治療を受ける前に確認!AGA治療ガイドラインをわかりやすく解説

薄毛治療
治療を受ける前に確認!AGA治療ガイドラインをわかりやすく解説
監修者 阿部有寛(院長)

男性の薄毛の症状であるAGA(男性型脱毛症)は、見た目の大きな変化から多くの方が悩む問題です。

「本当に効果が出るのか、安全性の根拠などを知りたい」「AGA治療を始めたいけれども副作用が心配」という方はAGA治療のガイドラインのようなものを見て、治療薬や治療方法の安全性やエビデンスを知り、安心して治療を始めたいと思うのも必然です。

AGA治療には、公益社団法人 日本皮膚科学会が2017年に発表した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」というAGA治療に関してのガイドラインがあります。このガイドラインでは、臨床試験の結果から安全性や治療の効果、副作用について解説し、推奨度などを示してあり、一般にも公開がされているので、どんな方でも内容を確認することが可能です。

AGA治療に関しての不安を払拭するために、AGA治療に関して詳しくなることは重要です。

この記事では、AGA治療ガイドラインに記載されている治療薬や治療方法、どのようにしてガイドラインを見ていったらいいのかを詳しく解説していきます!

AGA診療ガイドラインとは

AGAガイドラインとは、公益社団法人 日本皮膚科学会が2017年に発表した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」のことを指します。AGA治療における治療の安全性や治薬の効果を、臨床試験の結果から推奨度を設定し指定したガイドラインです。

遺伝や男性ホルモンが原因で引きおこるAGA(男性型脱毛症)を改善するための、様々な治療方法や治療薬に関して、医学的根拠に基づいて安全性や効果が解説されています。

エビデンスのレベル分類

男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは、推奨度の基準をエビデンスレベルによって5段階に振り分け評価しています。エビデンスレベルの分類に関しては下記をご覧ください。

I. システマティック・レビュー/メタアナリシス
高品質な複数の臨床研究の結果を、厳しいルールに従ってまとめた詳細な報告です。この作業は専門家や研究者のグループによって行われ、非常に根拠の強い総説と言えます。

II. ランダム化比較試験
この方法では、新しい治療法の効果を調べるために、参加者を無作為に二つのグループに分けます。一方のグループは新しい治療を受け、もう一方のグループは通常の治療を受け、その結果を比較し、臨床の効果とその影響を測定します。

III. 非ランダム化比較試験
こちらも新しい治療法の効果を調べますが、グループ分けは無作為ではなく、意図的に行われます。これにより、新しい治療と通常の治療の効果を比較することが可能になります。

IV. 分析疫学的研究
病気の原因やその影響を理解するために、病気にかかった人とかからなかった人の過去の行動や状況を比較する研究方法です。

V. 記述研究
特定の治療法を用いた時の患者の反応や治療の成果を、具体的なデータとして集め、分析する研究です。

VI. 専門委員会や専門家個人の意見
このレベルでは、特定の分野の専門家や委員会が、自分たちの知識や経験に基づいて意見を提供します。

推奨度の分類

エビデンスの分類によって導かれた推奨度は、A~Dのアルファベットで取り決められています。

ガイドラインに登場する治療薬や治療方法はいずれもこちらの推奨度で評価がされています。1点注意したいのが、これらの推奨度は、推奨度が高ければ高いほど「より強い効果を得ることができる」というよりも、「治療薬や治療方法の有効性を示す証拠がより確かである」ことが証明されているということです。

推奨度A:行うよう強く勧める
推奨度B:行うよう勧める
推奨度C1:行っても良い
推奨度C2:行わない方が良い
推奨度D:行うべきではない

C2(行わない方が良い)に関しては、有効な証拠が得られていないもしくは無効であるという証拠があるという評価、D(行うべきではない)に関しては、無効もしくは有害であることを示す良質な証拠があり、大きなデメリットがあるため推奨しないという結果になります。

AGAガイドラインで示されている治療薬の推奨度と効果の解説

AGA治療で主に行われる内服薬、外用薬を用いた投薬治療の治療薬は様々なものがあります。

ここでは、AGAガイドラインに記載されている各治療薬の推奨度とその安全性、効果に関して1つずつ解説をしていきます。推奨度と共に、使用の注意点なども紹介していきますので是非ご覧ください。

成分用法推奨度
フィナステリド内服薬  A:行うよう強く勧める
デュタステリド内服薬
ミノキシジル外用薬
アデノシン外用薬B:行うよう勧める
カルプロニウム塩化物外用薬    C1:行っても良い
t—フラバノン外用薬
サイトプリン / ペンタデカン外用薬
ケトコナゾール外用薬
ビマトプロスト / ラタノプロスト外用薬C2:行わない方が良い
ミノキシジル内服薬D:行うべきではない

フィナステリド(内服薬)

男性型脱毛症にはフィナステリドの内服を強く勧めるとされています。

フィナステリドは男性ホルモンの活性化を阻害する薬剤であり、男性型脱毛症に対する有効性が複数の臨床試験で示されている点で、行うように強く勧める推奨度Aに設定されています。

一方で、女性での有効性は示されておらず、フィナステリドが抜け毛を抑制する効果が、男性胎児への成長をも抑制させてしまい非常に危険なので、女性は服用どころか、手で触れることさえも禁忌とされているため注意が必要です。

フィナステリド内服は、男性型脱毛症に対して発毛効果が認められ、12件のランダム化比較試験を解析したシステマティックレビュー、日本人男性を対象とした比較試験などで安全性も確認されているため、始めてAGA治療をされる方にも強くすすめられています。副作用に関しても頻発することはなく、低い確率とされています。ただし、20歳未満の安全性は確立しておらず、原則として20歳未満の方は服用できません。

参考文献:医療用医薬品 : フィナステリド

デュタステリド(内服薬)

男性型脱毛症にはデュタステリド内服を強く勧めるとされています。

フィナステリド内服薬同様に、デュタステリドは男性ホルモンの活性化を阻害する薬剤であり、男性型脱毛症に対する有効性が複数の臨床試験で示されている点で、行うように強く勧める推奨度Aに設定されています。

一方で、こちらも女性での有効性は示されておらず、フィナステリドが抜け毛を抑制する効果が、男性胎児への成長をも抑制させてしまい非常に危険です。

デュタステリド内服は、男性型脱毛症に対して発毛効果が認められ、16件のランダム化比較試験を解析したメタアナリシス、3件のランダム化比較試験、1件の非ランダム化比較試験などで安全性も確認されているため、始めてAGA治療をされる方にも強くすすめられています。

副作用に関してもフィナステリド同様にデュタステリドの副作用も頻発することはなく、低い確率とされています。ただし、20歳未満の安全性は確立しておらず、原則として20歳未満の方は服用できません。女性や子供の手の届かないところに保管してください。

参考文献:医療用医薬品 : デュタステリド

ミノキシジル(外用薬)

男性型脱毛症にはミノキシジル5%外用、女性型脱毛症にはミノキシジル1%外用を強く勧めるとされています。

ミノキシジル外用は、男女ともに脱毛部位の発毛効果が認められ、外用製剤として使用しやすいため、

男性型脱毛症に対する有効性が複数の臨床試験で示されている点で、行うように強く勧める推奨度Aに設定されています。

発毛を促進する薬剤として、ミノキシジル外用薬は、男性型脱毛症、女性型脱毛症ともに発毛効果が認められており、男性には5%製剤、女性には1%製剤が推奨されます。副作用は比較的少ないが、使用初期に休止期脱毛がみられる可能性があります。

男性では14件、女性では10件のランダム化比較試験およびシステマティックレビューを行い、その安全性や効果が評価されています。

参考文献:ミノキシジルの発毛作用について

アデノシン(外用薬)

男性型脱毛症にはアデノシン外用を行うよう勧めるとされています。

推奨度Bとミノキシジルよりは評価が下がりますが、女性型脱毛症には行っても良いとしています。

アデノシン外用は、男性型脱毛症に対する3件のランダム化比較試験、女性型脱毛症に対する1件のランダム化比較試験によって男性型脱毛症に対する発毛効果が示されています。

ミノキシジル外用薬よりも少ないものの男性型脱毛症に対する発毛効果が複数の比較試験で示されていることがわかります。

一方で、女性型脱毛症への使用は、エビデンスが不十分ですが、副作用は少ないと考えられます。

参考文献:医療用医薬品 : アデノシン

カルプロニウム塩化物(外用薬)

カルプロニウム塩化物外用薬は行っても良いとされています。

発毛効果を示唆する報告があるものの、証拠としては不十分であるが、古くから使用されており、副作用は少ないと考えられることから推奨度C1の行っても良いに分類されています。

カルプロニウム塩化物外用は、発毛効果を示唆する少数の報告があるが、プラセボ対照ランダム化比較試験などの質の高いエビデンスは不足している傾向にあります。非ランダム化比較試験と症例集積研究が数件のみの報告です。ただし、長年の使用実績があり、忍容性が高いことから使用は許容されています。

女性型脱毛症への使用報告はないため、女性は使用しない方が良いでしょう。

参考文献:医療用医薬品 : カルプロニウム塩化物

t—フラバノン(外用薬)

t—フラバノン外用薬は男女ともに行ってもよいとされています。

発毛効果を示唆する報告があるものの限定的であり、十分な証拠はないが、副作用は少ないと考えられるためです。発毛効果を示唆する複数の報告はあるが、いずれも症例数が少なく、比較試験でもエビデンスレベルは高くないためC1の行っても良いという評価になっています。

男性型脱毛症に対する2件の非ランダム化比較試験と1件のランダム化比較試験を実施。女性型脱毛症への使用報告はないため女性は使用しない方が良いでしょう。

参考文献:毛髪科学最前線—ヘアケアから再生医療まで—

サイトプリン / ペンタデカン(外用薬)

サイトプリン外用薬およびペンタデカン外用薬は、男女ともに行ってもよいとされています。

男性型脱毛症に対するサイトプリン1件、ペンタデカン2件のランダム化比較試験、女性型脱毛症に対するペンタデカン1件の症例集積研究と、発毛効果を示唆する報告があるものの限定的であり、十分なエビデンスはありませんが、副作用は少ないと考えられているため使用は許容されています。

ケトコナゾール

ケトコナゾール外用薬は男女ともに行ってもよいとされています。

発毛効果を示唆する報告があるものの、男性型脱毛症に対する非ランダム化比較試験、症例集積研究が数件と限定的であり、エビデンスレベルは高くないといった評価ですが、忍容性が高く、脂漏性皮膚炎の合併があれば使用価値が高いとされています。副作用は少ない点も含めC1の行っても良いに分類されています。

女性型脱毛症への使用報告はないため女性の使用は控えたほうが良いでしょう。

参考文献:医療用医薬品 : ケトコナゾール

ビマトプロスト / ラタノプロスト(外用薬)

ビマトプロスト外用薬およびラタノプロスト外用薬は行わないほうが良いとされています。

ラタノプロスト1件のランダム化比較試験、ビマトプロストは臨床試験なしと、発毛効果を示唆する報告があるものの限定的であり、エビデンスが不十分です。ラタノプロストでは比較試験で発毛効果の可能性が示唆されていますが、広範囲外用の安全性は不明です。

また、高価で、眼圧降下作用など全身性の副作用が懸念されるため行わない方が良いでしょう。

参考文献:医療用医薬品 : ビマトプロスト

ミノキシジル(内服薬)

ミノキシジル内服薬は、行うべきではないとされています。

ミノキシジル内服は男性型脱毛症の適応がなく、発毛効果について検証された臨床試験がないため、エビデンスが不十分です。多毛のほか、重篤な心血管系の副作用のリスクもあり、発毛効果の有効性と安全性が確保されていないため行わない方が良いでしょう。

ミノキシジル外用薬とは異なり、女性の検証ももちろんされていないため女性も行わないようにしましょう。

AGAガイドラインで示されている治療方法の推奨度と効果の解説

投薬治療の他にも様々なAGA治療の方法があります。

ここでは、AGAガイドラインに記載されている各治療方法の推奨度とその安全性、効果に関して1つずつ解説をしていきます。推奨度と共に、使用の注意点なども紹介していきますので是非ご覧ください。

治療法推奨度
植毛術B:自毛植毛は行うよう進める D:人工植毛は行うべきではない
LED / 低出力レーザー照射B:行うように勧める
かつら(ウィッグ)の着用C1:行っても良い
成長因子導入 / 細胞移植療法C2:行わない方が良い

植毛治療

植毛治療には自分の健康な髪の毛を採取しAGAが進行している箇所に植毛する自毛植毛と、人工の髪の毛をAGA進行部分に植毛する人工毛植毛の2種類があります。

男性型脱毛症には自毛植毛術を行うようすすめるとされています。ランダム化比較試験やシステマティックレビューはないものの、国内外の多数の症例報告から、薬物療法などで十分な効果が得られない男性型脱毛症に対して推奨しています。

ただし、外科手術を伴う治療のため医師のスキルや経験が重要になってきます。植毛治療を受けて後悔しないためには、事前にクリニックのHPを見て症例や医師の経験等をチェックしておきましょう。

女性の脱毛症である女性男性型脱毛症にも自毛植毛は行うことが可能ですが、エビデンスは十分ではありません。

一方で、人工毛植毛は合併症のリスクが高いため推奨されていません。人工毛植毛は、有害事象の報告が多数あり、行うべきではないと言えるでしょう。

LED / 低出力レーザー照射

LED・LLLT照射は行うよう勧められています。

男性型および女性型脱毛症に対して複数のランダム化比較試験が実施されており、発毛効果が認められているので推奨されています。

使用する機器の種類や照射条件は研究により異なりますが、副作用は軽微であり、積極的に実施が勧められています。ただし国内未承認の機器が多いのも特徴です。

かつら(ウィッグ)の着用

かつら・ウィッグの着用は行ってもよいとされています。

かつら(ウィッグ)は脱毛そのものを改善する治療ではないが、薄毛に悩む患者のQOLを改善することが示されています。

男女各1件の症例集積研究、無作為化比較試験などのエビデンスはありませんが、重症度に関わらず使用が推奨されます。特に他の治療で満足な結果が得られない場合に適応となることが多いです。

かつらというと不自然で被っていることがバレたら恥ずかしいといった方もいらっしゃるかと思いますが、現在では薄毛が気になる箇所だけを覆ることのできる部分ウィッグなども増えており、様々な方に合わせた地毛に馴染む色や形のものを選ぶことも可能です。自分に合ったかつら(ウィッグ)を選んでいきましょう。

成長因子導入 / 細胞移植療法

成長因子導入および、細胞移植療法は行わないほうが良いとされています。

PRP、脂肪組織由来幹細胞培養上清に関する少数の比較試験、症例集積研究の報告の結果、発毛効果を示唆する報告はありますが、現時点では限定的であり、倫理委員会の承認を要するなど倫理的・法的問題があるとされています。費用対効果や安全性の課題もあるため行わない方が良いでしょう。

成長因子導入療法や細胞移植療法は将来有望視される治療法ですが、現時点では臨床研究レベルの段階であり、有効性と安全性のエビデンスが不十分です。「再生医療等安全性確保法」の規制対象となる治療も多いため、一般診療での実施は推奨されません。

さいごに

AGA治療ガイドラインについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか?

AGAの治療には様々な治療薬と、投薬治療以外にも多くの治療方法があることがわかりました。

AGA治療は自由診療であり、クリニックによって処方している治療薬や治療方法は大きく異なります。そのため、どのクリニックでどんな治療を受けたいか、事前のクリニックの下調べやクリニック選びが重要になります。

全ての治療を受ける事ができる総合病院で診察を受けるわけではないので、診察をガイドラインと照らし合わせて確認するようにしましょう。

ABOUT ME
阿部有寛
阿部有寛
医師 
2007年山形大学医学部卒業。 一般内科、複数の企業、研究施設の産業医から、大手の美容クリニック、AGA・頭髪クリニックの医師を経て、一般社団法人日本美容医療研究協会ZENクリニック院長に就任。 【資格】医師免許/日本医師会認定産業医 > 医院長紹介ページを見る
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