、ただれてキリキリとした痛みや胸焼けや吐き気、胃が膨らんで苦しい症状を引き起こす病気です。
ストレスや暴飲暴食以外には、どんなことが原因になるのでしょうか。

感染性胃腸炎を引き起こす代表的なウイルスに、ノロウイルスとロタウイルス、アデノウイルスがあり、ウイルス以外に細菌が引き起こす胃腸炎もあります。
また、アニサキスが寄生している生魚を食べてしまうと、8時間以内に激しい腹痛を生じます。

アレルギー性胃腸炎は、アレルゲンとなる食べ物を摂取することで、アレルギー反応が起きて生じる胃腸炎。
多くの場合アレルゲンが体の中を通過してしまうと治まりますが、劇症型の場合にはすぐに受診が必要です。
いずれの急性胃炎も消化のよいものを摂り、安静にしていれば2~3日で治まりますが、嘔吐・吐血などを伴う場合は早めに病院を受診しましょう。

慢性胃炎

ピロリ菌の感染、慢性的なストレス、暴飲暴食を長期間繰り返すなど、胃が徐々にダメージを受けた際に、慢性胃炎は引き起こされます。
慢性胃炎の症状は、胃痛以外に胸やけやゲップ、吐き気、膨満感などの症状がダラダラと長期間続くことなどです。

胃の粘膜が長期間に渡って炎症を繰り返す状態が続くと、胃潰瘍へと進行してしまいます。
原因に心当たりがある場合には環境や生活習慣を改善したり、受診してピロリ菌を除去してもらったりすることが大切です。

慢性的な痛みや不快感は、慣れてくると受診するタイミングを逃してしまい、原因となる病気が重篤になってしまう危険があります。
我慢できる程度でも、なかなか治らない胃の痛みを放置することがないように気をつけましょう。

胃潰瘍

ピロリ菌やストレスなどによる胃炎が長引いたり、刺激物の誤飲や薬剤で胃の粘膜が傷ついたりすると、胃の壁面がただれて粘膜下の組織に達してしまう胃潰瘍という状態になります。
胃炎と同じ胃痛や胸やけ、ゲップ、吐き気、膨満感などの症状以外に、胃潰瘍が疑われる症状には、みぞおちのあたりのズキズキと重苦しい痛みが見られるでしょう。
胃の粘膜に潰瘍がある状態で食べ物を摂ると、食事中や食後にみぞおちや胃の痛みが強くなってしまいかねません。

胃潰瘍の痛みを我慢して放置していると、潰瘍の近くにある血管が損傷して多量の出血をしたり、胃の壁面に穴が開いて急性腹膜炎を起こしてしまったりする危険もあります。
「胃の痛みくらい」と軽視しないで、早めに受診するようにしましょう。

十二指腸潰瘍

十二指腸は胃と小腸をつないでいる25cm程度の消化器官で、腹部の右上あたりに位置。
胆のうから分泌される胆汁やすい臓から分泌されるすい液が、胃で消化された食べ物と合流する部位であり、胃の働きを制御するホルモンも十二指腸が分泌しています。

十二指腸は胃酸の影響を受けやすいにもかかわらず、酸に強くない組織なので、傷があると胃酸の影響を受けて傷つきます。
胃と同様にピロリ菌やストレスでも、炎症を起こしてしまうことがあるでしょう。

十二指腸潰瘍は、夜間などの空腹時にキリキリとした腹痛を感じます。
眠っているときに痛みを感じるため、痛みに対するストレスで不眠に陥ることも少なくありません。
十二指腸潰瘍も潰瘍から出血して、吐血や下血を起こす危険性がありますので、症状がある際は早めの受診に受診したほうがよいでしょう。

対処法

対処法

一時的な消化や腸の不調で痛みを感じた際には、消化のよい食べ物を少量ずつ食べて胃を休ませたり、水を飲んで胃液を薄めたりするなどして、安静にしていれば症状が和らいできます。

しかし食事の度に痛みが出たり、いつも同じ部位が痛くなったりする場合には、食べ過ぎや一時的な不調ではなく、胃腸炎を起こしている可能性が高いといえるでしょう。
胃腸炎が疑われる場合は、暴飲暴食などの原因となるような食習慣を改め、喫煙や刺激物の摂取などを控えてみることをおすすめします。

それでも痛みを繰り返したり、徐々に痛みが強くなってきたりする場合は、胃炎から潰瘍に進行している可能性もあります。
放置したり、市販薬で痛みをまぎらわせたりせずに、医療機関を受診したほうがよいでしょう。

受診するべき胃痛

受診するべき胃痛

「胃が痛い」「お腹が痛い」という症状は日常的に起こりやすい症状であり、胃痛があってもあまり気にせず受診もしないという方は少なくありません。
しかし胃痛には消化器系の病気以外にも、重大な疾患が隠れている場合があります。
心筋梗塞や急性虫垂炎など、緊急の処置を必要とする疾患を見逃すことになりかねません。

長期間に渡り繰り返す痛みや激しい痛み、徐々に痛みが強くなっている場合には、我慢し続けることなく医療機関を受診しましょう。
他にも背中に抜けるような痛み、痛む箇所が時間と共に移動する、胃痛以外に熱・吐き気の症状があるなどの場合は、他の病気が隠れている可能性が高いので、すぐに受診することをおすすめします。

気になる胃痛は病院に行こう!

気になる胃痛は病院に行こう!

食べ過ぎ飲みすぎやストレスで日常的に起きやすい胃痛。
「またいつもの胃の痛みだ」と思って放置していると大変なことになることがあります。
胃をいたわる生活習慣を心掛けると共に、気になる胃痛があった際には、放置せずに早めに病院を受診するのが賢明です。