ボトックス注射の副作用の期間とは?生じる症状や注意点を解説

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/05/26 更新日:2020/05/06

ボトックス注射は、シワ伸ばし治療や手足の筋肉を動かしやすくするために選ぶ治療です。
ボトックス注射に興味はあるけれど、何となく副作用がありそう、という懸念がある方は少なくはないかもしれません。
実は、ボトックス注射の副作用はほとんどが一過性のもので、一度副作用を感じてもしばらくすれば気にならなくなって消えていくものばかりなのです。
前向きにボトックス注射を検討できるよう、副作用について詳しく紹介します。

ボトックス治療とは

ボトックス治療とは
ボトックス注射やシワ伸ばし注射とも言われることがあるボトックス治療は、どのような治療なのかご存知ですか。
ボトックス治療はボツリヌス菌という細菌が分泌したたんぱく質を抽出し、患部に注入する療法です。
抽出されたたんぱく質はボツリヌストキシンと呼ばれる物質であり、ヒトの神経細胞がアセチルコリンという物質を放出するのを阻害します。
このアセチルコリンは筋肉を収縮させる働きがあり、このアセチルコリンの分泌を神経はコントロールすることによって、微妙な筋肉の動きを実現させるのです。

アセチルコリンの分泌を阻害する働きのあるボツリヌストキシンは、筋肉が収縮する機能を一部制限させることで一過性に筋肉麻痺を生じさせることが出来るのです。
アセチルコリンが出過ぎて、筋肉が異常に収縮しすぎてしまうのであればボツリヌストキシンによって筋肉の緊張を和らげることになります。
顔の表情筋にボツリヌストキシンを注射すれば、表情筋が緩んで皮膚のシワが目立たなくなってしまうのです。
ボツリヌストキシンによるシワ治療は、加齢に伴う目尻やほうれい線のシワを治療する手段、眼科や神経内科では顔面痙攣の治療として良く知られています。
それだけでなく、ボツリヌストキシンが局所の筋肉を弛緩させることで発汗を抑えることも出来る治療です。

ボトックス治療は筋肉に薬剤を注入する、という比較的簡単な施術です。
外来を受診して施術を受けることが出来て入院も必要なく、施術も15分から20分で終わり、施術後しばらくすれば効果が比較的早期に現れます。
持続時間も3ヵ月から4ヵ月であり、一度注射を行えばしばらく通院の必要もありません。
また、ボツリヌス菌そのものを注入するのではなくボツリヌス菌が分泌したたんぱく質だけを注入する治療なので、ボトックス治療では感染の心配も無い、比較的安全な治療として日本全国の医療機関で実施されています。

ボトックス注射の副作用の期間

ボトックス注射の副作用の期間
ボトックス治療はどのくらい効果が持続する治療なのでしょうか。
また、副作用が現れてしまった場合にはどの程度持続するものなのでしょうか。
ボトックス注射を行った後の経過について、詳しく紹介します。
ボトックス注射をした後にどのような効果が得られ、どんなリスクがあるのか気になる方にも分かりやすく紹介します。

ボトックス注射の薬効は

ボトックス注射で注入するボツリヌストキシンは、永続的に筋肉を緩めるものではありません。
ボツリヌストキシンは体内に注入されるとすぐには効果が発揮されませんが、2日や3日後から効果を実感できるようになり、3ヵ月から4ヵ月の間は筋肉への作用が持続します。
ボツリヌストキシンはやがてゆっくりと分解されて、時間経過とともに効果は薄れていくことになります。
副作用が現れたとしても、副作用を引き起こすボツリヌストキシンそのものが体内から無くなるので、効果が減弱すると同時に副作用も薄れていくでしょう。

副作用は1ヶ月程度でおさまることがほとんど

ボトックス注射の副作用は、一過性のものが多く現れたとしてもすぐに消えてしまうことが多いです。
副作用としては、注射した部位が腫れたり、発赤を起こしたり痛むこともあるなど、炎症を起こしているような変化が注射部位に現れることが起こることがあります。
これは、薬に対する身体の反応と考えられ、アレルギー体質の方に見られる薬剤へのアレルギー、と考えることが出来ます。
アレルギー体質は解消できるものではなくずっと付き合っていくものですので、もしこれらのアレルギー症状が現れた場合には医師に相談したほうがいいでしょう。

また、ボツリヌストキシンを注射してからしばらくすると全身の倦怠感や力が入りにくい、という症状が感じられることがあります。
これは本来は注入した局所の筋肉だけに効けばいいボツリヌストキシンが、全身の神経や筋肉に作用してしまっている状態だと考えられます。
予想以上に全身に効果を及ぼしている場合でも、徐々にボツリヌストキシンは代謝されて効果を薄れさせていくものですので、ボツリヌストキシンの効果が治まっていくと共に回復していくでしょう。

ボトックス注射の副作用とは

調査によればボツリヌストキシンの注入治療を調査したところ、安全解析対象症例の全1566例のうち14例にしか副作用は報告されませんでした。
副作用の発生率は0.89%であり、特に多いものでは注射していないはずの瞼に力が入らないと訴えたもの、注射した部分の痛みを訴えたものがそれぞれ3例あります。
他には帯状疱疹、口の感覚が異常となる例や、筋委縮が起こったり挫創、アレルギー性皮膚炎や湿疹がそれぞれ1例ずつ認められました。
それ以外は特に有害事象なく経過することが出来る、副作用の少ない薬であると言えるのです。

ボトックス注射で使用されるボツリヌストキシン製剤の商品名は「ボトックスビスタ」というものですが、これは比較的副作用の少ない薬剤として知られています。
ここでは、副作用が少ないことで知られるボツリヌストキシンの注入が副作用を引き起こす場合、どのような症状として感じられるのかということについて紹介します。
ボツリヌス療法の後に体調に変化が生じた場合に、どのような変化が起こるのか、詳しく見ていきましょう。

表情が不自然になる・違和感

表情が不自然になる・違和感
ボツリヌス療法を行うときにボツリヌストキシンを注入することが多いのが、顔面痙攣治療やシワ取り治療の対象となる表情筋などの顔面の筋肉です。
表情筋に注入して筋肉が弛緩してしまうと、ボツリヌストキシンの効き目によっては表情が上手く作れなくなることがあります。
表情筋に注入したはずが、その周囲の筋肉にまで影響を及ぼして瞼の筋肉まで緩んでしまうと瞼が下がってしまうこともあり、眠たそうな表情に見えたりすることもあります。
下がってきた瞼で視野が狭くなったように感じることもあります。
これらの症状や不自然な表情に慣れるまで、違和感を感じることがあるかもしれません。

倦怠感

全身にボツリヌストキシンが流れてしまうことが原因であるだけでなく、稀に局所に留まっていても全身に症状が現れることがあります。
その中でも特に症状として実感しやすいのは身体の倦怠感や微熱です。
ボツリヌストキシンというたんぱく質に対するアレルギー反応で発熱している、とも考えられます。
症状が強く現れると頭痛や吐き気として感じられることもあるため、これらの症状で苦しさを感じるのであればボツリヌス療法は身体に合っていないのかもしれません。
次回の注入の前に医師としっかり相談して、今後の治療方針についてもう一度検討してみることが必要だと言えるでしょう。

注射部位の腫れ・赤み・痛み

注射した部分は組織がダメージを受けるので、打ち身や切り傷のように痛んだり、腫れたりすることがあります。
これは皮膚組織や皮下組織がダメージを受けたことによって炎症が起こっていることのサインであり、特に処置をしなくても時間経過と共に解消されていくことになります。
しかしあまりにも痛みや腫れが酷い場合は、ボツリヌストキシンに対するアレルギー反応が背景に隠れているのかもしれません。
時間経過で引かなかったり、あまりにも腫れや痛みが気になる場合には医師に相談したほうがいいでしょう。

この腫れや痛み、赤みは薬剤が注入されることによって起こりますが、薬剤の注入の仕方によってもその症状の程度が変わります。
上手に薬剤を注入することが出来れば、赤みや内出血も軽度で済むことになります。
逆に、技量が低い医師の手によって注入されてしまうと腫れや内出血が酷くなってしまうことがあります。
また、患者さんが出血しやすい素因を抱えている、などのケースでは医師の想定以上に腫れや内出血が酷くなってしまうこともあるので、おかしいと思った場合にはやはり医師の診察を受けたほうがいいでしょう。

副作用の主な要因は過剰投与・過剰反応?

副作用の主な要因は過剰投与・過剰反応?
ボトックス注射は副作用は軽いものが多く、正しく薬剤を扱うことで副作用が生じることを予防できることも多いです。
ボトックス注射の副作用が生じる原因はボツリヌストキシンが予想に比べて過剰に効果を発揮してしまったこととも考えられます。
また、身体が薬剤に過剰反応してしまった結果であるとも言えます。
薬剤の効果が過剰に現れてしまうことには様々な要因が関与していますが、医師としては、筋肉の状態や厚みなどのコンディションなども考慮した上で投与していますが、稀にバランスが崩れてしまうことがあります。

ボトックス注射では投与するボツリヌストキシン量を事前に申請し、決められた箇所に注射するのですが医師という人の手によって注入されているので投与量にごくわずかなバランスの乱れが生じることもあり、多く入れたところは特に力の入れにくさを感じるはずです。
医師の技量によっては稀に注入したいスポットを外してしまうこともあり、そんなときにはターゲットにした筋肉以外にも力が入りづらい筋肉が出てきてしまいます。
そういう過剰な投与が一部分に生じたケースでは、ボツリヌストキシンが代謝されて薬剤の効果が弱まってくることで症状が回復してくることが多いです。

ボトックス注射の副作用を避けるためのポイント

ボトックス注射の副作用は様々な要因が関与して発生することになりますが、どのようなことに気を付ければ予防することが出来るのでしょうか。
ここでは、ボトックス注射を受ける際に行える副作用を回避するためのポイントをいくつか紹介します。

ボトックス注射の実績が多い経験豊富なクリニックを利用する

ボトックス注射で用いられる薬剤そのものは副作用が頻繁に生じるものではありませんが、注入する人の技量によっては過剰に注入してしまったりすることもあります。
上手に注入できていないことが想定外の筋肉の脱力感を感じる原因になるなど、副作用の原因を医師が作ってしまうこともあります。
そのためボトックス注射の実績が多く技量が信用できる医師のいるクリニックでボトックス注射を受けることが、医師の技量によってボトックス療法の副作用を受けないための予防策だと言えるでしょう。

体調や併用薬は正確に医師に申告

副作用は患者さん側の因子も関わってくるものですので、患者さんの体調の変化や服用している別の薬剤が原因で副作用を生じることも考えられます。
体調がすぐれない場合や、ボトックス注射を受ける時に服用している他の薬剤やサプリメントは正確に申告する必要があります。
特に薬剤の中には前立腺肥大症の治療などで使われることのある筋肉の緊張をコントロールする目的のものもあり、それがボツリヌストキシンと反する作用を示したり、お互いの作用を増強することも考えられます。
一見関係なさそうに感じる薬剤であっても神経筋伝達に関与している可能性もあるため、服用しているならば医師にきちんと申告することが重要です。

ボトックス注射後の注意点

ボトックス注射後の注意点
ボトックス注射は適切に医師によって行われるべき治療ですが、患者の側も約束事を守ることによって不測の事態が発生することを予防出来ます。
では、ボツリヌストキシンを注射した後にどのようなことに気をつけて生活すればいいのでしょうか。
副作用では無いものの困った事態を避けるため、患者側が守るべきいくつかの約束事をここでは紹介していきます。

治療後は妊娠を避ける

ボトックス注射を行っている間は、妊娠を避けなくてはなりません。
ボトックス注射は一度行うと数カ月は効果が持続することになりますが、その効果が無くなるまでは最低でも避妊する必要があります。
具体的な期間で言うと、女性はボトックス治療中はもちろん、ボトックス注射を中止した後であっても、最終のボトックス注射を行ってから2回の月経が終わるまでは避妊する必要があります。
男性は最後の注射から3カ月は妊娠を避けなくてはならないことを憶えておきましょう。

注射部位をこすらない・マッサージしない

ボトックス注射はある特定の筋肉のみに効かせて、筋肉の緊張を軽くする治療です。
ターゲットにしたい筋肉のみに効かせたいのに、別の筋肉にまで影響が生じると脱力などの副作用が現れます。
注射後はボツリヌストキシンを過剰に広げないために、注射してから数時間は注射部位を揉んだり擦ったりしないことが大切です。
マッサージを受ける際も、注射部位に施術を受けるのは注射後数日間は避けることで、ボツリヌストキシンが異常に広がっていくことを予防することが出来ます。

治療後は激しい運動はしない・横にならない

ボツリヌストキシンを注射部位から出来るだけ広げないための予防策として、血流を改善させてしまうような激しい運動を避ける、というものがあります。
少なくとも治療を受けた当日は激しい運動を避け、安静に過ごしましょう。
かと言って横になっていることも良くありません。
立って生活していることを前提にしてボトックス注射を行っているのに、横になってしまうと立っている時と血流の度合いが変わってしまうことがあり、ボツリヌストキシンが過剰に広がる原因になることもあります。
注射後、3時間は横にならないほうが不測の事態を避ける上では有用でしょう。

ボトックス注射は経験豊富な医師が在籍するクリニックへ

ボトックス注射は経験豊富な医師が在籍するクリニックへ
ボトックス注射は副作用の少ない治療ですが、医師の技量や患者のコンディション、注射後の振る舞いによって副作用や異常を感じることがあります。
もし異常を感じたら医師に相談することが重要ですが、ボトックス注射の経験が豊富な医師のところで施術を受けることで、副作用が起こらないような治療後の振る舞いについてきちんとした説明を受け、確かな技量の施術を受けることも副作用予防には有効です。