薄毛治療

飲む前に知っておきたい!フィナステリドの5つの副作用

監修者 阿部有寛(院長)

 
抜け毛抑制薬として高い効果が実証されているAGA治療薬の「フィナステリド」ですが、そんなフィナステリドにも、服用する上で副作用が起きてしまう可能性は全くないとは言い切れません。

様々な実験によって長期の服用による安全性が実証されており、副作用も頻発するようなものではなく低い確率だとも言われていますが、長い期間一緒に付き合っていかなければならないAGA治療において、薬の副作用を知っておくことは大切でしょう。

この記事では、フィナステリドを服用することによって引きおこる可能性のある副作用について詳しく解説していきます。また、薬服用時の注意点や、副作用が引きおこる確率、起きた時の症状の程度などについても解説していきますので、現在フィナステリドの服用を考えている方、これからAGA治療を検討している方はぜひ参考にしてみてください!

フィナステリドの5つの副作用

フィナステリドは男性型脱毛症の治療に用いられますが、その副作用は様々なものが報告されており、5つに大きく分けることが可能です。

5つのカテゴリーの中でも様々な症状が見受けられるので、1つ1つの副作用による症状を詳しく解説していきたいと思います。副作用は発症する程度や種類にも個人差があるものですが、ここではフィナステリドを服用することによって引き起こされる可能性のある副作用をすべて紹介していきます。

 

性欲減退や勃起機能障害などの男性機能低下

フィナステリドは、男性型脱毛症の治療に用いられる薬剤であり、男性ホルモンであるテストステロンの作用を抑制するため、性欲減退や勃起機能障害などの副作用が報告されています。

フィナステリドは、代表的な男性ホルモンである「テストステロン」が、「ジヒドロテストステロン(DHT)」という抜け毛を引き起こすホルモンに変換させてしまう酵素である「5αリダクターゼ」の働きを阻害する働きがあります。

一方でDHTは男性の身体にとって重要なホルモンのひとつであり、男性機能にも深く関わりのあるホルモンです。フィナステリドが5α-リダクターゼの働きを抑制することで、DHTの生成が減少し、それに伴って男性機能が低下する可能性があります。

具体的には、下記のような症状が挙げられます。

・性欲減退
・勃起機能障害
・精液量の減少 など

これらは、DHTが陰茎の海綿体において重要な役割を担っているため、DHTの減少が海綿体の機能低下に繋がることによって引き起こされます。ただし、すべての人に必ずしも副作用が現れるわけではなく、副作用の程度も人によって異なります。
副作用は一般的には軽度であり、フィナステリドを中止すると改善することが多いとされています。

※参考:“Adverse Side Effects of 5α-Reductase Inhibitors Therapy: Persistent Diminished Libido and Erectile Dysfunction and Depression in a Subset of Patients” (Journal of Sexual Medicine, 2011)

 

乳房の腫れや痛み

フィナステリド使用後に、乳房の腫れや痛みが生じることがあります。この副作用は、フィナステリドがテストステロンの代謝に関与するために起こると考えられています。

フィナステリドは、テストステロンの代謝に関わる酵素である5αリダクターゼを阻害するため、テストステロンの濃度が低下し、エストロゲンの比率が高くなることがあります。エストロゲンは女性ホルモンの1種であり、これによって、男性の乳房が軽度に腫れる場合があります。また、こうした腫れに伴って痛みが生じることもあります。

乳房の腫れや痛みは、通常は軽度であり、多くの場合フィナステリドの服用を中止すれば改善されます。
しかし、場合によっては症状が重くなることがあるため、このような場合には、医師に相談して適切な対処方法を見つけることが重要です。

※参考:“Finasteride and male breast cancer: does the MHRA report show a link?” (Journal of the Royal Society of Medicine, 2018)

 

肝機能障害

フィナステリドは、肝臓の代謝に関与する酵素に影響を与えることがあるため、肝機能障害を引き起こすことがあります。フィナステリドを使用する患者の中には、肝酵素値の上昇が認められることがあります。重症な場合は黄疸や肝不全などの合併症を引き起こすことがあり、臨床的に重要な副作用となっています。したがって、フィナステリドを使用する場合は、定期的な肝機能検査が必要とされています。

肝機能障害には、以下のような症状が現れる場合があります。

【食欲不振】
肝機能が低下すると、食欲不振を引き起こすことがあります。食欲不振が続くと、栄養不足や体力の低下などの問題が発生する場合があります。

【腹部の膨満感、痛み】
肝機能が低下すると、腹部に膨満感や痛みを引き起こすことがあります。腹部の痛みは、右上部に感じられることが多く、特に食事後に痛みが増すことがあります。

【黄疸】
肝臓が正常に機能しなくなると、黄疸を引き起こすことがあります。黄疸とは、皮膚や白目が黄色くなる症状で、ビリルビンという物質が血液中にたまるために起こります。

【疲れやすさ、体力低下】
肝機能が低下すると、疲れやすさや体力の低下を引き起こすことがあります。肝臓は、体内の老廃物や毒素を排出する重要な臓器です。肝機能が低下すると、老廃物や毒素が体内にたまり、疲れやすくなる場合があります。

【脳の症状】
肝臓は、アンモニアなどの毒素を分解することができます。肝機能が低下すると、アンモニアが蓄積し、脳の機能に影響を与えることがあります。脳の症状としては、記憶力の低下や注意力散漫、昏睡状態などがあります。

肝機能障害には、これらの症状以外にも、吐き気や下痢、発熱などの症状が現れる場合もあります。ただし、副作用として肝機能障害が発生することは、フィナステリドにおいては比較的稀と言われています。

 

抑うつ症状

フィナステリド使用後に、抑うつ症状が現れることがあります。
これはフィナステリドが脳内神経伝達物質の一つであるγ-アミノ酪酸(GABA)に影響を与えることで発症するとされています。GABAは、脳内で抑制的な役割を果たし、不安やストレスに対する抵抗力を高める効果があります。

抑うつ症状は、服用者の精神状態に影響を与えます。

・憂鬱な気持ち
・無気力感
・疲れ
・倦怠感
・自分自身や人生に対する否定的な思考
・自分の将来に対する不安感 など

この症状は、通常はフィナステリドを服用する前に既に存在していた場合でも悪化する可能性があります。また、フィナステリドを中止した後は症状が改善する場合がありますが、一部の患者では持続的な抑うつ症状が残ることが報告されています。
抑うつ症状には個人差があり、重度の場合は日常生活に支障をきたすことがあるため、医師に必ず相談をしてください。

※参考:Depression risk associated with the use of 5α-reductase inhibitors versus α-blockers: A retrospective cohort study in South Korea
※参考:“Adverse Side Effects of 5α-Reductase Inhibitors Therapy: Persistent Diminished Libido and Erectile Dysfunction and Depression in a Subset of Patients” (Journal of Sexual Medicine, 2011)

 

皮膚のかぶれや発疹、顔面の腫れなどのアレルギー症状

フィナステリド使用後に、皮膚のかぶれや発疹、顔面の腫れなどのアレルギー症状が現れることがあります。この副作用は、フィナステリドに含まれる成分に対してアレルギー反応が生じることが原因とされています。

これらの症状は、フィナステリドを使用開始数日後から数週間後に現れることがあります。
皮膚のかぶれや発疹は、体のどこにでも現れる可能性があり、かぶれや発疹は、軽度から重度のものまでさまざまな種類が出る可能性があります。

皮膚の炎症には下記のようなものが挙げられます。

・発疹
・かゆみ
・赤み
・腫れ
・ひどい場合は水ぶくれ、ただれ など

また、顔面の腫れも現れることがあります。これは、顔のどの部分でも起こる可能性がありますが、主に目の周りや口の周りに現れます。症状は、腫れ、赤み、かゆみ、痛み、温感などです。

このような症状が現れた場合は、直ちに医師に相談し、適切な処置を受ける必要があります。こうした皮膚の炎症への治療にはステロイド軟膏や抗ヒスタミン剤などが含まれることがあります。

他にも、過去にフィナステリドに対してアレルギー反応を経験したことがある場合は、再度使用しないようにする必要があります。

 
 

フィナステリドの副作用の程度

フィナステリドの副作用の種類について様々なものがあることがわかりました。
では、それぞれの副作用発生率はどれくらいなのでしょうか?また、長期で服用する場合の安全性や、同様の効果を持つ薬との副作用の程度の違いなどがあるのかを解説していきたいと思います。

 

副作用が起きる確率は低い

フィナステリドの副作用について気になるのはその発生率だと思います。

詳しい発生率については下記の表をご覧ください。

症状 発生率
性欲減退 約1.0~5.0%
勃起機能障害などの男性機能低下 約1.0%未満
乳房の腫れや痛み 約0.5~1.0%未満
肝機能障害 約1.0%未満
抑うつ病 約1.0%未満
皮膚のかぶれや発疹、顔面の腫れなどmp 約1.0%未満

性欲減退のみ約1.0~5.0%という結果が出ており、フィナステリドの副作用の発生率としては最も高いものとなっています。また、勃起機能障害や精液量減少などの男性機能低下の副作用は発生率が約1.0%未満、乳房の腫れや痛みが約0.5~1.0%未満と、男性ホルモンに働きかけるフィナステリドの特性が強く出るものの方が発生する可能性が高いことがわかりました。

しかし発症する副作用の種類や発生率には個人差があり、同じ投与量でも副作用が生じやすい人と生じにくい人がいます。副作用が生じた場合は、必ず医師に相談するようにしてください。

※参考:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
※参考:グラクソスミス・クライン株式会社の医薬品インタビューフォーム

 

同効果を持つ抜け毛抑制薬デュタステリドとの副作用の比較

デュタステリドは、フィナステリドと同様に5αリダクターゼを抑制し、抜け毛を抑制する効果のあるAGA治療薬です。5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型の2種類があり、フィナステリドはⅡ型のみを抑制できる薬ですが、デュタステリドはⅠ型Ⅱ型共に抑制することのできる薬となっています。

フィナステリドよりもデュタステリドは強力な効果を持つため、デュタステリドの方がフィナステリドよりも副作用が少々強いと報告されています。

現れる副作用の種類は、性欲減退や勃起機能障害などの男性機能低下、乳房の腫れや痛み、肝機能障害、抑うつ症状、皮膚のかぶれや発疹、顔面の腫れなどのアレルギー症状で、フィナステリドとデュタステリドの副作用の種類に違いはありません。

 

長期投与の安全性が証明されている

長期投与による副作用発現率の増加は認められず、フィナステリド 1 mg/ 日の 5 年間にわたる長期投与の忍容性はおおむね良好という結果も出ています。いずれにしても副作用が発生する確率は非常に低く、長期の安全性も証明されている治療薬と言えるでしょう。

※参考:男性における男性型脱毛症用薬 5 α – 還元酵素 II 型阻害薬 フィナステリド(プロペシア ® 錠 0.2 mg・1 mg)の薬理学的特性と臨床効果
※参考:日本人の男性脱毛症に対するフィナステリド長期投与の801例調査

 
 

フィナステリド服用時の6注意点

フィナステリドを服用する上で注意すべきことは5つあります。副作用にも関わってくる注意点ですので、服用を検討している方は必ず確認しましょう。

 

用法用量を正しく守る

飲み忘れた場合に2回分まとめて服用することは推奨されていないのでやめましょう。忘れた分を補うために2錠を一度に服用するのではなく、通常の1錠分を摂取するだけに留めてください。飲み忘れを続けてしまうようであれば、医師に相談することをお勧めします。

また、医師に指示された用法用量を守り、正しく服用することが重要です。自己判断で用量を変えたり、服用を中止したりすることは避けるべきであり、必要な場合は医師と相談してから行うようにしましょう。

 

20歳未満は服用が不可

フィナステリドは20歳未満の男性での実証実験が行われていないので、安全性や有効性が確認されていないため服用が禁止されています。

また、抜け毛の要因になるDHTですが、成長期の男性にとっては男性器の発育に必要なホルモンであり、成長過程でフィナステリドを服用してしまうと正常な性器の成長に影響が出る危険性が考えられるため、服用は禁止とされています。

 

女性には服用厳禁

フィナステリドは女性や子供は服用することができません。特に妊婦や授乳期は胎児や子供への影響も考えられるので絶対に服用しないように気をつける必要があります。皮膚からも吸収されてしまうため、女性は直接手を触れないよう注意が必要です。錠剤を分割・粉砕してしまった場合、女性の肌に触れてしまう危険性が高くなるので、必ず錠剤のまま服用してください。

 

同じ効果を持つ抜け毛抑制との併用は不可

フィナステリドと同じ抜け毛抑制薬のデュタステリドを併用することは原則として禁止されています。両者とも5αリダクターゼの働きを阻害する効果を持ちますが、一緒に服用したからと言ってさらに効果が高まるわけではありません。

両者を併用することに関しての安全性や効果は十分に研究・実証されていないため、医師の指示なしでの同時併用はしないようにしましょう。

 

肝臓に機能障害がある方は服用を控える

フィナステリドは肝臓で代謝され、尿中に排泄されます。肝機能が低下している場合、薬剤の代謝や排泄が妨げられ、薬物の副作用が増強する可能性があります。

肝臓の機能障害がある人は、フィナステリドの服用による肝機能の悪化や、副作用の発現が起こる可能性が高まるため、服用を控えた方が良いとされています。また、肝機能障害の人は、医師の指示に従い、フィナステリドを服用する前に、肝機能の検査を受けることが望ましいです。

 
 

フィナステリドの副作用についてよくある質問【Q&A】

フィナステリドを服用するにあたってよくある質問をご紹介します。子づくりを考えている方や、持病をお持ちの方、現在毎日服用しているお薬などがある方は確認しておきましょう。

 

妊活には問題ないのですか?

基本的に問題ないとされていますが、安全性を考慮する場合、妊活の6か月前には服用をやめたほうが良いとされています。妊活を考えている場合は医師に相談し、代替の治療方法を検討しても良いでしょう。

 

フィナステリドを服用できない人はいますか?

性、妊婦、授乳中の方、20未満の男性は服用不可です。
20歳以上の男性は基本的に服用可能ですが、肝臓の機能障害がある方や、過去にフィナステリドに対するアレルギー反応を起こしたことがある方は服用を控えたほうが良いでしょう。

また、持病がある方や現在定期的に服用している薬があるという方は、処方の際に必ず医師に申告しましょう。

 
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まとめ

フィナステリドの副作用についてお話してきましたがいかがでしたでしょうか?
フィナステリドは長期服用での安全性や有効性が認められており、副作用が発生する確率も低いことがわかりました。

しかし、薬の副作用の種類や副作用の発生、薬の効き目などに関しては個人差があるため、絶対に副作用が起きないとは言い切れません。フィナステリドを服用する際には、ご自身の現状や健康面でのこと、服用している薬などをすべて医師に開示し、医師の判断に従って用法用量を守って服用してください。

フィナステリドの副作用について知識をつけられたことで、安全性や効果を踏まえてご自身に合ったAGA治療を選択できるはずです。フィナステリドの服用を検討されている方は、是非この記事を読んで参考にしてみてください!

ABOUT ME
阿部有寛
阿部有寛
医師 
2007年山形大学医学部卒業。 一般内科、複数の企業、研究施設の産業医から、大手の美容クリニック、AGA・頭髪クリニックの医師を経て、一般社団法人日本美容医療研究協会ZENクリニック院長に就任。 【資格】医師免許/日本医師会認定産業医 > 医院長紹介ページを見る
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