「学生のころからずっとポニーテールをしていたら、生え際の毛が細く短くなってしまった」「仕事でお団子ヘアにしているので、おでこがだんだん広くなっている気がする…」といったように、髪を引っ張るような髪型を頻繁にする方で、抜け毛や薄毛の心配をなさっている方は多いです。
牽引性脱毛症は、髪が物理的に引っ張られることで毛が抜けてしまったり、血行不良となって髪に栄養が運ばれにくくなり髪が細くもろく変化してしまう脱毛症のことを指します。
脱毛症と聞くと驚かれる方も多いですが、牽引性脱毛症は一過性の症状なので、初期段階で髪を引っ張る習慣を改善すれば、治る可能性は高いと言われています。
しかし、長期間に渡り髪が引っ張られ続けているとその状態に慣れて、頭皮の痛みや違和感を感じにくくなります。そのまま髪が引っ張られる髪型を続けていると、さらに毛が抜けやすくなる可能性もあるので注意が必要です。
そこで今回は、牽引性脱毛症の原因や特徴、改善方法について詳しく解説していきます。ご自身の薄毛の状態が牽引性脱毛症に当てはまるのかしっかりと確認し、取り入れやすい改善方法でお悩みを解決していきましょう!
髪が引っ張られることが原因で起きる牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、髪を引っ張るようなきつい結び方や同じ分け目で生活することを長期的に続けることで、髪に負荷がかかって抜け毛が起きてしまう脱毛症のことを指します。
髪1本を引っ張ってみると、髪が突っ張ることで痛みを感じると思います。しかし、髪を束で引っ張る場合は髪1本1本への負荷が分散されるため痛みを感じず、髪が抜けていることや髪質が変化していることに気付きにくいといった可能性があります。
また多くの場合、髪をきつく結ぶことに慣れてしまい、頭皮の感覚が鈍くなって髪が抜けていることに気が付かない場合も多いです。ここでは、牽引性脱毛症の発症がどのようにして起きるのか、仕組みや治す方法があるのかという点について見ていきましょう。
髪に一定の長さがある方であれば老若男女問わず発症の可能性はある
牽引性脱毛症は、物理的な負荷がかかることで起きる抜け毛の症状のため、性別や年齢関係なく一定の髪の長さがある方なら発症する可能性があります。
髪が引っ張られるような髪型にしたり動作をしたりすると、毛根部分に負担がかかり抜け毛になりやすくなります。また、髪の根元が長時間引っ張られることで頭皮が血行不良を起こし、十分な栄養が行き渡らずに抜けやすいもろく細い髪に変化してしまいますので注意が必要です。
ショートスタイルであれば髪を結ったり、オールバックをしたりしていても髪の重力で負荷がかかることは少なく牽引性脱毛症を発症する可能性は低いため、ショートスタイルで薄毛が気になっている方は、別の脱毛症を発症している可能性が高いと考えていいでしょう。
負担をかけるような髪型をしている人がなりやすい
牽引性脱毛症は、ポニーテールやお団子ヘアなど、物理的に髪が引っ張られるような髪型をしている場合に多く発症すると言われています。
このような髪を結ぶ髪型をしている方が牽引性脱毛症になりやすいものの、たまにしか髪を結ばない方は発症しにくく、長期間に渡ってきつく髪を引っ張る髪型をしている方が起こりやすい特徴があります。
「10年以上ずっと同じ位置でポニーテールをしている」「仕事のときは、長時間ずっとお団子にしなければならない」といったような場合は、牽引性脱毛症を発症する可能性があるため注意が必要でしょう。
生え際や分け目など髪が引っ張られる部分に起きる
牽引性脱毛症は、生え際や分け目など髪が引っ張られ負荷のかかっている場所が薄毛になっていきます。そのため、つむじ周辺などの頭頂部や他の部分は薄毛にならないのが特徴です。
一方で、エクステによる牽引性脱毛症は、エクステをつけている襟足などに起こり、舞妓さんなど日本髪にする機会が多い方は、根を作る後頭部に起こるケースもあるとされているので気をつけましょう。
AGAやFAGAなどのようにホルモンが関係する脱毛症ではない
牽引性脱毛症は、AGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性男性型脱毛症)といったホルモンが関係する脱毛症ではありません。
なぜなら、牽引性脱毛症は物理的に髪が引っ張られることで起こる脱毛症だからです。
男性の生え際や頭頂部が薄毛になるAGAや、女性の頭頂部または全体的に薄毛になるFAGAは、ホルモンや遺伝などが原因でヘアサイクルが乱れることにより起こります。薄毛になる生え際・頭頂部だけで見るとAGAやFAGAと似ているように感じますが、牽引性脱毛症はホルモンが関係していない脱毛症であることは覚えておきましょう。
切れ毛や枝毛が目立つようになる
牽引性脱毛症になると、切れ毛や枝毛が目立ちやすくなることもあります。
なぜなら、髪が引っ張られることによって血行不良を起こし、元気で丈夫な髪が育ちにくくなるからです。
血液によって栄養が運ばれにくくなった毛は、弱い髪となって些細な摩擦でも切れたり枝毛となったりします。また、引っ張られ続けることで、髪自体の柔軟性や弾力がなくなり切れてしまう場合もあります。
牽引性脱毛症は初期段階であれば治る可能性が高い
牽引性脱毛症は、初期段階であれば、髪を作る根本部分にまでダメージが及んでいないケースが多く、髪型などの髪を引っ張る習慣を改善したら治る可能性が高いです。
私たちの髪は、毛を作り出す「毛母細胞」と、毛細血管から栄養を取り込み毛母細胞に送る「毛乳頭」の2つの細胞が正常に働くことにより、元気に成長していきます。
髪が長期的に引っ張られる状態になると、毛母細胞と毛乳頭が離れることで栄養が運ばれなくなり、成長が止まりやがて抜けていきます。しかし、この状態ではまだ髪を作る組織は残っているため、引っ張ることをやめればヘアサイクルが戻り、自然と髪が生えてくる可能性が高いのです。
牽引性脱毛症を引き起こす可能性のある7つの原因
牽引性脱毛症を引き起こす原因は髪型などによって髪に負荷がかかるためということはわかりましたが、具体的にどんな髪への負荷をかけると薄毛になってしまうのでしょうか。
ここでは髪への負荷になる可能性のある7つの原因について詳しく解説していきます。ご自身のヘアスタイルが抜け毛を起こしやすい状態ではないか、髪に負担のかかる行動をしていないか今一度確認してみてくださいね。
①ポニーテール
ポニーテールは後ろにきつく引っ張られることで、牽引性脱毛症を引き起こす可能性があります。特に毛量が多い方や、ロングヘアの方は、重さによって根元部分に負担が掛かりやすいです。
なるべく引っ張らないようゆるめに結んだり、結んだ後に引っ張られている部分の髪を引き出してゆるめたりすると良いでしょう。太めのゴムや、バネ状になっているスプリングゴムで結ぶと髪が引っ張られにくいのでオススメです。
また、毎回同じ位置で結ばずに位置を変えていくことも大切です。
②三つ編み
三つ編みは、ほどけないようにきつく編み込むことで、牽引性脱毛症になる場合があります。なるべくきつく締めないように緩くむずんだ三つ編みにして、引っ張らないことが大切です。
また、ロングヘアで毛量の多い方が三つ編みにすると、重さによってさらに根元に負担がかかるため、同じ編み込みをやり続けないよう工夫が必要です。
③お団子ヘア
お団子ヘアは、生え際の髪の毛がきつく引っ張られることで牽引性脱毛症になる可能性があります。
髪を結ぶヘアスタイルの中でも、崩れないようにヘアピンを使う機会が多いため、さらに髪が引っ張られやすい状態を作ってしまう場合があるのです。
ゆるめに髪を結ぶようにして、ヘアピンを使うときは髪がつれていないか確認しながらお団子にしてみましょう。
④エクステ
エクステは人工的な毛束を髪に編み込んだりシールで貼ったりするため、付着する髪の根元に負担がかかって牽引性脱毛症になる可能性があります。
特にエクステの毛束の本数が多かったり、毛が長いエクステをつけたりすることで重さが加わり、エクステをつけた部分に抜け毛が起こりやすくなるため注意が必要です。
そのため、エクステを一定期間つけたら、休む期間を作るなどして長期間つけ続けないようにしましょう。
⑤ヘアアイロンの使用
ヘアアイロンの使用でも、方法が悪ければ牽引性脱毛症を引き起こします。
髪にヘアアイロンを挟み、強い力で引っ張ることで負担がかかって髪が抜けてしまう可能性が考えられます。
ヘアアイロンを使用するときは、くせを伸ばしたりストレートにしたりするために、強く引っ張りやすいですが、意識的に引っ張りすぎないようにしましょう。
⑥長年同じ分け目にしている
長年分け目を変えずに同じところで髪を分けている場合、分け目から抜け毛や薄毛が起きる牽引性脱毛症になってしまう可能性があります。ずっと同じ箇所で髪を分けていると、分け目の髪の毛に負担が集中してしまうのです。
そのため、なるべくずっと同じ分け目にせずに、5ミリ程度など少しだけでも分け目をずらせると、一部分のみに負担をかけずに済みます。
⑦マンバンヘア
マンバンヘアは、オールバックにして髪をぴっちりとまとめるため、牽引性脱毛症になる可能性があります。
髪を結ぶヘアスタイルの中でも、マンバンヘアはスタイリング剤を使ってきつく結ぶため、毛が抜けやすい状態なのです。
また、髪を結ぶことになれていない男性がすることで、思っているよりもきつく引っ張って、負担をかけていることもあります。引っ張り過ぎずに、なるべく優しく結ぶことを意識してみましょう。
牽引性脱毛症の改善方法
牽引性脱毛症は特別な治療などをせずとも、初期段階であれば負荷のかかる髪型や行動をやめたら自然に治っていくとされています。
そこでここでは、牽引性脱毛症の3つの改善方法をご紹介します。対処してもなかなか治らない場合の対応についても解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
できるだけ髪に負担のかかる髪型をやめる
牽引性脱毛症を改善するためには、できるだけ髪を引っ張ってしまうような髪型や行動をやめるということが第一です。
分け目やヘアスタイルを毎日同じにしないようにしましょう。長期間、同じ分け目やヘアスタイルにしていると、その部分だけに負担がかかりやすくなります。
いつも同じ分け目にしている方は、3ヶ月に1回は分け目の位置を少しずらすと、同じ部分が引っ張られにくくなります。また、毎日髪を結んでいる場合は、同じ位置で髪を結ばないことや、きつく結ばないこと、家に帰ったら髪をほどいたり、休日は髪をおろしたりするよう、工夫することをおすすめします。
髪型を変えたりしても治らない場合は薄毛治療のクリニックに相談する
どんな脱毛症でも、対処法を試したり治療をしたりしても即時に髪が生えてきて治るものではありません。
毎日髪を結ぶのをやめ、分け目を変えたりするのをしばらく続けていても治らない場合は、薄毛治療のクリニックに相談しましょう。
牽引性脱毛症は一過性の脱毛症なので、髪を引っ張られないようにすれば自然に髪が生えてくると言われています。しかし、初期段階の牽引性脱毛症ではなく、髪を作る毛包までダメージが加わっていると、自然に髪が生えてこない可能性もあるのです。
また、牽引性脱毛症とは異なる脱毛症を発症している可能性も考えられます。女性の代表的な脱毛症には、頭頂部または頭部全体が薄毛になるFAGA(女性型脱毛症)などがあります。
なかなか治らない場合は、女性の薄毛治療が診療科目にある皮膚科や、薄毛治療クリニックの医師の診察を受けましょう。症状が悪化する前に早めに治療を受けることで、状態の改善が見込める場合もあります。
さいごに
牽引性脱毛症の原因や対策方法について解説してきましたがいかがでしたか?
牽引性脱毛症は、髪が引っ張られることで抜けてしまったり、頭皮が血行不良を起こし栄養が運ばれにくくなることで抜けやすい毛となったりすることがわかりました。
牽引性脱毛症はある日突然大量に髪が抜けていくような脱毛症ではありません。毎日の積み重ねで徐々に抜け毛や薄毛になっていってしまう脱毛症なので、よくポニーテールなど髪を引っ張るような髪型をされている方は、予防や初期段階から髪に負担がかからないように注意する必要があるでしょう。
髪への負担がなくなることで特別な治療などを行わなくても自然に治るとされています。
薄毛になってしまわないためにも、ポニーテールやいつも同じ分け目できつく結ぶことはなるべく避けて、頭皮や髪に負担をかけないようにしましょう。
万が一そうした髪への負荷がかからない髪型にしても抜け毛が治まらなかったり、生え際がどんどん後退しているように感じる場合は、AGAやFAGAといった他の脱毛症を発症している可能性が高いです。
こうした場合は放置すると薄毛がどんどん進行してしまうので、なるべく早く薄毛治療が診療科目にあるクリニックを受診し相談しましょう。