薄毛予防

ケラチンとは?髪の毛とケラチンの関係を徹底解説

監修者 阿部有寛(院長)

髪トラブルの解決方法として、ヘアケア商品を取り入れることもあるかと思いますが、様々な商品や美容情報を調べていく中で「ケラチン」というワードを目にしたことはないでしょうか?

日ごろから美容に関心のある方の中には、髪の毛に良い成分としてすでに認識済みの方もいらっしゃると思います。

しかしながら、実際にケラチンがどのような成分であり、不足するとどのような症状が起こってしまうのかといった詳細な情報までは知らない方も多いため、今回の記事でケラチンの正体や髪の毛との密接な関係性について詳しくご紹介していこうと思います。

ケラチンに対する理解を深めることは抜け毛や薄毛の予防にも繋がりますので、正しい知識を身につけていきましょう!

ケラチンとは

ケラチンとは、毛髪や皮膚、爪を形成する主成分であり、18種類のアミノ酸が結合してできるタンパク質の一種です。

中でも、髪の約85%はケラチンで構成されており、健康な髪を維持していくうえで欠かすことのできない重要な役割を担っています。

また、ケラチンは髪の毛だけではなく、皮膚や爪を美しく保つためにも欠かせないことから、シャンプーやまつ毛美容液、化粧水といったヘア・スキンケア商品に配合されている場合も多くあります。

 

ケラチンに多く含まれるシスチンが髪のハリツヤやボリュームをつくる

髪の主成分であるケラチンには、他のタンパク質と比較して「シスチン」というアミノ酸が豊富に含まれており、シスチンが生み出す硬さや丈夫さといった性質によって、髪にハリやツヤ、ボリューム、弾力性などの特徴を与えています。

また、その他にもシスチンは水分を含むことで、肌に柔らかさやハリ、潤いなどを生み出してくれます。

 
≪ 豆知識 ≫
髪の毛を焦がした際に硫黄のような独特のニオイを感じることがありますが、その理由はシスチンに含まれる硫黄成分が燃えることで、刺激臭をもたらす二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を発生させてしまうからです。

 

ケラチン不足で起こる症状

毛髪や皮膚、爪を形成する成分として必要不可欠なケラチンは、不足することで様々な症状を引き起こしてしまいます。

もちろんその他の原因が絡んでいる場合もありますが、これから紹介する部位別の症状に心当たりのある方は、ケラチン不足に注意した方が良いでしょう。

 

髪質の変化(ハリ・ツヤ・コシの低下、細くなる)

髪の主成分であるケラチンが不足すると、ハリ、ツヤ、コシなどのコンディション低下に繋がります。そのため、日ごろから切れ毛や枝毛、パサつきといった症状を感じている方は、ケラチン不足を疑う必要があるでしょう。

また、髪が細くなり、ボリュームの低下を感じている場合にもケラチンは不足している可能性が考えられます。

ケラチンが不足するということは、すなわち髪の毛が栄養失調に陥っている状態であるため、髪の成長速度が低下して育ちづらくなり、抜け毛や薄毛に繋がってしまう恐れがあります。

抜け毛や薄毛の原因は、遺伝や生活習慣の乱れなど他にも様々な理由が考えられますが、ケラチン不足もまた大きな原因の1つとして挙げられます。

 

肌質の変化(ハリ・潤いの低下)

ケラチンは肌の角質層(一番外側の表皮)を構成する主成分で、肌の健康状態を守る働きがあります。

ケラチンが不足すると、肌の弾力性が失われてハリがなくなったり、角質層の保湿機能が低下して乾燥肌になったりします。

また、乾燥により皮脂の分泌量が増加することで肌荒れを起こす場合もあるため、最近肌のコンディションが悪いと感じている方はケラチン不足の可能性を疑う必要があるでしょう。

 

爪がもろくなる

「カルシウムが不足すると爪がもろくなる」というイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、実は爪を構成している主成分は髪の毛と同じケラチンです。

そのため、爪が欠けやすい、乾燥して割れやすい、二枚爪が治らないといった症状を抱えている方は、ケラチン不足の可能性が考えられます。

 

ケラチン不足を防ぐために必要な栄養素

ケラチン不足を防ぐために必要な栄養素は、大きく分けて「タンパク質」「亜鉛」「ビタミン」の3つです。

それぞれは、ケラチンを合成していく過程で非常に重要な役割を担っている栄養素ですので、すべてが不足することのないようにバランスの良い食事を心がけることが大切です。

 

タンパク質

健康な髪を育てるため、まず初めに摂取していただきたいのが「タンパク質」です。食事から摂取したタンパク質は、体内で分解、合成、変換されることにより、髪の毛の主成分であるケラチンを作り出します。

タンパク質を豊富に含む食材には、肉類、魚介類、卵、大豆製品などが挙げられます。

タンパク質は髪の毛だけでなく、健康な身体を維持するためにも重要な栄養素であるため、日ごろから肉や魚を食べる機会が少ないと感じる方は、積極的な摂取を心がけてください。

【1日当たりの摂取目安】
健康維持を目的とした場合は、成人男性で65g、成人女性で50gの摂取が必要とされています。
ただし、これはあくまでも標準体重の場合であり、実際の体重には人によって個人差があるため、成人男女共に体重1kgあたり0.8gのタンパク質摂取が理想とされています。(例:体重50kgの場合、1日に40gのタンパク質が必要)

 
≪ 豆知識 ≫
髪のハリツヤやボリュームを生み出すシスチンは、メチオニンというアミノ酸を変換することで生成されます。
メチオニンとは、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうちの1つであり、人や動物が体内で作ることのできない必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸は食事からしか摂取できないため、1日に必要なタンパク質は必ず食事で補うようにしましょう。

 
参考:厚生労働省『たんぱく質 | e-ヘルスネット』
参考:厚生労働省『アミノ酸 | e-ヘルスネット』

 

亜鉛

ミネラルの一種である「亜鉛」は、シスチンなどのアミノ酸からケラチンを合成するために必要不可欠な栄養素です。

髪の成長に欠かせない栄養素として有名な亜鉛には、ケラチンの合成をサポートするだけでなく、AGAやFAGAの原因と言われる5αリダクターゼ(酵素)の活動を抑制する働きも期待されています。

亜鉛を豊富に含む代表的な食材には、牡蠣やレバー、カシューナッツなどが挙げられます。抜け毛防止や髪の健康維持のために積極的な摂取をしていただきたい亜鉛ですが、その一方で過剰摂取には注意が必要です。

【1日当たりの摂取目安】
成人男性:11mg、成人女性:8mg
※摂取上限は成人男性40~45mg、成人女性35mgまでと定められています。

【亜鉛の過剰摂取によって起こる症状】
吐き気、嘔吐、食欲不振、胃痙攣、下痢、頭痛など
※長期的な過剰摂取が続くと、免疫の低下や善玉コレステロールの減少が起こる場合もあると言われています。

※参考:厚生労働省『eJIM | 亜鉛 | サプリメント・ビタミン・ミネラル | 一般の方へ | 「統合医療」情報発信サイト』

 

ビタミンB2・B6、ビタミンC

タンパク質や亜鉛と同様に、もう1つケラチン不足を防ぐうえで欠かせないのが「ビタミン」です。

中でもビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCの3種類はケラチンの合成に関わりが深い栄養素と言われており、ビタミンB2・B6には食事で摂取したタンパク質をアミノ酸に分解する働き、ビタミンCには亜鉛の吸収をサポートする働きがあります。

【1日当たりの摂取目安】
●ビタミンB2
成人男性:1.5~1.6mg、成人女性:1.2mg
●ビタミンB6
成人男性:1.4mg、成人女性:1.1mg
●ビタミンC
成人男性:100mg、成人女性:100mg

※いずれも摂り過ぎた際は尿として排出されるため、過剰摂取による健康への影響はそこまでないと考えられていますが、長期的な過剰摂取が続くことで健康被害が発生するケースもあるため注意が必要です。

 

食事からの摂取が難しい方はサプリメントを活用

仕事が忙しい、小食、食事制限中などの理由で十分な食事量を確保することが難しい場合には、サプリメントを活用するのもおすすめです。

タンパク質の補給をメインとしたプロテインドリンクは、コンビニやスーパーで手軽に購入することができます。また、ドラッグストアに行けば、亜鉛やビタミン類以外にもサプリメントが豊富に取り揃えられているため、誰でも簡単に購入することが可能です。

ただし、サプリメントはあくまでも足りない分を補うものとして考え、まずはできる限り食べ物からたくさんの栄養を摂取できるように心がけていきましょう。

抜け毛を防ぐ食事はこれだ!おすすめ食材ベスト12!!

 

髪のコンディション維持にはケラチンシャンプーがおすすめ

髪の内部に存在するケラチンや水分は、髪の毛の一番外側を覆っているキューティクル(毛小皮)によって守られています。

しかし、外部から髪に熱や水分を与えると閉じていたキューティクルが開いてしまい、その状態を長時間放置することで内部のケラチンや水分が流れ出して、枝毛、切れ毛、パサつきといったダメージを引き起こします。

流出したケラチンを補うためには、食事により絶えず体内からケラチンを合成していくことが大切ですが、食事以外にも髪の外側から直接ケラチンを浸透させることで、より効率的に髪の内部へケラチンを補給することが可能です。

 

ケラチンシャンプー

ケラチンシャンプーとは、その名の通りケラチンが豊富に含まれたシャンプーであり、髪の保湿や補修、外部刺激からの保護といったコンディションを整える効果が期待されています。

特に入浴時や入浴後は髪の毛が長時間濡れた状態になったり、ドライヤーで乾かす際に高温の熱を与え続けたりすることで、キューティクルが開いてケラチンや水分が流れ出しやすくなりますが、ケラチンシャンプーを用いて髪の毛に十分なケラチンを補給できれば、余分なダメージを軽減することができます。

ただし、シャンプーによるケラチンの補給はあくまでもヘアダメージの修復や予防目的であり、新たに健康な髪の毛を育てる効果は期待できません。

そのため、まずは食事からケラチンの合成に必要な栄養をしっかり摂取しつつ、キューティクルや髪のダメージ予防としてケラチンシャンプーを活用するのがおすすめです。

 

まとめ

ケラチンは髪の毛にとって必要不可欠な存在であり、常に満たされた状態をキープすることで髪の健康維持や抜け毛・薄毛予防に繋がります。

ケラチンを不足させないためには、まず、ケラチンの合成に必要なタンパク質、亜鉛、ビタミンを食事から摂取してあげることが大切です。また、食べ物による摂取と併せて、ケラチンシャンプーなどのヘアケア商品を取り入れることで更なるアプローチが可能となります。

近年、日本人の食事はタンパク質や亜鉛(ミネラル)が不足しがちとも言われていますので、髪のケア目的だけでなく、健康のためにもぜひバランスの良い食生活を心がけていきましょう!

参考:厚生労働省『「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書』
参考:文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

ABOUT ME
阿部有寛
阿部有寛
医師 
2007年山形大学医学部卒業。 一般内科、複数の企業、研究施設の産業医から、大手の美容クリニック、AGA・頭髪クリニックの医師を経て、一般社団法人日本美容医療研究協会ZENクリニック院長に就任。 【資格】医師免許/日本医師会認定産業医 > 医院長紹介ページを見る
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