ボトックス注射の副作用は?多汗症の治療で起きる症状を解説

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/09/02 更新日:2020/09/02

多汗症による汗染みや臭いに悩まされている人は、傷跡を残さないボトックス注射による治療が気になっていることでしょう。
しかし、副作用の不安があれば、二の足を踏んでしまいますよね。
実は、ボトックスの副作用は一般的な美容施術などと比較しても、特に不安を感じるものではありません。
そこで、ボトックス注射への不安を無くし前向きに検討できるように、ボトックス注射の副作用について詳しくご紹介します。

多汗症の治療法

多汗症の治療法
汗をかくこと自体は、体温調節のために大切な機能ですが、過剰な汗は日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。
濃い色の洋服を着ると汗染みが目立ったり、汗臭くなったりすると、人前でバツの悪い思いをするでしょう。
では、多汗症はそもそもどのような原因で起こり、ボトックス注射はどのようにして多汗症を改善できるのでしょう。

多汗症の原因とは

多汗症の原因はまだはっきりと解明されたわけではありませんが、ストレス・緊張、病気、ホルモンバランス・食生活の乱れが原因でないかといわれています。
精神的なストレスや緊張を感じると交感神経が敏感に反応して発汗を促したり、代謝や内分泌の異常や循環器・中枢神経の病気による神経障害が発汗を促したり、ホルモンバランス・食生活の乱れにより神経バランスも乱れ発汗を促したりすると考えられています。
しかし、原因が分かっても発汗は生理現象であるため自分でコントロールするのは難しく、改善するためには何らかの治療が必要です。

多汗症の治療はボトックス治療が主流

多汗症の治療法は塗り薬や飲み薬、外科手術などいろいろな方法がありますが、ボトックス治療が主流です。
ボトックス治療が主流の理由としては、注射だけの簡単な施術なので手軽に受けられることや、汗の抑制効果が高いことがあげられるでしょう。
ボトックス注射で多汗症の治療が可能なメカニズムとしては、ボトックス製剤に発汗に関わる神経伝達物質のアセチルコリンを抑制する作用があることが関わっています。
神経伝達が遮断され、脳から発汗の指令が出されなくなるため汗を抑えることができるのです。

ボトックス治療とは

ボトックス治療とは
ボトックス治療とは、ボツリヌス菌を原料とするボトックス製剤を筋肉層に注射する施術です。
ボトックス治療に不安を感じる人の多くは、食中毒の原因菌であるボツリヌス菌が原料の薬剤を体内に入れることに抵抗を感じているようです。
しかし、ボトックス治療ではボツリヌス菌をそのまま注入するわけではないので、毒に侵される心配はありません。
ボツリヌス菌から抽出したボツリヌストキシンというタンパク質を有効成分としており、さらに生理食塩水で希釈しているため体内に入れても問題はないのです。

ボツリヌストキシンには筋肉や神経に作用するアセチルコリンの分泌を抑制する働きがあるため、注射した部位の筋肉を弛緩させたり、神経伝達を阻害したりして薬の効いている間は一時的に筋肉麻痺や神経麻痺を引き起こします。
ボトックス治療で最も知られているのはシワ治療ですが、表情筋に注射することで表情筋の動きを緩慢にし、表情の動きに連動するシワを抑制できます。
多汗症に関しては、ワキに注射することで筋肉を弛緩させるとともに、発汗の神経伝達を抑制することで汗を抑えるメカニズムです。

ボトックス治療といえば美容目的の治療というイメージがありますが、もともとは眼科や神経内科で眼瞼・顔面痙攣治療や関節治療など医療目的で使用されてきました。
その後、シワ治療などに活用されるようになった歴史があり、安全性にも十分考慮されています。
施術も簡単なうえ、効果もある程度持続するため、プチ整形の代表的な施術として美容整形で最も人気の高い治療の一つです。

多汗症治療で起きる副作用とは

多汗症治療で起きる副作用とは
ボトックス注射による多汗症治療は、安全性が高く副作用が起こることは稀であるものの、全く起こらないというわけではありません。
では、多汗症治療で起こる副作用にはどのようなものがあるのでしょう。

注射部位の腫れ・赤み・痛み

ボトックス治療での一般的な副作用として、注射部位の腫れ・赤み・痛みがあげられます。
これは、ボトックスの効果が強く出すぎてしまった時に起こりがちな副作用で、時間が経過してボトックス製剤の効果が薄れるにつれて改善していきます。
通常、1週間から2週間で解消されます。
また、注射の技術が未熟な医師の施術では、注射部位が内出血することもあります。
これは、注射針が血管に触れ皮膚内で血液が溢れ出てしまうことで起こる症状です。
一般的な内出血と同様に、そのまま放置していても1週間ほどで自然に消えていきます。
内出血に関しては、注射技術の高い医師を選ぶことで避けることができるでしょう。
ボトックス認定医の在籍しているクリニックを選ぶのがおすすめです。

身体の倦怠感

ボトックス注射を打つと、倦怠感や微熱などの副作用が現れることがあります。
ボトックス注射には筋肉の動きを緩慢にする作用があるため、注射した部位やその周辺に軽いだるさを感じてしまうのです。
倦怠感や微熱も、時間の経過とともにボトックス製剤の効果が薄れていくと解消されていきます。
症状が長引かない限り特に心配はいりませんが、車の運転をする時は運転が散漫にならないよう注意が必要です。
また、頭痛や嚥下困難、角膜障害、全身倦怠感、吐き気などの全身性副作用が出ることもあり、呼吸困難や物が飲み込めないなどの症状が出た場合はすぐに医師に相談するようにしましょう。

これらの副作用は、ボトックスの効果が強く現れすぎた時に起こるのがほとんどです。
再注射する際には、副作用が出たことを医師に伝えておくのが賢明でしょう。
注入量を減らすなど、副作用が出にくくなるように調整してもらえます。

ボトックス注射を受けられない人

ボトックス注射を受けられない人
ボトックス注射の安全性の高さは認められているものの、誰もが受けて良いというわけではありません。
では、ボトックス注射が受けられないのはどのような人なのでしょうか。

妊娠中・授乳中の人

ボトックス注射は、妊娠中や授乳中の人には施術をしないという方針がとられています。
妊婦さんや妊活中、授乳中の女性に施術すること自体は問題ありませんが、卵子や胎児、乳児への影響は解明されておらず、100%安全性が確立されるまでは受けない方が良いとされています。
妊活中の人が妊娠していることに気づかずボトックス注射を受け、問題なく出産できたという症例もありますが、だからといって全ての人に安全であると証明されているわけではありません。
妊活中、妊娠中、授乳中は避けるのが賢明です。

神経筋伝達に影響のある薬剤で治療中の人

ボトックス注射は、神経筋伝達系の持病を抱え、薬を服用している人は注射できません。
ボトックス注射は注射した部位の筋肉を弛緩させる作用があり、神経筋にも影響を及ぼします。
薬の効果を相殺したり、作用が増強したりする可能性があります。
具体的な禁忌薬としては、スぺクチノマイシン・アミノグリコシド系・ポリペプチド系・テトラサイクリン系・リンコマイシン系の抗弛緩剤、抗生剤、抗痙攣罪剤、抗コリン剤、精神安定剤、ぺニシラミン、キニジン、カルシウム拮抗剤があげられます。

また、別のボツリヌス毒素製剤で治療を受けている人も、ボトックス注射はNGです。
併用すると過剰に筋肉が弛緩してしまい、咀嚼障害が現れることがあります。
これ以外でも何らかの薬を服用している場合は、医師にその旨を伝え併用できるかどうか事前に確認しておきましょう。

高齢者の人

高齢者の人がボトックス注射を打つことは推奨されていません。
厚生労働省によっても、ボトックス注射の効果は65歳以下の人に効果があると提示されており、高齢者に対しては有効性が低くなります。
また、高齢者は持病を抱える人が多くボトックスと併用できない薬を服用している可能性も高くなるため、ボトックスの効果よりも副作用の症状のほうが強く出る可能性が高くなります。
他の治療法を選択肢に入れるのが賢明でしょう。

ボトックスによる多汗症治療後の注意点

ボトックスによる多汗症治療後の注意点
ボトックス注射による多汗症治療を受けた後は、不用意に副作用を誘発しないため、またボトックス本来の効果を正しく実感するためにいくつか注意するポイントがあります。
では、施術後はどのようなポイントに注意すべきなのでしょう。

治療後は妊娠を避ける

ボトックス注射は妊婦さんや妊活中、授乳中の女性にばかり注意喚起がされがちですが、男性がボトックス注射を受けた際にも注意が必要です。
ボトックス注射が精子に与える影響は解明されていないため、精子形成期間に注入した際の精子の安全性が確認されていません。
精子に何らかの作用があり、受精した際に胎児に影響を及ぼすリスクも否めません。
そのため、男性もボトックス注射後は、少なくとも3ヶ月間は避妊する必要があります。
女性も、ボトックスビスタ®を定期的に注入している場合は、最後に注射をしてから2回の生理を終えるまでは避妊することが必要です。

注射部位をこすらない・マッサージしない

ボトックス注射の後は、注射部位をこすったり、マッサージしたりするのは禁物です。
ボトックス注射は注射した部位の筋肉や神経に作用するため、こすったりマッサージしたりすると薬剤が拡散して本来とどまるべき場所にとどまらず効果が薄れてしまったり、毒素がむやみに浸潤したりする可能性があります。
また、触ったり揉んだりすることで、内出血を引き起こしてしまう危険性もあるでしょう。
なんとなく気になって触ってみたくなるかもしれませんが、必要ない限り触らないのが一番です。
注射部位やその周辺は、少なくとも数日間はマッサージを避けるようにしましょう。
エステに通うのも、注射後1週間以上経ってからが賢明です。

治療後は激しい運動はしない・横にならない

ボトックス製剤は、熱に弱いという性質があります。
そのため、ボトックス注射を受けた当日は、血流を増進させる行為は禁物です。
血行が良くなると体温が上がり、ボトックスの効果を弱めてしまう可能性があるからです。
激しい運動をしたり、飲酒をしたり、サウナに入ったりするのは避け、できるだけ安静に過ごすようにしましょう。

また、注入したボトックス製剤が正しい位置に定着するよう、注射してから3時間ほどは横になるのは避けたほうが良いでしょう。
ボトックス注射は、椅子に座った状態で施術を受けるのが一般的です。
その態勢で適切な位置に注入されるため、寝ころぶと薬剤が他の場所に流れてしまう恐れがあります。
適切な筋肉や神経に作用させるためにも、体制には気をつけるようにしましょう。

ボトックス治療のQ&A

ボトックス治療のQ&A
ボトックス治療を受けるにあたり、効果の持続期間や日常生活の制限などについて疑問がある人もいるでしょう。
そこで、ボトックス治療を受けるうえでの日常生活の制限や効果の持続期間についてQ&A形式でお答えします。

治療後に入浴はできるのか

ボトックス治療は手軽に受けられる施術ですが、日常生活の制限が多いと受けるのを躊躇ってしまいますよね。
しかし、ボトックス注射を受けることで日常生活に制限がかかることはほとんどなく、ほぼ普段通りに過ごすことができます。
施術後すぐにメイクができるので、ボトックス注射を受けた後もきちんとメイク直しをして帰宅ができ、腫れや赤みもほとんど出ないため周りに気づかれることも少ないでしょう。
入院の必要もないので、仕事にも普段通り通うことができます。
治療後の入浴も可能で、長風呂は禁物ですが、洗顔したり、シャワーを浴びたりするのは可能です。
ただし、ワキをごしごしとタオルでこするのは避けましょう。

ボトックス注射はどれくらい効果が続くのか

ボトックス注射の効果が出るまでの期間や、効果の持続期間は人によっても異なり、注射する部位によっても変わってきます。
また、基本的にボトックス注射での多汗症治療は、多汗症を完治するのではなく症状を抑えるための治療です。
薬剤の効果が薄れ再び大量の汗をかき始めたら、再注入して症状を抑える必要があります。
多汗症治療のボトックス注射では、効果が現れるのは注射後2日から3日、効果の持続期間は4ヶ月から9ヶ月が一般的です。
そのため、もっとも汗をかく夏に汗染みや臭いを抑えたい場合は、春ごろに注射をすると暑い季節を乗り切ることができるでしょう。

ボトックス注射は継続して打ち続けることで効果の持続期間が長くなるため、はじめのうちは4ヶ月しか効果が続かなくても、繰り返し注射することで最大の9ヶ月間持続させることも可能になります。
そうすると、1年に1回から2回のペースで効果が持続できるようになります。

安心できる医師のもとで治療を受けることが重要

安心できる医師のもとで治療を受けることが重要
ボトックス注射は副作用はあるものの、赤みや腫れ、内出血などマイナー症状がほとんどで、時間とともに解消されるのが一般的です。
神経伝達系に疾患があったり、妊娠・授乳中だったりしなければ、安心して受けられる施術でもあります。
ただし、安全に施術を受けるには、安心できる医師を選ぶことも大切です。
ボトックス注射に対する不安があれば、医師に相談してみると良いでしょう。