ボトックス注射(ボツリヌス療法)の倦怠感とは?副作用の症状を解説

抗加齢学会専門医/麻酔科認定医
コッツフォード良枝:監修

公開日:2020/09/28 更新日:2020/09/28

シワやたるみを解消するのに、ボトックス注射にトライしてみたいと思っている人もいるでしょう。
ただ、施術に興味があっても、副作用などが心配だとなかなか治療に踏み切れないこともあります。
ここでは、ボトックス注射の副作用の症状を具体的に挙げて、不安が少ない施術であることを紹介します。
記事を読んだ後はそれまでの不安がなくなって、前向きな気持ちで施術にトライできるようになるでしょう。

ボトックス注射とは

ボトックス注射とは
ボトックス注射がどのような施術であるかは、副作用への不安を減らすうえでも知っておきたい情報です。
ボトックス注射は、美容医療のクリニックだけでなく、眼科や整形外科などの一般の診療科でも行われることがあります。
実際、診療科によっては、治療のひとつの選択肢としてボトックス注射が用意されている場合があります。
ここでは、ボトックス注射が行われるシーンを挙げて、施術のメリットやシワに作用するメカニズムなどを解説していきます。
ボトックス注射でよく用いられるボトックス・ビスタについても紹介しましょう。

ボツリヌス菌とは

ボトックス注射が、ボツリヌス菌を使ったアプローチであることはよく知られています。
ボトックス注射と聞くと、ボツリヌス菌を直接体のなかに注入する施術だと考えている人もいるかもしれません。
ただ、現実のボトックス注射では、ボツリヌストキシンを注射します。
ボツリヌストキシンは、ボツリヌス菌が生み出すタンパク質です。
したがって、ボツリヌス菌をそのままの状態で体内に入れることはありません。
毒素を弱めることで、感染のリスクをなくしているのがこの注射の特徴です。
ボツリヌストキシンは、顔面痙攣や眼瞼痙攣などの治療でも注射剤としてよく用いられている物質です。

脳疾患の後遺症や関節の治療でも使われており、活用範囲が広いのがこの物質の特徴になっています。
汗がでるのを抑える作用があるボツリヌストキシンは、多汗症に悩む人にも使われることがあります。
ボツリヌストキシンを使う目的で多いのが、緊張した筋肉を緩めることです。
この物質には筋肉を弛緩させる働きがあり、過度な緊張によるこわばりや痙攣などを改善する効果が期待されています。
たとえば、関節の治療では、こわばりをなくして手や足の動きをスムーズにするためにボツリヌストキシンが使われることがあります。
顔の筋肉が緊張することで生じる表情ジワも、効果が期待されている症状のひとつです。

ボツリヌストキシンを注射すると、筋肉と神経に情報を伝えているアセチルコリンと呼ばれる物質の分泌が抑制されます。
アセチルコリンの分泌が減ると、一時的に筋肉が麻痺を起こした状態になります。
緊張という原因がなくなることから、表情ジワなどの顔のシワが解消されるのがボトックス注射のメカニズムです。
比較的簡単に行える施術でありながら、ボトックス注射は効果が長続きします。
このようなメリットは、施術が人気を得る一因です。

ボトックス注射で使われるボトックス・ビスタとは

ボトックス注射の情報サイトなどでは、ボトックス・ビスタという薬の名前を目にすることがあるかもしれません。
シワの治療で使われるボトックス・ビスタは、国際的な医薬品メーカーであるアラガン社が取り扱う注射薬です。
日本の場合、ボトックス・ビスタ以外の薬剤は、厚生労働省からボトックス注射薬として正式に認められていません。
実際、美容クリニックなどで行われているシワのボツリヌス治療では、こちらのボトックス・ビスタが多く使われています。
ちなみに、ボトックス治療の薬剤は世界各国のメーカーがそれぞれ独自の製品を発売しています。

どのメーカーの製品を使うかは、医療機関の判断次第です。
クリニックによって使用する薬剤が変わることは、施術を受ける前に理解しておきましょう。

ボトックス注射の副作用と症状

ボトックス注射の副作用と症状
ボトックス注射は、人によって倦怠感や注射した部分の腫れなどのいくつかの副作用が現われることがあります。
副作用の内容を具体的に把握しておくことは、不安や恐怖感を大きくしないためにも重要です。
ボトックス注射の代表的な副作用を、ここでは3つ紹介してみましょう。

部位によっては倦怠感を感じることがある

ボトックス注射では、注射を打った場所の周辺に軽い倦怠感を覚えることがあります。
たとえば、表情ジワの治療の場合は、顔の筋肉にだるさを感じる可能性がでてきます。
また、肩や腕にボトックス注射を打ったときは、上半身や腕の倦怠感、全身の脱力感などを覚えることもあるようです。
顔などの部分的な施術の場合、全身の症状を心配する必要は余りありません。
ボトックス注射でこのような副作用が起こるのは、ボツリヌストキシンに筋肉をゆるめる作用があることがひとつの原因と考えられています。
薬の作用で一時的に筋肉に力が入らなくなり、倦怠感や脱力感などを覚えるのが副作用のメカニズムです。

一時的に表情が不自然になることがある

顔の違和感も、ボトックス注射にともなう副作用です。
実際、まぶたが閉じにくくなったり、部分的に引きつりを感じたりする症状が、ボトックス注射の後に見られる人もいます。
ボトックス注射は、顔の筋肉を弛緩させます。
思うように表情が作れなくなるのは、薬剤の作用によるものです。
ただ、副作用は通常は短期間で改善し、長く続くことはありません。
また、注射を打つ場所や薬剤の量を調節することで、ある程度予防をすることも可能です。
実際、こういった副作用は、注射を打つ場所の見極めが甘かったり、注入する量が多すぎたりすると起こるリスクが高くなると言われています。

一時的に注射部位が腫れる・赤みがでる

注射をした部位の腫れ、赤みも、ボトックス注射の副作用のひとつです。
このような副作用があるときは、注射を打った場所が赤く腫れたり、軽い痛みを感じたりします。
注射をした部位が赤くなるときは、内出血の可能性もあります。
内出血は、ボトックス注射に限らず針を刺す治療で起こる可能性がある副作用です。
しばらくたっても症状が軽くならないときや、原因がわからず不安なときは、施術を受けた医療機関に相談するのがベストでしょう。

ボトックス注射を避けたほうが良い人

ボトックス注射を避けたほうが良い人
ボトックス注射は、技術のある医師が適切な方法で行う限りは安全性の高い施術です。
ただし、施術を受ける人が妊娠中であったり、持病があったりするときは、100%安全かどうかが確認できていません。
ボトックス注射は、ここで取り上げるような一部の人には適さないことが指摘されています。
施術を避けたほうが良い人のケースを、具体的に紹介してみましょう。

妊娠中・授乳中の人

ボトックス注射のリスクは、まだ不確かな状態です。
妊娠中や妊娠している可能性がある人、授乳中の人は、ボトックス注射が100%安全とは言い切れないことを理解しておく必要があるでしょう。
妊娠に気付かなかった女性がボトックス注射を受けてしまった事例は、これまでにもあります。
もしもボトックス注射を受けた後に妊娠がわかったときには、このような事例がひとつの参考にできるでしょう。
事例では、多くのケースで出産にとくに影響がなかったことが明らかになっています。
したがって、いたずらに不安を持ってしまうのは取り越し苦労になる可能性があります。

ただ、ボトックス注射で用いられるボトックス・ビスタの添付文書でも、妊娠中や授乳中の人への投与は禁忌事項に挙げられています。
ボトックス注射を行っているクリニックでも、妊娠中や授乳中の人については施術の対象外とするのが一般的です。
ボトックス注射の場合、妊娠中や授乳中の人に行っても安全かどうかが確認できていません。
そのため、医療機関でも施術は行わないことになっています。
妊娠中や授乳中にうっかりボトックス注射を受けてしまっても、「出生前診断を受けなければ」や「出産を諦めるべき」と結論を出すのは早急ですが、一定のリスクがある人は施術に慎重になる必要があります。

神経筋疾患・呼吸器疾患を持っている人

神経筋疾患や呼吸器疾患を持っている人も、ボトックス注射を避けたほうが良い人です。
ボトックス・ビスタの添付文書では、重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症、ランバート・イートン症候群などの病気を患っている人への使用が禁忌事項に挙げられています。
このような病気は、全身の神経筋接合部と呼ばれる部分にトラブルが現われるのが特徴です。
神経筋接合部に障害が生じると、筋肉の収縮がコントロールできなくなります。
筋肉が硬くなって体が動かしにくくなったり、筋力が低下して体に力が入らなくなったりするのが、こういった病気で多く見られる症状です。

ボトックス注射で用いるボツリヌス菌には、筋力を低下させる働きがあります。
そのため、もともと病気がある人に投与をすると症状が悪くなる恐れがあることが指摘されています。
呼吸器の障害を持っている人は、筋力が低下することで呼吸困難に陥るリスクがあるため要注意です。

65歳以上の高齢者の人

65歳以上の高齢者も、ボトックス注射に慎重になったほうが良い人です。
ボトックス注射で使われるボトックス・ビスタは、65歳未満の人の眉間、目尻のシワの改善に効果が期待されている薬です。
65歳以上の人については、推奨の対象外になっています。
日本国内では、ボトックス・ビスタが65歳以上の人の眉間、目尻のシワの治療に使われた実績が少なく、効果があるかどうかが不確かです。
海外の臨床試験では、65歳以上の人は若い世代の人よりも効果が低かったことがわかっています。
高齢者の場合、年齢の影響で額の筋肉の力が弱くなる点に注意が必要です。

筋力が低下しているところにボトックス注射を打つと、さらに筋肉が下に下がり、まぶたが重くなる眼瞼下垂のような症状が現われることが考えられます。

ボツリヌス毒素製剤・神経筋伝達に影響のある薬剤で治療中の人

病気の治療などで特定の薬剤を使っている人も、ボトックス注射は避ける必要があります。
たとえば、すでにほかのボツリヌス毒素製剤を使っていたり、筋弛緩剤などの神経筋伝達に影響する薬で治療を受けていたりする人は、ボトックス注射ができません。
ボトックス注射は、筋肉をゆるめる作用があります。
使用している薬剤によっては、相互作用によって体に悪影響を及ぼす可能性があるため注意をしましょう。
薬剤には、筋弛緩剤と似たような作用を持つものもあります。
たとえば、スぺクチノマイシン塩酸塩水和物やアミノグリコシド系の抗生物質などは筋弛緩剤作用を持つことで知られています。

ポリペプチド系やテトラサイクリン系、リンコマイシン系の抗生物質も同様の作用があるため、使用中はボトックス注射を避けなければなりません。
精神安定剤や抗痙攣剤、抗コリン剤も、併用に注意が必要な薬剤です。
このほか、カルシウム拮抗剤やリウマチの治療に使われるペニシラミン、不整脈の治療薬であるキニジンなども、ボトックス注射の作用を強める可能性があります。
また、「嚥下が難しい」や「痙縮症状がある」などの神経の障害がある人は、副作用のリスクが高くなることが懸念されます。
このような人も、施術を受けるのは避けましょう。

ボトックス注射で副作用が起きたら?

ボトックス注射で副作用が起きたら?
クリニックでボトックス注射を受けた後に体に違和感があったり副作用を疑う症状がでたりすると、つい心配になってしまう人もいるでしょう。
ボトックス注射の副作用には個人差があり、症状はひと通りではありません。
注射した場所の痛みや脱力感といった症状のほかにも、発疹や筋肉痛がでる人もいます。
症状が見られるときは、そのままにせずに早めに注射を受けたクリニックで診てもらいましょう。
ボトックス注射で注入した薬剤は、時間がたつにつれて徐々に作用が低下します。
薬の作用が弱くなると、副作用も軽くなるのが一般的です。
施術の副作用が原因と考えられるときは、慌てずに落ち着いて行動するのが良い方法です。

ボトックス注射後の注意点

ボトックス注射は、施術を受けた後に注意しておきたいことがあります。
注射をした部分のケアの仕方などは、施術を受ける前にチェックしておきたいポイントです。
また、この施術は生活面でも注意すべきことがあります。
3つの注意点を、ここでは紹介していきます。

注射部位を揉んだりこすったりしない

ボトックス注射を行った後は、注射をした部位をむやみに触らないことが大切です。
少なくとも注射をしてからの数時間は、手で強く揉む、こするなどの方法で刺激を与えるのは避けましょう。
このような注意をするのは、注入したボツリヌストキシンの吸収をいたずらに早めないためです。
注入した部位を強く刺激してしまうと、毒素が浸透するスピードが速くなってトラブルが生じることがあります。
また、体の代謝を高める飲酒やハードなスポーツなども要注意です。
施術の当日にこういった行動をすると、患部を手で揉んだときと同様に問題が起こるリスクがでてきます。
温泉やサウナを利用するのも避けましょう。

施術中・施術後一定期間は避妊をする

男性、女性を問わず、ボトックス注射の前後は一定期間の避妊をする必要があります。
妊娠への影響がはっきりとわかっていないため、ボトックス・ビスタを発売するアラガン社でも添付文書で避妊についての注意点を挙げています。
推奨されている避妊の期間は、男性、女性のいずれも2カ月から3カ月程度です。
たとえば、男性の場合、ボトックス注射を最後に受けた日から3カ月間の避妊が必要です。
女性は、最後にボトックス注射を受けた日から2回目の生理までが避妊の期間です。
このような注意をすることで、妊娠への影響を防ぐことができます。

注射部位を石鹸で洗わない

ボトックス注射の場合、施術の後にすぐにメイクができます。
洗顔や入浴は当日から可能であり、日常生活での制限はこれと言ってありません。
ただし、石鹸やアルカリ性の洗顔料を使って顔を洗うのは、施術から数分たって傷口がふさがるまで待たなければなりません。
アルカリ性の石鹸には、ボツリヌス菌の毒素の活性を失わせる作用があります。
針を刺した部位の傷口がふさがっていない間は、このようなアイテムで顔を洗うのは避けたいところです。

不安な点は医師に相談のうえ施術を受けよう

不安な点は医師に相談のうえ施術を受けよう
表情ジワなどに効果が期待できるボトックス注射は、外来でも十分に可能な施術です。
施術の詳細や起こりえる副作用について知っていれば、落ち着いて注射が受けられるでしょう。
施術に不安があるときは、1人で悩まずに医師に相談してみることが大切です。
私どものクリニックでも、医師やスタッフがさまざまな相談にのっております。